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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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14-5

 表世界と隔絶された水没村の中からでも確認できるほどの魔力爆発。本来であれば隠すべき非日常的なそれを堂々と起こすという事は其処に目的があるのだろう。恐らくはそれを見ることの出来る者、つまりは俺に向けての示威行為。

 勿論自惚れである可能性もある。というよりは自惚れであってほしい。うん、自惚れであればどれほど楽だろうか。何が起きても自分には無関係。本当にそう割り切れるのならどれほど楽だろうか。

 残念ながら世界は楽をするためにはある程度行為代償が必要だ。楽をするためには努力をしなければならない。面倒を避けるためには面倒を処理しなければならない。それも自分の責任ではなく、それ以前に自分が中心でもない面倒事を処理しなければならない。

 この世界は矛盾に満ちている。本当に世の中面倒だ。

 ま、愚痴はこれくらいにしておこう。


 さて、魔力爆発が何であるか確認するためにも水没村から出ることにする。

 折角人型にしたナマズさんだけれど強大な魔力に怯えて穴倉に引きこもってしまった。仮にも土地神であるナマズさんなのだが情けない。弱小とはいえ土地神が怯えるという事は余程強大な爆発なのだろう。ここ最近感覚がマヒしているのかいまいち把握できない。

 因みに、ナマズさんが歩いた後には水跡が残っているのだがそれは見なかったことにした。水生生物が水を吐き出してもそれは普通の事だろう。それが仮に黄ばんでいても。というかそこまで精巧な人型にした覚えはないのだけれど。

 まあ、気にしないでおこう。


 残る従者はキャロルだがこちらは大人しくついて来る。俺の傍にいるのは本物ではなくキャロル(偽)であり、俺が作り出した物なので勝手を働くわけもないのだが。

 自分自身で生み出し別人格を装った人形ではあるものの近くに誰かがいるという事は少し気が楽だ。

 本来であればキャロル(偽)の扱いを考えなければならない所なのだが、面倒事は早めに裁かなければ雪だるま式に増えていく。キャロル(偽)の整理よりは外の魔力だ。



 水没村から徐々に表世界に近づくと魔力がより鮮明になる。その発生源は予想通り北陸、俺が水没村に来る前にいた場所の方角だ。発生源との距離も大体差はない。

 大体の予想通り魔力の発生は俺と関わりがある。予想通りとはいえその事実に少しの落胆を覚えつつ警戒しながら水没村を出る。


 面倒事はすぐ目の前に用意されていた。



「やあ、斎藤君。素直に出てきてくれて嬉しいわ」



 俺を出迎えたのは対面しただけで恐怖を抱かせるほどの圧倒的な力を秘めた、それもその状況でも抑えているという事が分かるほど力を持った御仁。化け物。

 ただ、見た目だけは良く妙齢の女性。陳腐な言葉を使えば精霊のような妖精のようなそれこそ日本人が大好きなエルフにも似た美女。但し耳は長くない。化け物自身もその優れた容姿を自覚しているようで白さが映えるような無駄にひらひらの多い衣装を着ている。

 圧力が凄すぎるとはいえ表面上はモブである俺にはもったいない配役だ。

 いつもであればお使いはザマス眼鏡が担当なのだが、と化け物から視線を外すと傍に控えていた。ザマス眼鏡はいつもの様にザマス眼鏡をつけ痩せこけ隈をつけていた。

 ザマス眼鏡がいるという事は目の前の化け物はいつもの面倒な組織の一員なのだろう。ザマス眼鏡の上司か、あるいはかなりの上層部。それこそ主人公様を引っ掻き回している諸悪の根源のひとつか。無駄に見てくれは良いわけだし。


 そんなことを考えていると化け物はスッとこちらに歩み寄って来た。そして微笑んで、と思いきや視線は俺と合わなかった。化け物は俺を素通りしてキャロル(偽)に絡みついた。物理的に。



「あら、ローズマリー・キャロル。何故あなたがここにいるのかしら。それも斎藤君の横に立つというのはどういうつもりかしら」

「あ、生憎私は、ってどこ触っているのです!?」

「まあ、良いではないか良いではないか。ですよ」

「良くないですわ!!」



 なんだろうかこの展開。

 エルフの皮を被った化け物はキャロル(偽)に纏わりついて悪戯を仕掛ける。それは露骨であるものの過剰過ぎず軽い感じの絡み合い、仲良し同士のじゃれ合いにも見える。いや、耳を甘噛みとかし始めたのでじゃれ合いではないな。

 キャロル(偽)の反応からするにいつもの事でごあいさつ程度なのだろう。化け物はこうやって主人公様の前で人間味を出していたのだろう。それを見て興奮しつつも呆れ迷惑そうに偽る主人公様の姿が目に浮かぶ。

 生憎その程度で警戒を解けるほど素直ではない俺は心底呆れるしかない。見目麗しい女性同士の絡み合いはサブカル能からすればご褒美なのだろうがそれはそれだ。


 というより化け物がキャロル(偽)に絡んでいるのは何も個人の趣味だけではない。勿論趣味というところも多分にあるのだろうけれどそれ以上にキャロル(偽)の触診が目的。キャロル(偽)が今どういう状況なのかを探ろうとしている。

 一応キャロル(偽)は俺の一部でもあるのでキャロル(偽)を通して行われることくらい把握できる。何気ない、とは言えないが平然とあれこれとやってくる化け物には本当に呆れるしかない。下手に抵抗や敵対を示せば潰されかねないので後手に回るしかないというのがまた面倒くさい。後手に回るのはいつもの事ではあるのだけれど。

 凡人は凡人らしく耐えて時を待つしかない。油断なく真面目に過ごすしかない。



 表向き妙齢の女性が美少女高校生に絡みつく阿呆な似非百合展開。その実は探りを入れてくる面倒な行為。

 そんなことを思っていたのだが阿呆な絡みが一向に終わらない。エルフの皮を被った化け物が趣味に走る痴態を見せつけられる。始めこそ探りを入れられていたのだが今となってはそれすらも無い。

 ホントなんだろうかこの展開。

 こちらの立場上下手なことは出来ないので何とかしてもらおうとザマス眼鏡の方を見ると明後日の方向を向いて諦めていた。何とかしろと合図を送るのだがどうにもならないと首を振るだけ。そこに何故か中間管理職の悲哀を感じた。

 

 結局真面目で苦労をする立場の者たちは化け物が満足して大人しくなってくれるのを待つしかなかった。


 ホントなんだろうなこの展開。

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