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会話の席に着くことが出来たと言っても俺の席は無い。早乙女にとって興味関心があるのはロジィであって俺ではない。俺も自分で済まさなければ納得できないという性格ではない。寧ろ面倒なことは出来る者やれる者がすればいい。
流石に腹部貫通は初体験だし精神的にしんどい。取りあえず俺は休みたい。
机と椅子を作り出しお茶を飲みながら会話をするロジィと早乙女の姿は普通で女子高生の放課後のようでもあった。
その会話内容は全くもって普通ではないのだけれど。
「それでは、お前はローズマリーではないのだな」
「ええ。ローズマリー・キャロルという人間の能力と記憶を元に造られた人工物ですわ。早乙女様と学生生活していた記憶はございますがこれも借り物。ですのでロジィとお呼びになってくださいな。貴方の友人とは別物と考えていただいて結構ですわ」
「にわかには信じられんな」
「そうですわね。私も自身の事でなければそう感じたかもしれませんわ」
会話の席に着いたロジィは早乙女の疑問に対して真っ当に素直に答えてしまった。
俺が面倒に巻き込まれただけの一般人であること。面倒の中心は竜泉寺であり全ての理不尽はあれが原因である事。そしてロジィ自身がローズマリー・キャロルという人間の劣化模造品であるという事を。
ロジィの返答に対して早乙女はすんなりと受け入れた。早乙女もいっぱしの登場人物なのでロジィが唯の偽物ではないと理解できるらしい。
受け入れられたというよりは始めから知っていたという方が正しいかもしれない。知っていたことを追認されたので納得しているとでもいうところだろうか。
まあ、何も知らなければこのような状況にもなっていないのだろうし。
早乙女は聞いた内容を咀嚼する様にジッと瞑想をする。
しばらくして早乙女は席を立つ。そして地べたに座り休憩している俺のもとへと優雅に歩み寄って来た。
「それで、貴様は何をしに来たんだ。貴様たちの知る事実を私に突き付けてどうしたいのだ」
成長し綺麗で優雅な大人な早乙女。けれどそこからにじみ出る雰囲気は子どものまま。見た目身体が変化してもない面が簡単に変わるわけでも無い。
そんな早乙女に俺は素直に答える。
「別にどうという事はないですよ。自分には何かをする力はありませんから」
「なに?」
「安心してください。貴方は救われる。誰が何をしようとね」
「どういう……」
そんなやり取りの中、まるで見計らったようにそれは現れる。
警戒を解いていない俺や早乙女の認識の隙間を縫いての登場。
それは驚くべきことなのだろうが驚くことでもない。所詮は主人公様のための物語。全ては都合よく流れていく。
その人物は何事もないように早乙女の首にそれを突き立てた。
そして、その場には暴風が吹き荒れた。




