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70 命がけな免許皆伝試験 -その2-

 マジルカ村の南の森の中に、ハンゾウが発見した迷宮がある。

 俺とラキアとカリナ、そしてチョコの3人と1匹のパーティーがそこを目指していた。

「いつもすまないねぇ、チョコ」

 それは言わない約束でしょ、御主人様。と言っているのだろうか、チョコは俺をちらりと見て、再び前を向いた。

 チョコは、ダークキャットと呼ばれる魔物であり、俺に絶対服従状態である。

 魔物は、殺すと多くのカードを落とす。

 例えば、ドゥードゥルを倒すと、お金と卵と鶏肉のカードを落とす。

 そして、極稀にだが、その魔物のカードを落とす。

 カードになった魔物は、カードから具現化すると、具現化した人間に絶対に服従する魔物になる。

 本当は俺が殺して経験値にする予定だったのだが、殺すことができず、俺の部下にしたわけだ。

 まぁ、こういう時は、本当に殺さなくてよかったと思うよ。


 というわけで、俺とラキアとカリナの3人で迷宮を目指していたわけだ。

 ちなみに、この森には魔物はほとんどいない。迷宮が魔物を生み出す魔力を周囲から取り込むため、迷宮の周りには魔物はいないのだという。

 ただし、動物が少ないせいで獣道すらもできず、このあたりは未踏の地だった。

 まぁ、ハンゾウなら木々の枝の上を跳び進むから、獣道があろうがなかろうが関係なかったんだろうな。

 ちなみに、現在はドラゴンレンジャーズをはじめとしてマジルカ村に訪れる多くの冒険者がこの迷宮を訪れるため、歩きやすくなっている。

「ところで、ラキアもカリナも、ここの迷宮には来た事があるんだろ?」

「はい、ハンゾウさんと何度か。ですが、ここの魔物に勝てたことがないんです」

「私も……動く鎧(リビングメイル)や、ストーンゴーレムは私の魔法と相性があまりよくないので」

「そうか、危なくなったら俺は逃げるからお前たちは囮になれよ」

 俺が言うと、二人は意外そうな顔をして、

「そこは、危なくなったら迷わず逃げろ! 俺が囮になる! じゃないんですか?」

「バカ言え! 俺の実力じゃリビングメイルの一撃で死ぬし、右肘を掠っただけで右腕が吹き飛ぶ自信があるぞ!」

 ノーダメージクリアしないと死んでしまう。

 俺はスペラ○カーとして扱ってほしい。段差に躓いて死ぬとか言う前に、最初の段差にたどり着く前にエレベータと壁の間に挟まれて死んでしまうくらいに思ってくれ。

 あっちは死んでも生き返るが、俺は生き返らないから死に戻りなんて許されないぞ。

 お前等年下面してるが、俺と大して年齢変わらないんだからな。


 森の奥の巨木、その幹に大きな穴が開いており、そこが迷宮の入り口になっている。

「じゃあ、まずはラキアが降りて安全確認、次にカリナが降りて、俺が降り、最後にチョコを呼ぶ」

 俺の指示に従い、樹木の穴に設置された縄梯子を使って二人は降りていく。

 次に俺が降りた。

 迷宮の中に入るのは久しぶりだな。

 淡く輝く壁は、谷にある迷宮とあまり変わらない。

 そういえば、こいつらがドラゴンレンジャーズに入るきっかけになったのもあの迷宮だったよな。

 こいつらはその迷宮で死にかけていたが、あれからどれだけ成長したのか。

 見ものだ。

 俺は全く成長していないけどな。

「この迷宮はハンゾウさんたちが乱獲したせいで、だいぶ魔物の数は減っているから、そこまで危険ということはないですよ」

 ラキアはそう説明する。

 だといいんだが。

「チョコ、降りて来い!」

 俺の合図でチョコは上から飛び降りてきた。

 くるりんとまわって見事に着地する。流石猫科の魔物だな。

 パーティーが揃ったことで、俺達は迷宮の中を進むことになった。


 さて、ここで俺は免許皆伝試験について説明しないといけない。

 なぜ説明しないといけないのか?

 それは俺にもわからないが、まぁ、確認する意味で説明する。

 迷宮の奥にある部屋に、ハンゾウが巻物を置いたという。

 本当にいつの間に置いたんだよ、というくらい、免許皆伝すると決まったその日のうちに置き終わったそうだ。

 それを持って帰れば、晴れて二人は正式にドラゴンレンジャーズのメンバーになれるという。

 ぶっちゃけ、冒険者崩れの集まりにすぎなかったドラゴンレンジャーズに、ここまでして入る価値があるのか、というのが俺の考えであるんだがな。


 暫く迷宮の中を進む。

 確かに、魔物の数は減っている。前はここで動く鎧(リビングメイル)を見つけたんだったな。

 ハンゾウに金縛りの術をかけて動けなくしてもらった相手に、俺はクナイを持って攻撃を何回もしたんだが、全くダメージを与えられなかった。

 だが、その動く鎧(リビングメイル)も今日はいない。

 さらに進むと、ようやく最初の魔物を見つけた。

 ストーンゴーレムだ。ただし、前にみたものよりだいぶ小さい。

「よし、行け! 二人とも! 俺はここで見ているから」

「「はい!!」」

 まずはカリナが杖を構え、魔法を詠唱。ファイヤーボールを放つ。ファイヤーボールはストーンゴーレムに直撃した。

 それで、完全にストーンゴーレムは二人を敵と認めたらしい。

 二人の方に歩き出した。

 そこにラキアは剣で対抗する。

 大振りに振った剣はストーンゴーレムの腕に阻まれる。狙いが読まれたんだろう。

 ストーンゴーレムは顔にある核の部分が弱点であり、そこを突かれると弱い。

 俺の世界の伝承では、ゴーレムの身体のどこかにあるという「emeth(真理)」の[e]を消し、「meth(死んだ)」にすれば倒せる。

 この[e]の部分と同じようなものだと思っている。

 そのため、核以外の部分ではろくにダメージは与えられない。

 決して、拳の一撃で足を砕いて殺すような魔物ではない。そんなのができるのは巫女勇者くらいだ。

 もちろん、ラキアは巫女勇者ではない。核を狙うしかないが、核を狙われているとゴーレムも気付いているので、防御が容易にできる。

 カリナは……魔法詠唱のクールタイム中か。


 これはやばいな。やばすぎる。

 だって……

「なぁ、ラキア。後ろからもストーンゴーレムが来てるんだが」

 ゆっくりとだが、確実に近づいてくる死の配達人――ストーンゴーレムを見て俺はラキアを呼んだ。

「すみません、こっちは手いっぱいで! そっちは村長がなんとかしてください!」

 できるわけないだろうがっ!

 俺は護衛対象だぞ!

 絶対、こいつら不合格にしてやる!


 万が一生きて帰れたら……な! 

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