表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/89

69 命がけな免許皆伝試験 -その1-

 ゼロが仕事を手伝ってくれたこともあり、役場の仕事はある程度落ち着きを取り戻し、俺の平均睡眠時間も5時間は確保できるようになった。

 喜ばしい限りだ。しかも、精霊なんで、給料計算とか税金の計算とか住民登記とか厄介な作業をしなくてもいい。

 流石俺のパートナー、最高だ。


 というわけで、今日も定時に仕事が終わり、前もって約束した通りミコトが役場に入ってきた。

 話題は、ミーシピア港町へ行くメンバーのことだった。

「俺とハヅキちゃん、あとマリンは行くことにしたんだが」

 もちろん、俺が行くことで、ゼロも一緒に行くことになる。

 ちなみに、そのゼロだが、今は俺の中で眠っている。一日外に出たら一週間は眠ってしまうという、燃費の悪い大精霊だからな。

「拙者も行くでござる!」

 相変わらず神出鬼没だな、ハンゾウ。

 お前を呼んだ覚えはないし、これから呼ぶ予定もない。

「お前と海を一緒にしたら、ビーチが男性立ち入り禁止になりそうだから一緒に行きましょう」

 ア……アンナさん、無言でクナイを突きつけるのはやめてください。

 気付かなかったら俺、どうなってたの? ていうか、あんた達どこから入ったの?

 入口の扉が開いた気配はなかったし、他の出入り口は鍵がかかってるんだけど。

 あと、役場で流血沙汰とかになったら掃除が大変だからできるだけやめてほしいんだが。

 ……なんだろ、俺、最近殺気に敏感になっている気がする。

 でも、最近は「ハンゾウ」と呼び捨てする分には怒られなくなった。

 少しは丸くなったのかな。

 殺気がおさまるのを感じながら、俺はそう解釈することにした。

「ミコトはどうする?」

「私はやめておくわ。ビーチって日焼けしそうだし」

「ミコト、最強なのに影が薄くなってきてる気がするけど、本当に留守番でいいのか? ますます出番なくなるぞ?」

「……スグルくん……たまに変な電波を受信してるわよ。そろそろ遮断しておかないといけないわね」

 電波を受信か。はは、俺にそんな異能の力があれば最弱街道を進まないさ。

 じゃあ、俺と、ハヅキちゃんと、マリンと、ハンゾウと――

「私も行くわよ」

「はい、アンナさんはハンゾウが一緒に行く時点で数に入れています」

 ――アンナの5人か。

 パスカルは村長代行として仕事があるだろうし、他の皆も仕事があるからな。

「お兄様、私の水着楽しみにしていてくださいね」

「アンナはあまり露出の高い水着は控えるでござるよ」

「まぁ、お兄様、なんとお優しい。では、スクール水着を用意しますね」

 あの、バカップルならぬバカ兄妹は外に行ってくれませんか?

 てか、スクール水着なんて用意するなよ?

 そんなことになったら俺、絶対に他人のフリなんてしませんからクナイをこっちに向けないでください。

 くそっ、心の中での愚痴すら許されないのか。

「そういえば、ちょうどいいや。ハンゾウ。ラキアとカリナの様子はどうなんだ?」

「うむ、なかなか頑張ってるでござるよ。ラキア殿は剣レベルが20になったでござるし、カリナ殿の魔法の威力もなかなかのものになり申した」

「へぇ……そうか、とりあえず、アンナさんは他の女性が褒められたことで悔しがらないでください。下唇から血が出てるのってもうホラーです」

 彼女が出てから、俺は心臓が落ち着かない。ドキドキが止まらないぜ。

「誰ですか! 恋のライバルの予感がします!」

 ……ハヅキちゃん、君もどこから現れたの?

 ドキドキって、恋のドキドキじゃないからね?

「ハヅキちゃん、恋とかそんな話はしていないから。ていうか、どこから入ったの?」

「乙女には秘密のポケットの一つや二つは持ってるものです」

「うん、秘密のポケットが一つや二つあったら、役場にとって一大事なんだよね」

 まぁ、ハヅキちゃんの秘密の入り口って、普通の人間が入れる大きさじゃないと思うけど。

 最悪、霊体なら鍵をかけようが、核シェルターの中だろうが関係なく入れるだろうしね。

「で、何の話をしていたんですか?」

「いや、ラキアとカリナって、ドラゴンレンジャーズ見習い扱いだったけど、そろそろ見習いを外してもいいんじゃないか? って思ってさ」

 特にラキアは毎朝、ドゥードゥル狩りを頑張ってくれてるからな。

 ご褒美的な意味でも、必要な措置だと思うんだけど。

「なるほど。では、試験を実施するのはどうでござろう?」

「試験?」

「うむ、免許皆伝試験でござる」

 お、ハンゾウがなんか忍者っぽいことを言ってる。

 免許皆伝試験か。

 確かにそういうのがあってもいいかもしれないな。

「よし、ハンゾウに全部任せていいか? 俺もできるだけ協力するから」

 自分でも思わず出たその一言。

 それが、まさか――



   ※※※



「というわけで、試験の課題は、スグル殿を護衛しながらの迷宮探索でござる!」

「はい、頑張ります!」

「任せてください、村長さん!」

 ラキアとカリナが気合を入れて頷いた。迷宮探索かぁ。

 迷宮って、アイアンゴーレムとか出てくるところだよな?

 あんな化け物に殴られたら、俺、絶対に一撃で死ぬんだけど。

 まさか、ここまで俺の身を危険にさらすことになるとは思わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ