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Phase15: 災厄の逆襲? 前

特にこれといって変わり映えのしない日。

何の変哲も無い五月下旬の平日。

中間考査を終え、体育祭へと至る束の間の平穏。

私は珍しく、私的な用事で雑事から逃れる様に学校を後にした。




「あれ、師匠知らない?」


「さぁ? ボクも良く分からないんだけど。何だか用事があるとかで、SHR終わったら消えちゃったんだよ」


「そうか。折角、師匠にこの間の礼をしようと思ったんだがなぁ」


「この間って……ああ、アレね」


放課後の教室。

帰宅の用意をしている朝霧とりゅうの姿を探している後藤の何気ない会話。


「アレは結構というか、随分りゅう君に負担かけたよねぇ。駄目だよ、あんな風に自分の落ち度をりゅう君の力で何とかしてもらおうなんて」


「面目無いとは思ってる。でもよ、あん時は切羽詰っててさ。師匠に頼る他無かったんだ、なぁ?」


後藤が教室に残っている男連中に同意を求めると、全員が全員、首を縦に振り、同意の意を示した。それを見て呆れた様に、朝霧は溜息を吐いた。


「あのさぁ、ボクらもう高三なんだよ? 自分の勉強ぐらい自分で面倒見きれなくてどうすんのさ? 何時までも、今回みたいにりゅう君が助けてくれる訳じゃないんだよ?」


「……分かってる」


「分かってるならもう言わないよ」


話の中心にあるのは先日の中間考査前での出来事。

修学旅行から帰ってきた高三生を待っていたのは、範囲が絶望的に広い中間考査であった。元々、一学期の中間考査は範囲が狭いというのが通例であるが、高三の中間試験に限っては今迄の高校で修得した範囲全てという、一部の生徒を除き、拷問に近い試験であった。

一組の男連中も例外ではなく、どちらかと言うと拷問を最も過酷に感じる生徒達と言っても過言ではなかった。何せ、暇さえあれば、ハーレムに対する羨望とその中心人物に対する殺意を募らせ、殺人計画を練りに練り上げていたのだから。同時に、失敗には終わったが、修学旅行における作戦も練り上げていたのだから、勉強に充てる時間等存在しなかった、というのが彼らの弁である。

では、切羽詰った彼らが取った方法とは何であろうか。そこに、りゅうが絡んでくるのである。何故ならば、常に試験では学年で五本指に入るからだ。一組の男連中は恥も外聞も無く、一斉に彼に対して土下座をし、放課後に勉強を教えて貰うように頼み込んだ。当然の様に当初は拒否の姿勢を崩さなかったが、流石にそれだけの大人数が土下座をして頼み込んでいるのを無下には出来ず、渋々ながら了承した。

そこから一週間、中間考査が開始されるまで、放課後にはりゅうの授業が行われていた。特殊な教え方をしている訳ではなかったが、ポイントを押さえた教え方と生徒側の授業に対する態度の違いが項を奏したのであろう。授業内容はスムーズに彼らの頭の中へと注ぎ込まれていった。それに比例する様に、授業を聞きに来る生徒の数が多くなっていったのは驚きである。終いには、教師陣、更にはアフロな校長まで登場した時には、鉄面皮な教師役もしかめ面を隠さずにいられなかった。

結果として、一組の男連中は赤点を免れる所か、成績優秀者も登場する始末。一組の平均点が他の組と比較して断トツに高かったのには、教師一同目を丸くした。ところで教師役の当の本人は、学年順位五位といつも通りの好成績を取っていた。


「ところで、師匠の用事って何だろうな」


「うーん、気になるよねぇ」


「……今更だけど、後付けてみないか?」


「そんなのりゅう君に悪いよっ!」


「と言いつつ、慌てて荷物を積み込んでいるのは何故?」


「……あはは。じゃ、行こうかっ!」


「行く気満々じゃねぇか!」


こうして、二人はりゅうの後を追い駆ける事になる。





「……ひつじ発見」


「え、どこどこ? 執事さんどこ?」


「りゅうが何処に居るって?」


「りゅう先輩ですか?」


学園近くにある商店街。

偶々出張アイスクリーム屋の屋台を見つけ、アイスクリームを頬張っていたハーレム一向は公園のベンチに座っているりゅうの姿を見つける。ちなみに今日のハーレム人員は悟史、多村由宇、榊由紀、そして原杏子の四人である。他のハーレム住人は部活等で今日は参加していない。又、悟史のサッカー部も本日は休部である事も記しておく。


「ベンチで昼寝かぁ。良いご身分というかリストラされた不憫な身分みたいというか」


「でも、りゅう先輩って普段そんな事されます?」


「否、りゅうに限って、外で昼寝なんてしない筈だけど」


「多分、人待ってる」


「それあるねぇ。じゃあ執事さん、誰待ってるんだろ」


なるべくりゅうの位置から見られない位置に移動して、ベンチに座る彼を観察する。

すると、榊がりゅうに接近する人物を目敏めざとく発見した。


「……多分、あの人。美人」


「うひゃ、美人さん! 髪綺麗! 背高い!」


「凄いです! あれぞ大和撫子みたいで!」


「うーん、確かに。りゅうも何だかんだ言って隅に置けないじゃねぇか」


他三人が純粋に登場した人物の美貌に驚嘆している中、悟史だけは何処か憂いを帯びた表情をさせていた。他三人がこの顔を見ていなかったのは幸いか、それとも不運というべきか。

件の女性は彼らの予想通り、りゅうの待ち人であった様で、りゅうと二三言葉を交わした後、二人で駅方面へと歩いていった。


「どうする? 後付けてみようか?」


「どうしましょう? 私はちょっと興味あるんですけど」


「本当はこういう事はやりたくないんだけどなぁ。まぁ、何時も何時もからかわれているお返しという事でやってやりますか」


「よし! じゃ、れっつごー!」


「ちょっと待つ」


テンションが高くなっている多村に水を注す榊。

そのタイミングのさに眉をひそめつつ、どうしてと中断した理由を尋ねる。


「あの人、多分剣士。私と同じ雰囲気を纏ってる気がする」


「うーむ、確かにそんな気がしなくもないけど。で、それが?」


「なら、無闇に距離を詰めない方が良い。ある程度、距離を置かないと」


「そうだな。それにりゅうの奴も相当鋭いからなぁ。結構距離をあけないとな」


「それに……」


「それに?」


記憶を探る様に、米神に手を当てて思い出す仕草をする榊。


「私、あの人知っている気がする」


「えーっ?」


「よし、それじゃそれは追々思い出して欲しい。今はりゅう達を見失わない様に行こう」


「行きましょう!」


こうして、また異なる一団がりゅうを追跡する事になった。





中々時間が取れない今日この頃ですが、

時間の合間合間を使って書き上げましたPhase15。

原杏子って誰ですか?という質問はプロローグを見てからお願いします。

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