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異世界物理  作者: 南蛇井


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同盟成立 ― 感情ではなく理論で結ばれる

砂漠の夜風は、かすかに鉄の匂いを含んでいた。

乾いた大地の上、円卓の中心で浮遊する魔術灯が、互いの顔を淡く照らしている。


静寂を破ったのは、砂漠領の代表――蒼布をまとった賢者であった。

彼は杖を立て、動じぬ声音で宣言した。


「魔術を共有する者は、誰であれ我らの同胞だ」


その言葉は誇張も情念も帯びず、ただ原理として語られた。

その場にいた者は皆、その厳密さに息を呑んだ。

砂漠領が血筋の魔術国家であることを知る者ほど、重みを理解した。


対する学院代表――ラクシア教授は、しばらく沈黙したのち、眼鏡の縁を押し上げて応じた。


「理解できる魔術こそ教育の対象だ。

 その原則が揺るがぬ限り、我らは協力を惜しまない」


どちらの言葉にも、情熱の温度はほとんど宿っていなかった。

しかし、互いの理論体系が、ここで初めて同じ地平に立った。

血統でも信仰でも国家でもない。

ただ『魔術という知』を媒介に、人々は手を結んだ。


青い砂夜がゆっくりと広がる。

協定書への署名が終わり、静かに一同が立ち上がったとき――

砂漠領の中心にそびえる噴水が、突然、青白い光を放った。


水は砂に吸われかけながらも、魔力によって宙に留まり、淡く震えている。

祝祭のための灯ではない。

歓楽のための色彩でもない。


それはまるで、文明そのものがひとつの点を結び、

初めて正しく光を発したような、そんな厳粛な輝きだった。


誰も声を上げなかった。

光はただ、次の時代を告げる設計図のように、

真夜中の広場を照らし続けていた。

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