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猫田蘭さんの「脇役の分際」を高校生編まで読んで、インスパイアされた作品です。

 なんで、一人だけ。

 おれは高校三年生の登校日初日に思った。

 なんで、こんなクラス分けにしたんだよ。絶対に恨んでやるぞ、教師のやつら。

 ああ、どんよりする。これは何だ。誰の謀略だ。校長の罠か、担任の教育方針か? おれは三年生の新しい学級で一人浮いていた。

 三十一人の学級。男十六人、女十五人。どうしても、席を並べると、男が一人だけ余るのである。

 おれの名前は、脇田進。名簿順が「わ」であるから、学級で一番最後の席に座っている。おれ以外の三十人は、男女で隣り合わせになっているのに、おれ一人が隣に誰もいない。

 教師の罠だ。

 おれだけ仲間外れにして、いじめようっていうんだ。そうに決まっている。そうにちがいない。

 クラスで二人組をつくれ、といわれて、初日に、おれ一人だけが余った。他の奴らはみんな男女のペアだ。

 ひどい。差別だ。なんちゅう、運の悪さだ。

 世の中には、主役と脇役がいるものだが、おれはまちがいなく、脇役。クラスのおれ以外のやつらはみんな輝いている。休み時間も、みんな、楽しそうにがやがややっている。そんな中で、おれ一人がとり残されてしまった。いわゆる、ぼっちというやつだ。学級でおれ一人だけが友だちがいない。

 この恨み、晴らさずに置くべきか。クラスのやつらに復讐してくれる。おれをクラスで一人だけのけ者にした恨みを思い知らせてやる。

 高校三年生の一学期の登校初日、担任の先生がいった。

「いいか、よく聞け。世の中には身分相応ということばがある。自分の身の程を知らず、高望みをした者は必ず罰を受ける。おまえらはゴミ虫だ。これから一年でおれ様が腐った根性を叩きなおしてやるから気を引き締めておけ。奴隷として生きるコツを学べ」

 教室がざわめいた。この教師、正気じゃない!

 でも、脇役のおれはじっと黙っていた。

 勇敢で行動力のある熱い男子の一人が立ち上がった。

「先生、何をいっているんですか。ぼくたちは、奴隷なんかじゃありません。平等な人類です」

 元気な女子が加勢した。

「そうです。わたしたちにも基本的人権があります」

 担任はいった。

「くくくくっ。おまえらが平等だというのか。本当に心の底からそういえるのか。安部! おまえは自分と脇田が平等だとでも思っているのか」

 おい! 先生、おかしいだろ。なんで、おれが出てくるんだよ。しかも、安部くん、そこでいいとどまらないでよ。おれと安部くんは平等だっていってよ。

「先生、脇田くんは立派な雑草だと思います」

 安部くん、その言い方はトゲがあるなあ。

 先生はさらに怒声をあげた。

「この中に自分が脇田と平等だと思っているものはいるか!」

 なんだ、その質問は。

 みんな、黙った。

 おーい、みんな。寂しいことは考えないでおくれよ。

「そうだ。脇田はおまえらとはちがう。脇役なんだ。ここにいなくてもいいんだよ!」

 先生が怒鳴る。

 みんな、おれの方に顔を向けようとしない。ちょっと、ひどいじゃない?

「先生、おれは世界が幸せになるんなら、恋人もお金も栄光もいらないよ。醜い脇役でいいよ」

 おれがいった。

「先生、おれ、ちょっと用事があるんで早退します」

 安部くんがそういって教室を出て行った。

「おれも」

「わたしも」

 おれ以外の全員が教室を出て行った。

 教室に、おれと先生だけが残った。

 静かになった。

 先生が語る。

「いいか、物語の最初に死ぬ脇役、それがおまえだ、脇田」

 先生はナイフをとり出して襲ってきた。

 だが、おれは子供の頃から身に着けていた対術で、先生の腕をとり、ナイフを先生の体に刺さるように仕向けた。

「ぎゃあおお」

 先生はただの人間ではなかった。怪物だった。正体を現した怪物をおれは奪ったナイフで刺し殺した。

 脇役に簡単に殺される。

 それがうちの担任だ。

 高校三年生が始まる。

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