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夕飯をすませるとそれぞれの部屋に戻る。大翔と2人きりになると嫌な沈黙が部屋を支配した。光輝は机に向かう。
「なにしてんの?」
ふと声がかけられる。ふりかえれば大翔がベッドに座りながらこちらをみていた。視線が合えば気まずそうにさっとそらされたが…。
「勉強だよ」
答えを返せばふーんと興味無さそうな返事がかえってくる。そして再びおとずれる沈黙。
「…楽しい?」
沈黙が嫌なのか今日は大翔のほうから声をかけてくれる。光輝は少し嬉しくなったが態度にだすと気持ち悪がられる可能性が高いので冷静をよそおう。
「勉強は別に楽しくないかな」
「頭いいの?」
「…普通っスね」
光輝の成績はちょうど真ん中だ。いいとも悪いともいえずに煮え切らない返事をかえす。そこからまた部屋に静寂がおとずれる。しばらくして光輝がうーんと唸りだした。わからない問題が出てきたのだ。光輝が唸りながらずっと考えているとベッドから立ち上がった大翔が光輝の横にきた。
「どこがわかんねーの?」
「え?…ここ」
正直、大翔にわかるとは思わなかった。みためからして勉強嫌いでサボってるようなイメージがあったのだ。
「これ?簡単だろ」
大翔はシャーペンを手にして紙にサラサラと書き込みながら問題の解き方を光輝に教えていく。綺麗な字である。そして教え方もかなりうまい。
「あ、そういうことか!」
理解する。もしかすると教師が教えるのよりもうまいかもしれない。大翔をみためで判断してしまったことを心の中で謝罪しながら今度はにっこり笑って口に出してお礼を言う。
「ありがとう!助かった!頭いいんだな!」
「…別に…。どういたしまして」
そんな光輝に驚いたように目を丸くしたがすぐにふいと顔ごと視線を外される。
「俺、先に寝る」
ベッドに戻っていく後ろ姿を見送ってまた机に向き直る。2時間後、勉強を終わらせ背伸びをしながら椅子から立ち上がる。
「寝てる…」
大翔は光輝のスペースを考えてくれたのかかなり奥に詰めてくれている。寝顔もすごく綺麗だ。不機嫌そうな顔つきしかみたことがなかっただけに柔らかい表情に少し感動する。
「本当は優しそうだよな。」
光輝はベッドに入りながらつぶやく。そして布団をかぶった。隣の大翔にもしっかり布団をかけてやりつつ自然と笑みをこぼす。
「おやすみ」
光輝は電気を消した。