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 一学期の終業式。

 四人の勇者が、六人の魔族と仲良くはしゃぎながら、姿を現した。

「きみたち、仲直りしたの?」

「ああ、そうだよ」

 安部がいった。

 六人の魔族はかしこまっているようだった。魔宮が事情を話した。

「それがさ、魔王様を倒したこの四人は、力尽きた魔王様に対してこういったのさ」

 なんだろう。何をいったんだろう。

 安部は照れている。

「魔王、ぼくらと手を結べば、世界の半分をくれてやろう」

 おれは、きょとんとした。そんなことをいったんだ。それじゃあ、異世界の戦いは終わったのか。平和が戻ったんだ。人類と魔族が手を結ぶ結末がやってきたんだ。この世界と異世界の交流が始まり、四人の勇者は貿易を始めるんだ。四人の勇者は、副業で商人をやるんだ。

 よかった。本当によかった。

 おれたちは仲間だ。同じ学級の仲間じゃないか。


 シュヤクナンジャイが五人の宇宙人と一緒に学校にやってきた。

 いちろうがいった。

「地球侵略の総司令官シンリャクザーを倒してきたよ」

 おれはどっと安心した。宇宙戦争も幕を閉じたらしい。

「シンリャクザーは、地球と宇宙が交流する未来を約束した。地球の自立を守りながら、保護貿易をする条約を締結してきた。これで、地球の文明はぐんぐん成長するだろう」

 おれはいちろうと握手した。

「脇田、きみのことばがなければ、こんな平和的解決はありえなかった。ありがとう」

 五人の地球人と五人の宇宙人が順番におれと握手をしていった。

 平和が訪れた。

 おれは脇役ながらも、微力ながら、世界の平和に貢献することができたのだ。

 よかった。本当に良かった。


 五人の魔女っ娘と、五人の天才科学者が、仲良く腕を組みながら登校してきた。

 いちゃいちゃしている。

「どうしちゃったの、きみたち?」

 おれが聞くと、リリナが答えた。

「わたしたちと付き合うのにふさわしい相手といったら、この五人しかいないじゃないの」

 リリナが少し照れている。

「わはははははっ、科学に魂を売った我々も、少女の純真な心に負けたのじゃ」

 湯川がいった。

 五人の魔女っ娘と、五人の天才科学者はそれぞれ正式に交際することにしたらしい。

 いきなり、五組のカップルの誕生である。これはめでたい。

「ははははっ、ははははっ」

 おれも笑った。思わず笑みがもれた。


 こうして、おれたち三十一人の高校生は、みんな無事に一学期の終業式を迎えたのである。

 もうすぐ、楽しい夏休みが始まる。

 脇役はそっとクラスの隅で、一人ぼっちの夏休みが始まるのを待った。

 これでいいのだ。こんなに嬉しいことはない。

 夏の教室にさわやかな風が吹いた。


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