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部屋にそれぞれ入っていき光輝は不機嫌な大翔と2人きりになる。大翔は無言で部屋に荷物を置くと部屋を出て行こうとした。

「おい、どこ行くんだよ?」

後ろ姿に声をかけると返事は帰って来なかったが動きを止めわずかに振り返った。冷ややかな視線に光輝はおもわず息を飲み込む。

「どこ行こうが俺の勝手だろ」

「これからご飯って言ってただろ?」

冷ややかな視線と同じくらいに冷めた声。勇海と言い合いしていたときなんて比じゃない。それでも負けじと言葉を投げかける光輝にかえってきたのは舌打ちだった。

「あの女の作った飯は食わねぇ」

「女って…お前の母さんだろ」

反抗期かと思ったが思い直す。なにか深い理由があるのだろう。母親は会社の社長だと言っていたから幼少期に寂しい思いをしたとか…だが光輝は父親がいなくて寂しい時期もあったが別に恨みも嫌いもしていない。だから大翔の気持ちはわからないが。

「変に誤解すんなよ、お前が思ってるようなことじゃねぇから。きもちわりぃ」

顔に出ていたようだ。大翔が顔をしかめる。

「どこに行くかだけ教えてくれよ」

「…コンビニ」

1言だけ言い残すと大翔は部屋から出て行ってしまった。1人取り残され光輝はため息をこぼしベッドに横たわる。本当にこれからが不安になる。家族になったからには仲良くしていきたいのにこの調子じゃ難しそうだ。

「光輝さん」

遠慮がちにかけられる声。顔をむけると部屋の前に勇海がたっていた。

「入っていいよ」

声をかけると勇海は嬉しそうに頷いて部屋に入ってきた。そしてちょこんと床に座る。

「大翔兄ちゃん、出て行っちゃったでしょ?」

「あぁ、コンビニ行くっていってたよ」

勇海が言葉を選ぶようにして言ったのに対してサラリと言葉を返す。そして少しの沈黙。

「前からなんだ。だから…気にしないでね?」

いい子だ。光輝は心の中で思う。

「光輝さん、大翔兄ちゃんのこと悪く思わないで。本当は悪い人じゃないから。…弟の僕がいうのも何だけど…」

続けられる言葉に性別が男であることがはっきりする。わかっていたこととはいえ淡い期待を抱いていただけに少しショックだ。

「わかってるよ。大丈夫」

優しく言ってやればまた嬉しそうな表情をする。優しくされるのに慣れていないのか照れた様子も伺えるのは気持ち的には複雑だ。

「僕ね、光輝さんみたいな兄ちゃんができて嬉しいんだ。優しそうだし、普通だし!」

普通という悪意のない(多分)コメントにはがくりと肩を落としてしまう。

「泉二さんだって優しいだろ?」

「んー」

光輝がいえば勇海は難しい顔で考える仕草のまま固まってしまう。

「泉二兄ちゃんは…優しいけどね、うん。まぁ、僕からはノーコメントで」

それが無難だと思ったのか勇海は答える。

「ひどいな、普通にやさしいって言えばいいのに。兄ちゃん傷ついちゃうだろ?」

どこから話を聞いていたのかいつのまにか部屋の外に泉二がいて許可とることなく部屋にはいってくる。

「泉二兄ちゃん!」

「大翔はコンビニ?相変わらずだなぁ、おもしろい。俺も行こうかなー」

「泉二さん!」

柔らかい笑顔での言葉に思わず光輝が静止の意味を込めて泉二の名前を強く呼んだ。

「冗談だよ、そんな睨まないで欲しいな。それより大翔ことなんだけど」

「なんですか?」

「大翔は自分の生活に踏み込まれるのが嫌いなんだ。そして踏み込もうとする奴もね」

相変わらずの笑顔だ。遠回しに大翔に干渉するなと光輝へ告げている。

「それから、勇海を変な目で見るやつも嫌いみたいだよ。ね、光輝くん」

クスクスと笑う。勇海がそうなの?という目で覗きこんで来るのはこの際スルーした。

「随分と楽しそうなんですね、泉二さん。」

「そりゃあね、楽しいよ。まさか君みたいな弟ができるなんて思わなかったもん」

そこまでいうと優しい笑顔をおしみなく光輝へとむけつつ部屋の外へと脚を運んだ。

「じゃあ、俺は部屋に戻るよ。勇海、大翔が戻ってくる前に部屋に戻ったほうがいいからね?光輝くん、勇海に変なことしないように。じゃ」

パタンと扉をしめる。扉の向こうで俺は変態じゃねえ!という光輝の心の底から叫びとそれをなだめる勇海のこえを背中に泉二は意地悪そうに笑う。

「君みたいな弟ができて本当に喜んでるんだよ。新しいオモチャが増えたんだからね」

泉二は軽やかな足取りで自分の部屋に戻っていった。

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