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Phase2: 災厄掠る

高校最後の学年初日の集合時間まであと十分。

次々と生徒が教室に飛び込み、束の間の休日を挟んだ再会を楽しんだり、

これから一年間同じ教室で時を過ごす喜びを分かち合ったり、はたまたクラス替えや

進級程度の些細な環境の変化には反応しない通常運行であったりと反応は様々だ。

かく言う私は登校時に合流した朝霧映子と身の無い会話をして時を過ごしている訳だが、

実の所二人共がこの会話に意味を持たしていない事は承知の上である。

時に雄弁は己の恐怖に対する対処療法であり、

正に今の我らの雄弁さはレーダに映らぬ不可視のガンダムデスサイズの攻撃を恐れる戦艦の乗組員が如しである。

雄弁さが益々以って勢いを増そうかという時、不意に廊下が騒がしくなる。


「ねぇ、りゅう君。何やら廊下が騒がしくなっている様に聞こえるのですが」


「……信じたくは無いが、徐々に徐々にその騒音の集合が接近している様に感じられる。

 天に召します我らが神よ。願わくば」


「神に祈りたくなるのも分かるけど、さっき『神は死んだ』って言ったばかりだし。結構不謹慎?」


「あくまでもさっきの発言は形而下での話であって、形而上学的には神は存在しない等とは言っていない。否、存在を確認出来ないという意味であるといった方がより正確を記しているかもしれず、神の教えがもたらせられる事と神の存在が分かる事とは一種の不確定性原理の構造を模しており」


「戻ってこーい!」


「……礼を言う」


「イエイエ」


つい半刻前にも繰り返された遣り取りを再び行わなければならない程、私の精神は切迫しているらしい。

まだ本体が到着していないのに、どうして余波だけで衰弱しなければならないのか。

溜息一つ吐いて、教室のドアを見遣れば、ちょっとした集団が教室に入ろうとしている。


「朝霧。私の目は節穴だろうか。ハーレムの住人の内、同学年であろう三人もこの教室に入り込もうとしているのだが」


「りゅう大佐、報告させて頂きます! どうやら我々が掴んだ情報に寄りますと、あの三人も

 私達のクラスの一員だと言う事です!」


「No kidding!」


「欧米か!」


考え得る限り最悪な事態に慌てふためく私達。

既にどちらがツッコミで、どちらがボケなのかすら分からないカオスな状況。

何処と無く、我らを見る周囲の目が好意的で同情の色を帯びているのは、

この緊急事態を三年生全員が把握しているからであろう。

そんな事を露とも知らないハーレム四人組が私達の前へとやってくる。

それに伴い、周囲の視線も同情、嫉妬、羨望とカオス染みて来る。


「おいっす、りゅう。朝から騒がしいな」


「……無知は劣悪にして幸いなる哉」


「なんだ? ま、いいや。一年間宜しくな」


「何時も何時も、クラスが違えど宜しくしていたと思うんだが」


「そうだけどさ。ここ何年か、クラス一緒になった事無かったじゃんか。

 俺としては久し振りで嬉しい訳さ。態々お前に頼みに他のクラスへ吶喊するって事もないし」


にぱっと笑顔で返す悟史。

恐らくはこういう態度が美少女を引き付けて止まないのだろう。

そんな奴の顔を見せられてまで反論する気も無く、そうだな、と同意の意を示し、序でとばかりに後に控えし美人トリオに挨拶しておく。

それぞれが各々の雰囲気にあった挨拶を返して、悟史と共に席へと移って行く。

ちなみに、始業式という事で、生徒は自由に席に座っており、私の周囲は既に埋まっていたのである。

もしも席が埋まっていなかったとしたら、至近距離であのイチャイチャ振りを披露されていただろう。自分の周囲の席が埋まっていて本当に助かった。現に、あのハーレム空間に魂を食い千切られた者がものの数分で発生している。怖ろしや、ハーレム空間(forbidden zone)。



異空間が拡大し、犠牲者が増えていくのを観察していると、己の携帯電話が振動している事に気付く。


「鳴ってるよ?」


「承知。……緊急の用事か?」


ディスプレイに表示されている名前はこの時間に掛かって来るには聊か珍しく、

緊急事態なのかと思っていたのだが、返って来た声色からはそのような緊迫感はまるで感じられず、

逆にその相手の言葉にこちらが驚かされる事になる。


「えーと、誰だったのかな?」


「兄貴。大した事無い話だったが」


「それにしては何だか吃驚した顔だったけど」


「教師が来たぞ。席に座れ」


「あー今誤魔化したでしょ! ってあれ、あの先生誰?」


この学校の教師としては、見慣れない男が入ってくる。

これは予感にしか過ぎないが、始業式開始までにこれだけ色々な事があると、

今年一年波乱万丈な生活が待っているのではないかと勘繰ってしまう。

私としては平穏な生活を望んでいるのだが。



「席に座れー。まず先生の自己紹介をしたい所だが、始業式が先だ。各自、体育館に行ってくれ。以上だ。早くしろよ」



可能ならば、感想下さい。

また、ハーレム住人のご希望があれば、もしかしたら希望に沿う住人が出てくるかもしれません。

感想共々宜しくお願い致します。ではでは

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