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 おれは同級生の活動の全体的な構想を書き込むノートを一冊用意した。

「異世界の人たちの人口って、何人くらいなの?」

「そうだなあ。考えたこともなかったけど、数百万人だろうなあ」

「魔族は何人くらい?」

「数千人じゃないかな」

 ふうん、おれはノートに数を書きこみ、考えこむ。

「きみたち、四人の勇者が魔族にとどめをささなかった場合、魔族は、この世界と異世界を行き来しつづけることになる。つまり、この世界は、異世界と交流するようになる必要がある。その時、どうなるかを予測してみたが……」

 四人の勇者はいった。

「勘弁してくれ。ただ戦うだけでも精いっぱいなんだ。魔族を助ける余裕はないよ」

 おれは要求を押し付けるように話しつづける。

「異世界とこの世界が交流した時、経済的には、こちらの世界のが規模が千倍は大きいことになる。どうやら、あちらの世界の文明水準は中世のようだし、貿易をした場合、こちらの世界が一方的に経済的に優位に立つと思う。もし、こちらの世界とあちらの世界を結ぶ出入口ができた場合、こちらの世界の住人があちらの世界を植民地にしてしまうだろう。つまり、魔族を滅ぼさずに生かしつづけた場合、こちらの世界の人類が、異世界にとって新たな脅威となる」

 おれの計算を聞いて、安部は、

「うへえ」

 とうなった。

「こちらの世界とあちらの世界を行き来することは、きみたち四人の勇者と魔族にしかできないのだから、きみたちは、異世界との貿易の仲介業を始めれば、莫大な利益をあげることが予想できる。おそらく、卒業後の収入には困らないくらいだ。そして、これは異世界を近代化する手助けにもなる」

「それは面白いけど」

 安部は苦渋の表情でうなずいた。

「ただし、それを見れば、魔族もこの世界と異世界の貿易を始めるだろう。魔族の背徳的な交渉で貿易をさせるわけにはいかない。だから、魔族を生かして異世界と交流する場合、きみたち四人の勇者が、魔族による異世界との貿易を取り締まる必要がある」

「面倒くさそう」

 安部は、顔をそむけた。

「異世界の魔術的道具は、この世界でも貴重な存在だろう。魔術的道具を商品とすれば、異世界がこの世界と対等に貿易することは可能だと思う」

「ふーん」

「なんとか、この計画で、異世界と魔族とこの世界との交流を進めることはできないだろうか」

 四人の勇者はああだ、こうだとそうだんしていたが、結論はすぐ出た。

「ぼくたちが、異世界とこの世界の貿易の仲介業を全部引き受けるということで、問題はないよ。ぼくらは高校を卒業したら、就職したり進学したりするけど、副業で、異世界との交易を引き受けてもいい」

 とのことだった。

 おれはひとまず、肩の荷がおりた。四人の勇者が戦いに勝ちつづければ、いずれ、そうなる時が来るだろう。


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