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65 最強にして最弱にして最強の魔物狩り -その2 -

すみません、先ほど別作品を投稿してしまいました。

 宿屋に運ばれたドラゴンレンジャーズの面々。

 運んだのはミコトの操る粘土人形達だ。

 一体で一人ずつ運んでいる。

 そして、そのミコトの腕に巻かれた白い布きれ――彼女の左袖が破られているところを見ると、自分の服を破って止血に使ったのだろう――は赤く滲んでいる。

 ミコトが怪我をしたというのは紛れもない事実のようだ。

「ミコト、一体、何があったんだ」

 正直、ミコトなら魔王や神相手に戦ってもどうにかなるんじゃないか? なんて妄想を抱いていた。

 ギルドランクだけでいえばまさに世界最強。

 常識外。まともに戦うものへの冒涜。

 そもそも本当に人間なのか?

 そう思っていた。

「何故かしら? スグル君に怒りを感じるのだけど」

 勘も鋭い。

 そんなミコトが、なんで怪我をしたのか?

「話は後でするわ。それより、マリンは?」

「ああ、いまパスカルが呼びに行って――」

 タタタタタ、と小さな足音が近付いてきて、扉が開かれた。

 とんがり帽子の魔法少女、マリンが来たようだ。

「大丈夫ですか! マリンが来たからにはもうへっちゃらです! 死んでない限りどんな怪我でも治療しますよ!」

「ええ、大丈夫よ。私はいいから、みんなのところにいってもらえるかしら?」

 ミコトはそう言い、マリンを奥の大部屋へと誘った。

 暫くして、奥の部屋から光が洩れていた。

 マリンのリザレクション、もしくはリカバリーが炸裂したのだろう。彼女の魔法も常識外だからな。

 俺自身も失った片腕を治してもらったことがあるから。

 何度か光が来た後、マリンが部屋から出てきて、別の部屋へと入って行った。

 そこからも光が洩れ、再びマリンが現れる。

「治療は終わりました。次はミコトの番ですね」

 ミコトの傷は大したことがないとマリンは言い、リカバリーをかけた。

「ありがとう、マリン。痛みもすっかりなくなったわ」

「いえいえ。マリンができることはこのくらいですから。で、スグル、どこに逃げましょう?」

「まて、なんで逃げること前提に話してるんだ?」

「わからないのですか? ミコトが負けたというのなら、敵は恐らく災害急の魔物です。普通に倒せるわけがありません」

 マリンが当たり前、という感じで答えた。

 確かに、逃げも考えないといけない。

 でも、まずは事情を聞いてからだ。

「ミコト、一体何があったんだ?」

「小さな……小さな魔物だったのよ。はじめて見る魔物で、見逃してもいいかと思ったんだけど、その魔物がニヤリと笑うと、体が急に重くなったの」

「重力系の魔物か?」

「違うと思うわ……むしろ、力が抜ける感じ……かしら。私だけでなく、全員がそうなったわ」

 体が重くなり、力が抜ける。

 重力系と脱力系のコンビネーション魔法?

 グラ○デとダウ○オールを同時でかけられた……みたいな感じか?

「その後、その魔物は動けない私達をいたぶったの。式神の粘土人形もその魔物に近付くと力を失い紙切れに変わったわ。

 奴が近くに別の魔物を見つけてその魔物をいたぶりにいったとき、咄嗟に粘土人形を全て出して、私達を担がせて、その場から逃げ出せたの」

 ……惨敗というわけか。

「近付くと力がなくなるというのなら、遠くから攻撃をするしかない。とりあえず、見張りを村の四方に置く。主な攻撃手段はマリンの攻撃魔法、ハンゾウ、アンナのクナイによる攻撃になりそうだな」

「うっ、スグル、戦うのですか?」

 マリンがとても嫌そうな顔をする。

 俺だって嫌だよ。

「もちろん、逃げる準備もしないといけない。だが、その魔物がこの村に来ないという可能性もある。逃げるにしても、その魔物の情報は得ておきたい」

「私もスグルくんに賛成よ。今はまだ敵の情報が少なすぎるわ。遠くから攻撃をして、敵の能力を把握しておきたいところね」

 ミコトはそう言いながら、左腕にまいていた布をほどく。

 傷一つない綺麗な腕がそこにあった。マリンの治療魔法が成功しているようだ。

「それでも、マリンの言う通り、避難準備はしておいたほうがいいのも確かだ。戦う人以外は避難準備を進め、魔物の姿が見えたら即座に避難できるようにしたい。今回怪我したドラゴンレンジャーズの皆には彼らの護衛を頼もうと思う」

「それがいいわね。では、ドラゴンレンジャーズの皆には私から伝えるから、スグルくんは全員に避難準備を始めるように伝えてくれるかしら」

「わかりました! 私も避難準備をしてきます!」

 マリンがそう言って宿を出ようとする。

 俺はその首根っこを捕まえた。

「なんで今日はそんなにやる気がないんだ、マリン」

「えっと……よくわからないんですが、私の中で眠っているウィンディーが寝言で危険信号を出しているんです。こんなの初めてですよ」

「寝言で危険信号って……曖昧だな」

「曖昧だからこそ怖いんですよ」

 確かに、ウィンディーは水の大精霊だ。

 俺達の知らない何かを感じ取ったのかもしれない。

《感じ取ってるわよ》

 そう言って現れたのは、命の大精霊――マナだった。

「……突然現れたな」

 久しぶりに会った気がする。いや、姿は見えないけど。マリンの中にいるから。

《この気配は無の大精霊の気配よ。ウィンディーのほうが先に気付いたと思うんだけど》

 ……無の大精霊?

 なんかやばそうな名前に、俺はじと目でマリンを見つめた。

「あぁ……そういえば、全ての大精霊はマリンに向かっているんだっけか?」

「う……ええと……あはは」

 マリンが笑ってごまかそうとするが、でも、まぁ、大人の対応としてマリンをここで責めるのは間違いだろう。

 大精霊に好かれたのはマリンのせいではないのだから。


 だから、無の大精霊が来ることは怒らない。

 その代わり、無の大精霊について、今、黙っていたことについて怒るとしよう。

「マリン、気付いたことがあったらすぐに話せこのやろぉ!」

 そう言って、マリンの頭をぐりぐりした。

 もちろん、俺の攻撃は全くマリンに通じていないのだが。それでも少しは痛いだろ。

「痛いですよ、スグル。それに、本当にそんなことしてる場合じゃないんです。無の大精霊は本当に危ないんですよ」

 マリンが雰囲気で(あまり痛くないはずなのに)悲鳴を上げながら叫んだ。

 何が危ないんだよ。

《無の大精霊一体のせいでかつて一つの国が滅んでいます。そして、無の大精霊の前には全ての武力が役に立ちません。正直、逃げることをお勧めします》

 マナの言うその台詞に……俺はパスカルから聞いた伝承を思い出した。

 そうでないと困る。

なんかラスボスっぽい敵が現れた雰囲気ですが……

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