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50 与えられない神の加護

 マジルカ村の朝は、鶏の魔物、ドゥードゥルの鳴き声からはじまる。

 養鶏所の魔物の数は現在も100匹をキープしている。俺が調べた論文とかなり差異はあるが、好ましい結果だ。

 そして、その鳴き声が、断末魔の雄叫びへと変わるのは時間の問題だった。

 ラキアが頑張って殺しているのだろう。

「卵に変わるのなら、雄じゃなくて雌か。なら雌叫びか?」

 72時間ぶりに睡眠を取り、目覚めたとき、俺はそんなことを思った。

 まぁ、雌が雄々しい声をあげてはいけないという決まりはないから雄叫びでいいだろう。

 あれ? でも「コケコッコー」と鳴くのは雄だけじゃなかったっけ?

 養鶏場の鶏、よく見たら全部トサカがあった気がする。

 雄なのに卵を作るとは、どういうことだ?

「鶏が先か、卵が先か? の問題以前に本当にこの卵は鶏の子か?」

 卵を見つめ、俺は真剣に考える。

 こんなことを真剣に考えてしまうあたり、疲れが抜けていないのかもしれない。

 ちなみに、今日の朝食はゆで卵とパンとサラダだ。

 マリンが行儀よく座って、俺よりも先に食べ始めていた。

 ハヅキちゃんは俺の目の前にお茶の入ったカップを置き、

「気になるなら孵化させてしまえばどうですか?」

「ははは、これはゆで卵だからひよこにはならないぜ、ハヅキちゃん」

 俺はそう言って、自分の頭に卵を当ててみる。

 卵に罅がはいった。

「いえ、鶏卵のカードはまだありますから」

 そう言って、ハヅキちゃんは鶏卵のカードを見せてくれた。

 そもそも、無精卵か有精卵かもわからないしな。

 まぁ、市販のウズラの卵は10個に1個は有精卵が混じっていて、孵化することもできるらしいから、カードの卵にも有精卵が混ざっていてもおかしくない。

 今後の研究のために孵化できるかどうか実験してみてもいいかもしれない。

「うまくいけばドゥードゥルじゃなくて普通の鶏が生まれるかもしれないな。なにせ鶏卵って名前だし」

「卵から生まれるのはニワトリじゃなくてヒヨコだよ」

 横でゆで卵を食べていたマリンにツッコまれた。記憶喪失のマリンにツッコまれると流石に悲しくなる。

 俺だってそのくらいはわかっている。ただの言葉の綾だ。

「でも、流石に家で飼うのはやめた方がいいと思うよ」

「なんでだ?」

「仮に、家でドゥードゥルが卵から生まれたとしたら――」

「マリンよ、卵から生まれるのはドゥードゥルの雛だぜ」

「ドゥードゥルの雛って見たことある?」

「いや、ないな」

「仮に、家でドゥードゥルが卵から生まれたとしたら――」

 ぐっ、的確にツッコミをいれられて的確に流された。

 確かに、見たこともないものをいると断定することはできない。

 マリン、成長したな。

「スグル、ドゥードゥルに殺されるんじゃない?」

 当たり前のことを言うように、マリンは尋ねた。

「……いや、流石に俺でも生まれたての魔物に殺されは……しないとは言い切れないな」

 悲しい現実だ。

 ドゥードゥルは魔物の中でも最弱級。

 マリンが魔法を使わなくても倒せるくらいの弱さ。

 それを聞いて、俺は檻に入っているドゥードゥルを倒してみようと思ったが、奴ら、自分の羽を飛ばして攻撃してきた。

 俺の肉を余裕で切り裂く羽攻撃に俺は降参したな。

 助けてマリエモンとか言って治療してもらったな。いや、そんなの○太くんみたいな頼み方はしていないけれど。

 自らの羽を簡単に武器にするなんて……どうせ羽をむしるなら鶴の恩返しみたいに織物にしてほしいものだ。

 だが、奴らにとって俺は恩人ではなく仇人だろうから織物は諦めるか。

「うん、まぁ、今までの俺なら殺されるだろうな」

「今までのスグルさんなら?」

 ハヅキちゃんが尋ねた。

 それに答えるように俺は胸を張っていった。

「俺は成長した!」


スグル【身体防御14・足防御1・短剣2・魔物使い9】


 俺は自ら書いたスキル証明書をマリンに見せる。

「え、スグル、身体防御14まで成長したの?」

「あぁ、防御スキルはダメージを喰らうたびに成長するからな。ヒャコの奴に腕を吹き飛ばされたり、飛竜に指を食われたりしてパワーアップしたんだ」

 足防御スキルはラコに足を折られたときに覚えたらしい。ただ、スキルを覚えるときはレベル1からスタートするらしく、大きな成長はなかった。

 短剣も暇がある時に板に対して攻撃を続けてようやくレベル1あがった。

「これで、俺もランクS-とはおさらばだ」

 俺は高笑いしながらゆで卵を口に放り込む。

 殻を割っただけで、剥くのを忘れていたのに気付くのはそれからすぐのことだった。



    ※※※



「なんでだぁぁぁぁぁぁっ!」

 その結果に俺は雄叫びを上げた。

 男だから雄叫びだ。そして、男泣きもする。

 ずいぶんと安っぽい涙だと思わなくもないが、泣きたくなるだろう、

【S-】

 ガラス球の中に表示された俺の冒険者ランクを見たら。

「おかしいですね、スキルレベルが上がったら少しは成長すると思ったんですが」

 冒険者ランクはFまではすぐに上がっていくはずだとバッカスは言った。

 それ以上になると、スキルレベルが上がりにくくなるから苦労するらしい。

「そもそも、スキルを全く装備していない子供ですら、ランクは本来【L】くらいはあるんですよ」

「子供なのにLって……子供こそSサイズで十分だろう」

「いえ、服のサイズの話ではないんですが」

 どうやらこっちの世界でも服のサイズはS、M、Lらしい。

 XLもあるのだろうか。

 ちなみに、俺の服はMサイズだと思う。

「そうだ、疲れているからだ。最近寝不足だしな。バッカス、こういうのって体調とか影響でるんだろ?」

「いえ、出ません」

「ほら、やっぱり疲れてるせいだな。幻聴も聞こえるし」

 認めない、こんな現実認めてなるものか。

 そうだ、夢だ、これは夢だ。

 よし、夢なら寝たら目覚めるはずだ。

 そして俺は――


「ようこそ夢の世界へ」


 神様と再会した。


    ※※※



 バッカスが止まっていた。他にも酒場にいるはずのゴメスや他の客も止まっている。

 この光景に出くわすのは三度目だ。

「ようこそ、夢の世界へ」

 椅子に座っていた小さな男の子が言った。

 この子に会うのも三度目。

 神様だ。

「あぁ、なんかずいぶんと久しぶりだな。仕事が忙しかったのか?」

 神様に俺は尋ねた。

 以前、出会ったとき、この神様は世界全体を管理しているのに給料をもらっていない憐れな人だとわかった。

「ううん、ちょっと箱根に二泊三日の温泉旅行にいってただけだよ」

「え、休みもらえたのか!?」

「そこにツッコむの? できれば箱根にいったことに驚いてほしかったんだけど」

 そうは言われてもなぁ。

 神様=休みなし。

 休みなし=神様。

 そう思ってたからなぁ。

 給料も出ないブラック企業のくせに休みはあるのか。

「冗談だよ、ていうか、君は神様を何だと思ってるのかな」

「ブラック企業の管理責任者」

「…………あながち間違いじゃないんだけどね」

 神様はそういって嘆息を漏らした。

 やはりというか、案の定、神様もいろいろ苦労しているようだ。

「まぁ、箱根二泊三日はウソだろうってのはわかったよ。だとしたらこんなに早く来るわけないもんな」

「へぇ、気付いたんだ」

 神様はほくそ笑み、言う。

「この世界の一年が、日本での一日だというのなら気付いてるぞ」

 これは、マリンと出会ったときに知った。

 携帯電話の時間のズレとマリンがこの世界に来たとき、俺達がこの世界に来たときの時間のズレ。

 それだけで十分推測できた。

「まぁ、一年というには少しは誤差があるんだけどね、流石だね、スグル村長。生きてるだけはあるね」

「そこはゲーマーを自負するだけはあるね、とか村長をやってるだけはあるね、って言ってほしいんだが」

 まるで俺が生きていることそのものが奇跡みたいな言い方だ。

「いやいや、本当に凄いよ。スグル村長が生きているなんて奇跡としか言いようがないんだから」

「本当に奇跡扱いかよ、ひどいな」

「そうはいってもねぇ、たとえば、君の村のドゥードゥルだけど、日本だとどのくらいの強さかわかる?」

「ん? 鶏くらいじゃないのか?」

 俺は思ったままに言った。

「君は鶏と一対一で勝負して負けると思う?」

 俺が鶏と喧嘩?

 ふむ、どうだろうか。

「負けるんじゃないか?」

「どれだけ負け犬根性がついてるんだよ!」

 さすがに神様も呆れた、という感じで叫んだ。

「普通の高校生は鶏と喧嘩したら勝てるよ」

「でも、ほら、リ○クだってコッコに負けることもあるし」

「だからゲームと一緒にしないで。あとコッコに負けるリン○はたぶん1:1で勝負してないからね」

 神様はどうやらゼ○ダの伝説経験者らしい。

「話を戻すけど、普通の高校生は鶏には負けないんだよ」

「何が言いたいんだ?」

「つまり、ドゥードゥルの強さなんだけどね――」

 神様は嘆息混じりに言った。

「ヌーと対等に勝負できるんじゃないかな」

「ヌーって……ライオンとかならわかるが……結構強いんじゃないか?」

 確か、アフリカに住む大きな牛だ。アメリカでいうバイソンのような凶暴な牛。

 日本の牛よりも強いと思う。

「強いよ。素手の人間では太刀打ちできないね。武器を持っていても苦労はするよ」

「ちょっと待て、ドゥードゥルは小さい子供でも退治できる魔物だって」

「そうだよ、それが君の今いる世界の現実なんだ。神の加護で満たされた世界での現実だ」

「神の加護……?」

「君はおかしいと思わないかい? 魔物を倒したら成長するスキルについて」

「…………」

 おかしい。そんなこと思ったことなかったのが正直な感想だ。

 ゲームの中では当たり前すぎるその現実を、妙だと言われるまで妙だと思わなかった。

「スキルだけじゃない、この世界に住むすべての人には神の加護が与えられているんだ」

「そんなこと言われても……」

「君は気付いているはずだ。少なくとも、あのレプラコーンに会った時に」

 ラコに?

 竜に育てられ、竜を守るために僕に体当たりをしてきた。

「確かにあの身体であの力は凄いとは思うが――」

 小さい身体で大きな岩とか動かす力は異常とはいえるが、蟻だって自分の身体の何倍もの虫を持ち上げたりするから。

 ありえないか? と聞かれたらありえないとは言い切れない。

 蟻と比べるのは失礼だと思うが。

 俺が考えを述べると、神様は肩をすくめて、

「誰かを蟻と比べるのを失礼だと思うことは、蟻に対して失礼だと思うけどね。君の村の地下でも排泄物を食べて衛生管理を行ってる立派な蟻がいるでしょ?

 彼のおかげで君の養鶏所もうまくいってるんだし」

「は? イートアントと養鶏所と関係あるのか?」

「そりゃあるさ、確かに錫の壁は魔力が出るのを防ぐ力はあるけど完璧じゃない。本来なら99%どころか80%くらいしか魔物還元しないはずさ。だけれども、イートアントが排泄物を食べて、その排泄物を魔力として作り替えていたんだよ。このままだったら危なかったんだけどね、君が養鶏所に魔力鉱を置いたことでそちらに引き寄せられていって、抜けた魔力と同等分供給されてるのさ。今のままだったら半永久的にドゥードゥルの数は保たれるんじゃないかな?」

「本当か、凄いな……論文にして発表するか、情報を独占するか……」

「まぁ、君は目が覚めたら記憶を失うんだけどね」

 そうだった。

 そういえば俺もさっきまで神様の存在をすっかり忘れていた。

「ところで、本当にわからないのかい? レプラコーンの妙なところ」

「そうはいわれてもな、レプラコーン種族についてはあまり詳しくないし」

「種族は関係ないさ、彼女の境遇が問題なんだよ」

 境遇?

 彼女の境遇についても俺はほとんど知らない。

 物心ついたときには両親が死んでいて、竜と一緒に育って、土魔法が使える。

 まぁ、しゃべり方は少し変だがそれも一人で育ったから仕方が――いや、違う。

 俺は気付いた。

「一人で育ったのに普通に話せてることがおかしいのか」

 竜は人間の言葉なんて話せない。

 本はあっても文字だけでは言葉は発せられない。

 近づく人間はすぐに死んでしまった。

 なのに、言葉は普通に話せる。

「正解、ぎりぎり及第点ってところだね。あと、自分の名前を知らないのに魔法書と契約できたことも妙だとは思うけど、そこは彼女の両親が代筆で済ませただけなんだよね。彼女の名前は実は彼女の持っていた本に書かれていた。彼女は今でも気付いていないだろうが」

 代筆でも魔法書と契約できるのか。

「どうしてラコが日本語を……違うな、この世界の誰もが日本語を話すことができるのか?

 それが神の恩恵だっていうのか?」

「そうだよ。ある程度の年齢になったら言語を発し、理解し、読み書きさえできる。

 これがこの世界における神《僕》の恩恵さ」

「なんで日本語なんだ?」

「それは秘密だよ。といっても君も大体の予想はついているんだろうがね」

 あぁ、あくまでも予想であって推論ですらないが。

「でだ、本題にはいる。君には神の恩恵が……まるでない」

「は? いや、スキルとかは覚えてるから、これが神の恩恵じゃないのか?」

「そうだね、スキルは覚えている。ただし、スキルを覚えても全く効果がでていないんだよ」

 効果がでていない?

 それって、身体防御レベルが上がっても、防御力が上がらないとか、短剣スキルを覚えても短剣レベルが上がらないとか、そういう話か?

「おかしいだろ、俺、計算スキルがだいぶ上がったおかげで今なら3桁の掛け算くらい暗算できるぞ」

「それは君が頑張ったからだ。毎日帳簿ばかりつけているせいだろうね」

「村経営レベルがあがってから、5日くらいの徹夜は耐えられるぞ」

「それも君が頑張ったから……というより村経営スキルにそんなボーナスはないよ」

 耐睡眠スキルレベル20になった一般人でも三日の徹夜が限界だよ、と神様は言った。そして、神様は断言する。

「スグル村長。君には何の恩恵もない。本来、スキルをつけてなくても最低レベルの魔物に対抗でいるだけのボーナスはあるんだが君にはそれすらない。だから弱い」

「なんでだ、なんで俺だけ……」

「君がイレギュラーだったんじゃない、君の仲間がイレギュラー過ぎたんだ……」

 神様は嘆息を漏らす。

「ハンゾウ、ミコト。彼らの強さはこの世界でもイレギュラーだった。恩恵がなくても最強レベルだった。

 僕は本来、そういう人達には恩恵は与えない。だが、もう一つイレギュラーがあった。ハヅキ、彼女は幽霊だった。

 幽霊がゲームをするなんて、神の僕でも想像できなかったよ。この世界は創造できたのに想像できなかったよ」

「……さらっと大事業をギャグで済ませたな」

 そして神様は言った。


「流石の君もツッコミにキレがないね。まぁ、幽霊がゲームをするもんだから、イレギュラーが起きてね、彼女の場合恩恵をつけたくてもつけられないんだ」

 ハヅキは完全防御能力や憑依能力に目を奪われがちだが、身体能力だけに関してはそれほど高くないのだと。

 そのため、彼女は恩恵を貰うべき存在だったと説明したうえで続けた。

「幽霊なんだもん。そのせいで、同じパーティーだった君たちに恩恵のONとOFFが入れ替わってしまったんだ。オンケイだけにONオンになるのもケイだったんだね」

「ちょくちょくギャグを挟むな。全然うまくないぞ」

「あぁ、ごめんよ。せめて気持ちだけでも明るくなろうと思ってね。つまり、それでミコトに恩恵がついてしまい――」

「俺に恩恵が付かなかった」

 俺が先に結論を出すと、

「その通りさ」

 神様は息を吐き、申し訳ないという感じで答えた。

 完璧な設計ほど一つのイレギュラーには対処できないのだと。

 それが、今回、本来、想定外の三人の力が一人にイレギュラーを与える結果になった。

「バグはそれだけじゃなくてもう一つ大きな問題をはらんだんだけど、それは今話すことじゃないね」

「……恩恵を今から授かることはできないのか?」

「ダメだね。今の僕は管理者でしかない。正しい理由がないとそれはできない」

「間違っているものを正すというのは正しい理由じゃないのか?」

「間違っているものを正す場合、方法は二つ。修正するか、廃棄するか。僕に許された選択肢は後者だけだ。でも、それは選びたくない」

 神様は悔しそうにいった。神だって万能じゃないんだよ、と。

「つまり、この世界に住む人間は多かれ少なかれ、神の恩恵を授かっているのに、俺だけ何もないってことか」

 そうか。

 いくらスキルを上げても冒険者ランクが上がらなかったのもそのせいか。

 レベルが上がっても、攻撃力も防御力も賢さも素早さも運のよささえも上がらないんだから。

 魔法耐性が0なのも頷ける。

 魔法耐性という防御能力そのものが神の恩恵だったのだから。

 この世界において、俺だけが何も持たないノーチートだったのだから。

「ということで、まぁ、許してくれたまえ」

「上からっ! 急に上から態度になったな! 謝る気ないだろっ!」

 俺は怒鳴りつけて、神に怒鳴りつけて、

「何様だよ!?」と定番の質問をぶつけて「神様」と答えさせてやろうかと思って、

「まぁ、いいや」

 俺もまた笑った。

「でもまぁ、俺が弱いのも意味はあったってことか。おかげでハンゾウやミコトが強くなったんだよな」

 怒り疲れた。

「そうだね」

「そのおかげで、魔物も楽に倒してもらったり、いろいろと助かったってわけだ」

「そういう考え方もあるね。ここで話したことは忘れると思う。けれども、決意は、思いは心に残る。だから、決意してほしい、魔物狩りは諦めて村の経営に専念すると」

 神様は言った。

 もう危険なことはやめて、村の中で安全に暮らせばいいと。

 君の身の安全は、君の仲間が保証してくれるだろうと。

 確かに、それが堅実な生き方だろう。

 モン○ンもド○クエもテイ○ズもファ○ナルファンタジーもファイアーエン○レムもゼ○ダもやめればいい。

 これからシム○ティ―なり牧○物語なりトロ○コなりの生活を送ればいいということだ。シ○ィライゼーションでは戦争禁止の平和モードで楽しめということだ。

 それが、諦めるということだ。

「いや、諦められないな」

「――え?」

「恩恵がないからといって魔物を狩れないって理由にはならないだろ? ならば、俺は別のやり方を模索するだけさ。むしろ、恩恵に変わる何かを手に入れる方法を探す手段を模索するので俺の脳はフル回転中だ」

「……茨の道になるよ?」

「もとより、出血はいつもしているさ。茨に刺さったところで平気さ」

 むしろ茨のトゲなんて、腕が消し飛ぶ痛みに比べたらどうってことはない。

 俺の決意表明に、神様はしばらく黙った後、とても嬉しそうに笑った。

「あはは、これは参ったな。スグル村長、僕の負けだ。お詫びに一つだけいいことを教えてあげよう

「いいこと? 聞いても忘れるんじゃないか?」

「あぁ、忘れるね。でも、記憶はなくなっても心は残る。じゃあ、これだけ言って僕は仕事に戻るよ。スグル村長も仕事を頑張ってね」


 最後に神様が言った言葉に、俺は今日もっとも驚いた。

 だが、それもすぐに忘れてしまうだろう。

 覚えてるとしたら、驚いたことくらいかもしれない。


「君と一緒に住んでるハヅキ……彼女はまだ死んでいない。生きているんだ」


 そんなことを言われて、驚き以外に何があるというのか。

意外と長くなってしまった。

通常の倍の文量です。


ということで50話でやっと、タイトルの本当の意味

「俺だけノーチート」

が回収できました。

つまり、四人の中で一人だけノーチートだった、ではなく、

世界の中でスグルだけがノーチートだった、というオチです。


ハヅキちゃんが生きているとはどういう意味なのかは当分謎のまま、話はメインストーリーに戻ります。

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