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15-9

 宣戦布告の言葉と同時に俺は柄にもなく反撃に転じる。

 石礫と白髪を掻い潜り小型の黒刀を生み出して投擲する。

 俺には高速戦闘の技術は無く早乙女の石礫のように速度を出せない。けれど何も相手の土俵で戦う必要はない。俺の黒刀には実体がなく異能で飛ばした石礫程度では弾かれることは無い。

 石礫では防げないと判断した早乙女の反応は早く異能の力を帯びている白髪で弾かれる。

 だが、残念でした。黒刀には実体はなく接触したモノの耐久力を削ぐ。それは投擲を弾くための極僅かな接触でも効果を発揮する。そして早乙女の武器である頭髪は彼女の一部でもある。そして身体の一部への負荷は本体へも影響する。

 勿論小型の黒刀、それも投擲して使用している中では大して負荷を与えることは出来ない。秒以内の時間に万以上を叩き込んでようやく影響になる程度だろう。早乙女を無力化あるいは抹殺するには気の遠くなる試行が必要となる。

 そんな僅かであっても俺の行動は明確な攻撃。敵対。宣戦布告に重みを加えるには十分に意味がある。そしてそれを早乙女は正しく受け取る。



 宣戦布告を受け取った早乙女は真っ当に普通の攻撃を返してくる。


 石礫を飛ばすというお遊びを止め念動力による高速移動と剣と化した白髪で迫ってくる。その動きはどう考えても物理法則や肉体の耐久力を無視している。

 更に理解できない力でこちらの四肢の制御を乱す。時折視覚や聴覚も乱れるので流石は元人形使いと言うところだろうか。


 とはいえこちらも何も出来ない子どもではない。

 どれだけ動きが速かろうと存在が消えるわけではないので追えないわけはない。被害が大きくなりそうなものだけ炎の盾で防ぎ躱して黒刀で反撃を行う。

 早乙女の制御妨害については肉体に拘らなければいいだけの話。身体の制御は肉体神経に頼らずとも妖気とかでも出来る。寧ろそちらの方が制限がなく融通が利く。

 早乙女の制御妨害は異能的な何かには効果がないようで対処法としては正しかった。


 そうして繰り広げられるのが真っ当な戦闘。

 創作と違い弁論大会も無く技や能力の解説解明もない至極普通の戦い。無言で笑顔も無く互いが互いの命を狙うだけの単純なモノ。



 そんな戦闘は第三者の介入によって終わりを迎える。


 黒刀を持っていたはずの右腕がするりと抜け落ちる。普段であればバランスが崩れてしまうところだけれど現在は不可思議能力を行使中なので特に困らない。右腕が無くとも黒刀を持つことも出来る。

 ただロジィが炎の制御を持って行ってしまったので防御力が落ちる。

 その結果、油断していたわけではないけれど腹部に重い一撃を受けてしまう。


 高速戦闘の中での衝撃。腹部から背中に貫通してしまう鋭利な白髪。

 みっともなく飛ばされて無様に地面に這いつくばる。

 痛い。とても痛い。

 だが、死ぬほどではない。


 隙なく立ち上がり再度戦闘に戻ろうとすると目の前に人が立ちふさがる。

 それは早乙女ではなく、ロジィだった。そして立ちふさがったロジィは早乙女ではなく俺と対峙した。



「あなたは何をなさっているの。」

「何って、そうですね、暇潰しかな」

「ふざけてますの?」



 勿論ふざけている。早乙女との対応には真面目だがロジィとの対応はおふざけだ。とはいえ、そんなことを言っては面倒なだけなので黙る。

 幸い早乙女はこの状況で問答無用の攻撃をするつもりはないようだ。というよりは突然のロジィ、というよりはキャロル(偽)の登場に戸惑っている様子。

 今のうちに体勢を整えなければ。


 とはいえ正直なところ俺にはやることがない。宣戦布告も殆どが悪ふざけ。おそらく俺としては早乙女がもっと喚いていて欲しかったんだと思う。自分と同様に巻き込まれた立場だからか共感に似たものが欲しかったのだろう。

 けれど、早乙女は物語の登場人物で出来たモノ。自信の存在が揺らいでも自我を保てている。それを妬んでの宣戦布告。まぁ、八つ当たりだ。

 勿論それだけが理由ではない。

 早乙女を討伐できるのであればそれで良かった。早乙女自身に恨みはないがそれだけで現在の面倒なしがらみから抜け出す手掛かりにもなった。

 けれど当然そんな簡単にはいかない。


 さて、ロジィに邪魔をされたので次の手段に移る。

 手っ取り早く邪魔した本人に面倒を引き受けてもらおう。早乙女もその方が興味をひかれるだろうし。


 ぼろぼろの状態を取り繕い警戒している早乙女に友人A然とした表情をつくり声をかける。



「さて、さっきは全てを納得しているとか言っていたね。では、改めて聞こう。この状態でも聞きたいこと確かめたいことはないのかな?」



 ヒロインたちは何だかんだで仲が良い。登場人物でありメインヒロインであるはずの早乙女がロジィを無視できるはずもない。

 こうしてようやく会話の席に着くことが出来た。


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