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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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111/123

15-7

 物語は昨年の4月、斎藤潤と竜泉寺零王が高校生になったばかりの頃。


 ああ、このころは純真だったなぁ。自分が20代半ばのおっさんであることも知らず、周りに非日常が溢れているなんて思いも知らず、面倒な主人公様を唯の同級生だと思い込まされていた。


 物語を語るにあたって自分の感情は排除しておこう。

 どのみち個人の主観は入ってしまうのだから感想くらいは省いておこう。といってもこれらの情報は伊勢谷から渡されたモノなので主観を完全に排除することは出来ないけれど。


 兎も角。


 竜泉寺零王と()()の物語は4月に始まった。

 とある日曜日。竜泉寺は家族と旅行に出かけていた。それ自体は特に何かあるモノではなく、唯の家族旅行、両親姉兄との日帰り旅行。

 そもそもこの時点で竜泉寺零王は本当に普通の高校生だった。正義感が強く女性に甘く馬鹿馬鹿しい程生真面目だけれどそれでも普通の高校生だった。はずだ。


 その帰り道、事件が起きる。

 竜泉寺家の通る道の先で土砂崩れが発生した。それには竜泉寺家の乗る車には被害は出なかったが巻き込まれて生き埋めになる車もあったという。

 そこで主人公気質を発生した竜泉寺零王は父と兄と共に救助隊に参加する。その土砂崩れは大規模な割に人的被害が少なく素人の救助隊でも幾らかの成果を生み出した。竜泉寺自体も数人を救出した。

 救出活動で成果を出し自惚れた竜泉寺は家族を残し被害の中心地へと飛び込む。土砂崩れで埋もれたトンネル。それも落石などにより天井が崩落し、地すべりによりにより地獄と化したそこに竜泉寺は生身で潜り込む。


 トンネル内には幸運にも数台の車両しか閉じ込められてはいなかった。

 が、閉じ込められたものが悪かった。閉じこめられたのは裏社会の化学工場から細菌兵器を運んできたトラック。事故の衝撃によってトラック内の機器は破損し閉じ込められたトンネル内に散布されてしまった。

 その細菌兵器によってトンネル内に閉じ込められていた人々は人間ではない別のものへと変貌を遂げる。とある人間の力を絶対として動く人間人形に。白髪赤眼と色素が薄い少女に操られるモノに。

 その人形遣いの少女の瞳には意志が感じられずその傍らにいる男の指示を淡々とこなす。


 竜泉寺がたどり着いたのは首謀者が実験の成功に酔いしれ悦に浸っていた所だった。


 突然の部外者の登場に悦に浸っていた首謀者は事の次第を詳らかにする。土砂崩れを含めてすべて自身の計画だと。トンネル内で行われたのは人体実験だと。白髪赤瞳の少女は実験で作り出したモノだと。

 首謀者は語る。

 自身のすばらしさを。自分以外の無価値さを。

 そして行動でも見せる。少女に命令し、人間人形を動かしそれぞれの命を奪い合わせる。人形は元の意志も記憶も無く知り合いを家族を平然と手にかける。


 そんな惨劇を前に竜泉寺零王は咆哮する。

 けれど当時の竜泉寺零王は唯の高校生で何の力も持たない。目の前の現実に憤慨してもそれを変える力を持たない。何も持たない身でも竜泉寺零王は首謀者に突貫する。けれど現実は甘くなく、竜泉寺の拳は首謀者に届かない。控えていた部隊によって排除される。


 自己陶酔が終わった首謀者は部下に竜泉寺と人形の駆除を命じて少女と共にその場を去る。倒れた竜泉寺の周りには異能の力を持った者たちが取り囲む。数秒後には命は奪われこの世界からはじき出される。


 そんな状況に陥っても竜泉寺零王という少年は連れ去られた白髪赤瞳の少女の身を案じた。

 自身の状況を嘆くでもなく、世界の理不尽を呪うでもなく、ただ自身の不甲斐なさを悔やんだ。


 ひとりの異能者が竜泉寺零王という人物の命を奪おうとしたその瞬間。

 世界が動き出した。

 竜泉寺零王に宿り封じられていた力が開花した。それは理不尽な状況を覆し自身の理想を押し通すことの出来る力。

 そこでこの世界は竜泉寺零王を物語の主人公とした。


 力を得た主人公は自身を狙う異能者を排除し身の安全を確保する。

 そしてその得た力を過信して事の首謀者を追いかけた。


 そこからは色々と御都合主義や運命の甘やかしがあり主人公は首謀者を殴り飛ばし少女はヒロインとなる。そうして救われたヒロインは主人公に心を寄せて日の当たる世界へと足を踏み出す。

 主人公となった少年は世界の裏側へと足を踏み入れる。主人公の前には困難と理不尽が立ちふさがるのだけれど主人公は持ち前の気概と物語に愛された力によって打ち破っていく。


 その傍らには発端となってしまったヒロインの少女が。



 このヒロインが早乙女乙女と呼ばれるモノ。



 物語として考えれば、分からないでもない。隠された力や覚醒、ヒロインなど御都合主義が過ぎるところもそれは主人公であるが故なのだろう。それ自体は悪くない。

 陳腐であっても連続性のある歴とした物語であるのならば問題ない。


 けれどこの物語には前提が可笑しい所がある。


 例えば、ヒロインが造られたという研究所には首謀者の計略の痕跡が残っていなかった。

 そもそも研究所は裏社会に通じるモノでは無く異能などとも全く関わりのない極々普通の研究所。

 だからそこに少女がとらえられているはずも無く実験を行われるはずもない。

 本来であれば主人公が生まれるような悲劇は発生しないはずなのだ。


 ならば、だ。

 彼女は何者で、それ以前に何なのだろうか。


 主人公様の力をもってすれば......

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