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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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15-8


「今、どんな気分だい?」

「ここに最初に来たのがお前で、最初の言葉がそれというのはな」



 俺の率直な問いに目の前に座る妙齢の女性はため息をつく。

 すらりと伸びた白い脚を組み頬杖をするその仕草はとても艶やかで魅力的。どこか小悪的でそれでいて気を惹くその在り様はまさに美女といえる。その姿を眺めるだけでも十分に時間を忘れることができる。

 とはいえ、そんなことばかりを考えてはいられない。

 豪勢な椅子に優雅に腰かける女性は、邪魔な前髪をフッと息で逸らすかのように石礫を音よりも速く射出してくる。その礫は鉄よりも固く鋭利。皮膚に触れれば周囲の肉ごと持っていくほど破壊力の有る弾丸。1発を受けるだけでも十分に致命傷になる。

 気を付けるのは石礫だけではない。石礫ばかりに気を取られていると死角から白い刃物が襲ってくる。それは女性の蓄える白く絹のような髪の毛。それはしなやかな鞭のように自由に跳ね返り、それでいて先端は鋭利な刃物の如くモノを切り裂く。

 普通の人間では秒も生きていられない空間を俺は気を付けながらものんびりと女性を見据える。

 ひと月前であればそれなりに必死でなければ対応できなかったけれど今ではこちらも遊びとして受け流せる。それはひとえにロジィのおかげ。炎の盾というモノはかなり使い勝手が良く役に立つ。別段オレが成長したわけでも無いのだが、ロジィの能力を含めて自分の力なので細かいことは気にしない。

 まあ、あちらも本気ではなく遊びなのだから当然と言えば当然だけれど。



「それに、それ以前にお前は何者だ? 私にはおっさんの知り合いはいないぞ」

「20代をおじさんと呼んでほしくないところですが、一先ずは、互い様といいたいところですね。個人的には貴方の場合は今の方が綺麗だとは思いますが」

「お前なぞに言われても嬉しくないわ」

「でしょうね。自分もらしくない事を言っている自覚はあります。ですが、まぁ、仲間というよりは同類なのですからもっと気楽にいきましょう、早乙女乙女。いや、トメちゃんと呼んだ方が良いかな」

「……」



 目の前に座る妙齢の女性は何を隠そう早乙女乙女。

 主人公様の第一ヒロインであるアルビノ系幼女様だ。


 主人公様に先駆けてアラスカの引きこもり先に突入したのだが、意外なことに早乙女は元気だった。

 アラスカに引きこもった理由は自身の出自を知らされたから。自身が何者で、それ以前に人間かどうかも怪しい。そういったことを事実として提供されたから逃げた。という流れのはず。

 それなのにアラスカの隠れ家にいた早乙女は堂々としていた。堂々というか凛としているというか大人びているというか、大人な身体だった。

 すらりと伸びた足を組む姿は艶めかしく頬杖をつく表情は艶やか。床に這うほど長い白髪。鋭い赤眼。所々は元の姿の面影はあるのだけれどあれのヒロイン、学校での早乙女乙女、130センチ程の幼女で舌足らずで言語も滑らかではない、といった面影はない。

 普通に普通の綺麗な化物だった。

 普通に普通の綺麗な化物とは何だって話でもあるのだが。


 そんな早乙女は元気過ぎである種の仲間であるはずの俺に攻撃を仕掛けてくる。

 それは本気で俺を殺すつもりのモノでは無いという事は容易に分かる。それはどちらかというと鬱憤を発散しているというモノに近い。一応自身の今の状態を確認する意味もあるのだろうけれど。


 しばらく早乙女のストレス解消につき合わされる。

 こちらもロジィを用いての戦闘訓練になるので悪い話ではない。色々と都合が悪いのでロジィを実体化せず力を使わなければならない事もあるので。

 その為、ロジィは現在腕の中。腕の中でも会話で来てしまうので色々と面倒くさい。早乙女の石礫投射を任せられていることをぶつくさ文句言っているが断固無視だ。


 ある程度したところで落ち着いたらしい早乙女が切り出した。といっても石礫の投射は止まないけれど。



「それでお前はここに何しに来たんだ。事実なら既に告げられている。その確認も納得も既に終えている」



 早乙女の問いかけに俺はすぐに返答をしない。

 正直なところ意外なのだ。同じ様な境遇に、いや俺以上に異常な状況にあるはずの早乙女が普通であることが。

 本音を言えば現実に悲観していてほしかった。理不尽に打ちのめされていてほしかった。絶望していてほしかった。

 だってその方が自分が惨めにならないから。


 けれど、それも仕方のないことかもしれない。所詮彼女は物語の登場人物。俺の様に代役のエキストラではない。


 だから。



「色々と考えはあったのですが、貴方を見て変えました。取り敢えず死んでもらいます」



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