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Chained 〜刻鎖の英雄譚~  作者: qwert9thy
第一章 始まり、そして審判
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第3話 契約

「決闘…ですか。」


「そうよ、私と契約したいならね。」


「負けたら俺はどうなるんですか?」

自分の事を悪魔みたいな存在と言うからには、やはり命でも奪われるのだろうか?


「貴方が負けても契約してあげる。ただ、絶対に手を抜かない事。本気でやらないと面白みに欠けるわ。」

思ったよりも良心的だな。何か裏でもあるのか?


「分かりました。始めましょう。」


 剣を構えようとしたその瞬間。凄まじい違和感に襲われた。

体が全くと言っていい程に動かない。このシビルが操る能力なのか?


「先手必勝よ!」

体の自由が戻ったと思った次の瞬間、目の前に灰色の鎖が飛んで来た。


「クソッ!」成す術無く、相手の一撃を喰らって吹き飛ばされてしまった。


「決闘らしく正々堂々と戦ったらどうだ?」


「本気と本気の衝突なら何だっていいのよ。貴方も闇討ちの一つや二つやってみたら?」


「お言葉に甘えさせてもらうぞ。」部屋の中を駆け回り、相手が俺を見失う瞬間を虎視眈々と狙う事にした。だがコイツ、ただ一点を見つめて深呼吸している。


「そこだ!」俺は剣で斬撃するフリをした。あくまで「フリ」だ。

本当の狙いはもう片方の手に隠し持ったダガー。奴が斬撃に注意を逸らされている間に、心臓目掛けて思い切り投げる。


「まずは相手の力を見極める事ね。」しまった!体がまた動かない。


「グハッ!」あの鎖に、またしても一泡吹かされてしまった。

仕方無い、まずはコイツが使う異能のカラクリを暴くとしよう。


「まだやれる、かかって来い!」


「避け切れる?」

集中しろ、動きを良く見るんだ…

なるほど、鎖は両手から出してるのか。加えてかなりのスピードだ。

そして恐らく、この鎖に当たると数秒の間動けなくなる。と言う事は、相討ち覚悟で斬りかかるのは無謀だな。


「逃げてばかりじゃ何も変わらないわよ?」


「次逃げるのはお前の方だ、今に見てろよ鎖野郎!」

コイツが出せる鎖は二本だけ、つまりそいつらを受け流せば、ただの置き物に成り下がるって訳だ。幸いな事に、俺はダガーを二つ持ってる。

後は覚悟を決めるだけだ。


「さあ、喰らいなさい!」

今までのコイツの動きを思い出すんだ…よし、呼吸を整えて… キィィィィン!


「なっ!?」

「逃げる隙すら無かったな、これで終わりだ」


「グアッッッッッッッ!」金切り声をあげて、奴が地面に倒れ込んだ。遂に終わった…


 「どうだ、これで満足か?」


「フフフ…貴方、面白いわね!お望み通り、喜んで契約するわ!」


「さっきあれだけ大きな断末魔を上げてた癖に、随分と元気だな。」


「あれはただの演技よ!シビルなんだから刃物が一、二本刺さった位、どうって事ないわ。」


「はぁ…喜んで損したよ。」


「とりあえず、さっさと契約するわよ。」


「契約ってのはどうやるんだ?」

血の押印でもするんだろうか。それとも寿命を捧げるとかか?


「私の手に触って。」


「これでいいか?」


「よし、終わったわ。」


「もう出来たのか?」

もう少し大袈裟な儀式でもするのかと思っていたが、たったのこれだけとはな。


「そうよ。これで貴方は契約者(リンカー)になった。」


「契約に代償とかは無いのか?」

どうせ寿命が半分くらい無くなるんだろう。それか死んだら魂を貰うとか、そういった類いだろうな。


「特に無いわ。強いて言えば、私との契約を続けたままだと、他のシビルとは契約出来なくなる。」


「寿命が縮んだりは?」


「しないわよ。」

なんだ、ただの杞憂だったか…


「そうか…ところでお前の名前は?」


刻縛の鎖(クロック•ドミネータ)よ。まあ、サラナって呼んでくれたらいいわ。」


「サラナ?その名前、何処から出て来たんだ?」


「自分で付けたのよ。こっちの方が可愛いでしょ?」


「そうかもな…」

コイツ、結構変わった奴だな。


「他に聞きたい事は?」


「そうだな…契約をすると具体的に、何が出来る様になるんだ?」


「貴方も私の能力を使える様になるわ。」


「俺も鎖を出せるって訳か?」


「そうよ。折角だし、今やってみたらどう?」


手に力を入れ、鎖が出てくる様に強く念じた。すると、

「おお、本当に出たぞ!」


「良いわね。ちゃんと力を制御出来ているわ。ああ、そういえば言ってなかったけど、私にはまだ力があるわ。」


「鎖以外にか?」


「ええ。時間が止まる様に念じながら、息を止めてみて。」


世界の時間が…止まっている。


「どう?凄いでしょ?私と貴方しか動けなくなってるわ。ほら、テーブルを持ち上げても、落ちて来ないわ。」


うっ!何だか息が苦しくなってきた。まだ10秒も経っていない筈なんだが。これ以上は危険だ、能力を解除しよう。「ハァ…ハァ…確かに凄い能力だな。ただ…」


「分かってるわ。世界の時間を止めている間、物凄いスピードで酸素を使う。強い力にはそれ相応の対価を要するんだから、仕方の無い事よ。」


「なるほどな。ところで、お前が封印されてた小さい彫刻みたいなのは何なんだ?」


「ピューパの事?シビルは役目が無くて休息する時、あの姿になるのよ。エネルギーの消費を最小限に抑えられるから。」


「シビルってのは随分と不思議な存在だな。」


「確かにそうね。そういえば貴方、これからどうするつもり?」


「そうだな、とりあえず外に出るとしようか。」


「分かったわ。それじゃあ、私は一旦ピューパになって休むとするわ。でも、貴方と脳内で会話は出来るから安心して。助けを求めてくれたら、すぐに人型に戻るわ。」

サラナの体が真白く発光し、ピューパの状態に変化した。


『聞こえる?』

俺の脳内に、サラナの声が響く。


『ああ。』

心の中で返事を返した。


『良かった、成功ね。今、貴方は私と視覚や聴覚を共有しているわ。もしかしたら、何かの役に立てるかもね。』


『そいつは良いな。よろしく頼むよ。』


 さてと、早いところこの穴から抜け出さないとな。早速能力の出番か。

意識を集中させて…よし、一番上まで届いた。まあ、鎖を出せば朝飯前だな。


 久し振りの地上の光を浴びて、澄んだ空気を吸っている最中、「やあ、ラジアス!一段落したみたいだね!」二度と聞きたく無かった声が水を差してきた。


「またお前か…」


「まだ怒ってるのかい?」


「当たり前だろ…」

散々俺に迷惑を掛けた癖に、何を言ってるんだコイツは。


「そうか、じゃあ償いとして君の言う事を聞くよ。」


「本当か?なら今すぐ俺の目の前に…」


「そんなに俺を殴りたいのかい?でもごめんね、それは出来ないよ!俺は今、君からとても離れた場所にいるからね。」


「クソ…それなら、俺の質問に答えてくれ。」


「勿論いいよ!」


「じゃあ、お前は一体何者なんだ?」


「うーん…まあ、天才科学者ってところかな?」


「科学者の割に随分と強いんだな。」


「あれぐらいは出来て当然だよ。」

遠回しに俺の事を侮辱している様にしか聞こえない。それかコイツが人の顰蹙を買う天才なだけか。


「そもそも何で俺の事を知っているんだ?」


「強いて言うなら…君の知り合いの知り合いだから、かな?」


「その知り合いってのは誰だ?」

村を出て行った友人とかだろうか?それとも大人か?


「今は言えないよ。どうせいつかわかると思うけどね。」

今はってのはどういう意味だ?まさかコイツとまた話す羽目になるのか?


「謎の多い奴だ。それじゃあ、お前の名前は?」


「名前かぁ…そうだなぁ…『イマジンド』だよ!」


「取って付けた様な間だな。」


「そんなことないよ!本当にこの名前だよ!」


「ああそうか、じゃあ次の質問だ。お前はどうやって俺に話しかけてるんだ?」


「良い質問だね!それはね、君の体に特殊な機械を埋め込んだからだよ!ついでに君の位置を把握する機能も付いてる。」


「ふざけてるのか!?」


「逆に聞くけど、他に方法なんて無いだろ?」

コイツはどれだけ俺に迷惑を掛けるつもりなんだ?


「クソ、分かったよ。じゃあこれで最後の質問だ。何で俺と戦ったんだ?シビルを渡したかったなら、あの時直接渡せば良かっただろ?」


「君の力を知りたかったんだよ!どうしてもね。」


「その理由は?」


「さあ?何となくかな?」

コイツ、さっきから何を隠してる?

核心を突く質問は全部、のらりくらりと躱している気がする。


「他に質問はあるかい?」


「いや、もういい。じゃあな。」

まあ、こんな奴の正体をこれ以上詮索した所で、何の得にもならない。

早いとこギルドに向かうか。

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