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異世界物理  作者: 南蛇井


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既得権益の反応 ― 戦争の火種

同盟が公表された翌朝、世界は静寂など一瞬たりとも許さなかった。

理解を掲げた協力体制は、既得権益の領域にとって、むしろ鮮烈な“宣戦布告”として響いた。


まず動いたのは、司祭団の残党である。

大陸南部の聖堂群に、緊迫した鐘が立て続けに鳴り響いた。


「魂を奪う学術である」

「砂漠領は異端の街となった」


彼らは、UAPをすべて“魂の位階を侵犯する禁術”と定義し直し、砂漠領への巡礼路を封鎖した。

教義を更新するよりも、敵を定義する方が容易いことを、誰もが知っていた。

聖堂の壁面に貼られた布告には、砂漠領の象徴である青の印が、墨で荒々しく塗りつぶされている。


次に動いたのは、軍産複合体だった。

魔素供給市場の半分を握る巨大企業群は、緊急連絡網を起動し、学院へのすべての投資契約を凍結した。


「技術共有は市場破壊だ」

「自律魔術の普及は、我々の兵装体系を根本から崩す」


決議はわずか三十分で通過した。

同時に、学院への情報流通が完全に遮断され、研究ログさえ外部に出せなくなる。

経済は沈黙で戦争を始める。

その常識を、研究者たちは初めて実感した。


そして最後に、最も速く、最も露骨に反応したのが魔術家門である。

血脈魔術を代々継承する家門たちは、同盟文書を読むまでもなく悟った。


――自分たちの存在理由が崩れる。


「血統こそ文明の礎である」

「術が共有される世界は、我ら一族の終焉だ」


各地の家門は、隠されていた兵装術式を続々と開帳し、

周辺領地に徴発命令を出し始めた。

長く封印されていた家門同盟の軍旗が、数百年ぶりに掲げられる。


こうして三方向からの反応が、同時に、ほぼ同じ速度で世界に波紋した。


司祭団は“魂”を理由に。

軍産複合体は“市場”を理由に。

魔術家門は“血脈”を理由に。


しかし、その根底にあるのはただひとつ。

変革を拒む力が、変革の象徴を攻撃するという単純な論理だった。


新しい同盟は、平和のために結ばれたにすぎない。

だがその翌日には、すでに戦争の火種が、乾いた世界のあらゆる隙間に落ちていた。

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