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転校初日でホモ疑惑を自ら生み出した大翔はというと放課後になると光輝を置いてサッサと1人帰ってしまう。仕方ないのでいつものように修二と二人並んで下校をしていた。校門をでるところで後ろから声がかけられる。

「光輝くん、今終わったところ?俺もなんだ。大翔は1人で帰ったのかな?」

爽やかに声をかけてくる泉二のまわりには…あぁ、みたくない。ごつい三年の先輩方が泉二のまわりを囲んでいたのだ。一瞬、絡まれているのかとも思ったが様子が違う。泉二を囲む彼らに敵意などは全く見られずそれどころか泉二へと尊敬の眼差しをむけているものばかりだ。はたからみてもわかる。

「泉二さん…その、まわりの方々は…」

「あぁ、なんか知らないけどパシリにしてくれって頼まれたんだよ。気にしなくていいから、ね?一緒に帰らない?」

サラリととんでもないな爆弾発言をしてくれる。そのパシリ(?)の中には教師でさえ手の付けられない問題児達の姿も見受けられる。

「えっと」

「嫌かな?」

眩しいイケメンだ。首を傾げてくる。

「嫌、じゃないんですけど…」

「けど?」

周りの方々がこわいからお断りしますとは言いづらい雰囲気だ。助けを求めるべく隣に視線を向ければ空気の読めない修二でさえこの状況には眉をひそめていた。当然である。

「あ、もしかして大人数で帰るのが苦手なのかな?わかるよ、俺もあんまり人が多いのは好きじゃないんだ」

違う。大人数はいいとして問題は別のところにある。例えばその方々の気性とか。とは言えないが。

「じゃあ、君達、俺から離れてくれる?俺、弟と一緒に帰りたいんだ」

泉二の言葉に彼らは惜しみながらも挨拶をつけ泉二から離れていく。そのときに感じた彼らの恨みのこもった視線を光輝は忘れられないだろう。

「じゃ、じゃあ、帰りましょうか」

声をかける光輝に泉二は柔らかい笑みを浮かべる。

「やだな、光輝君、別に敬語じゃなくていいってば。俺達兄弟なんだからさ」

「そうですね…」

無理である。泉二にはなぜか敬語を使いたくなってしまうのだ。(というより使わなくてはならない気がする。)修二は何を思っているのかさっきから1言も喋らない。珍しくそれどころか難しい顔をしている。修二なりに気を使っているのか。

「光輝さーん!泉二兄ちゃーん!」

高めの声。これには聞き覚えがあった。

「勇海」

「はぁー、やっと追いついたよ。ね、一緒に帰ろう?お願い!」

デジャヴだ。

「もちろんいいけど」

「なんか、俺の時と差があるよね?」

泉二が笑顔のまま口を挟んでくる。だが、怖いのでとりあえず聞こえなかったふりだ。そして気になることがある。

「そのうしろの方々は?」

勇海に金魚のふんみたいについてきたのは中等部の制服を着た男の子達である。

「僕が男って信じてくれなくて…」

困ったように告げる勇海。

「あぁ、なるほど」

なるほどと手を打っている泉二に勇海をヘルプする気は微塵も感じられない。むしろ楽しんでいるようにさえ見える。昨日から感じていることなのだがもしかするとこの兄は性格が歪んでいる気がする。気のせいだと信じたい。

「えっと、勇海は男だよ?」

確認するように言う光輝に中等部の彼らは

「何言ってるんですか!騙されませんよ!」

などと聞く耳を持たなさそうだ。仕方ない。光輝は勇海の腕をつかむ。そしてダッシュした。逃げるが勝ちである。

「光輝くん、遅くない?追いつかれちゃうよ?」

あとから来た泉二が光輝に並ぶ。修二も追いついてきていた。このさい嫌味はスルーして走ることに熱中した。しばらくして中学生たちを撒けると立ち止まる。息が上がっているのは光輝だけだ。恥ずかしい。

「何、やってんの?」

怪訝そうに声をかけてくるのは先に帰ったはずの大翔だ。コンビニで買ったとおもわれる袋をぶらさげて立っていた。

「大翔、くん…」

息が上がっているため少し途切れつつ大翔の名前を呼ぶ。

「名前…勝手に呼ぶなよ」

やはりそっこうでこの言葉がかえってくる。

「大翔、これから公園?」

「泉二兄ちゃん達は?もう帰るの?」

泉二の問いかけには素直に応答しながら大翔はバツが悪そうに頭を掻いた。

「そうだよ、ほら、大翔も帰るよ。」

「は?」

「どうせ夜ご飯買ったなら部屋で食べればいいんじゃない?ほら、最近少し寒くなってきたし」

泉二は涼しい顔でそう告げる。少し迷ったあと大翔はしぶしぶといった感じで頷く。どうやら泉二相手には強気になれないらしい。家につくと3人はさっさと中に入っていく。光輝は家の前で修二に声をかけた。

「ごめんな、付きあわせて」

「いや、いいんだけどさ」

光輝の家の前が修二の家だ。修二は光輝に謝られると苦い顔をして首を横に振った。

「なんか考えてたのか?喋らなかったけど」

「ああ、うん。…なんか大変な兄弟ができたな、まぁ、その…頑張れよ」

ずっと考えていたのはそれだったのか。修二に言われ光輝も苦笑しながら頷いた。


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