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Chained 〜刻鎖の英雄譚~  作者: qwert9thy
第一章 始まり、そして審判
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第2話 シビル現る

 突然、草のざわめく音がした。

音の方向へ目を向けると、傷にまみれた焦茶色のローブを身に纏った人間が、俺の元に走って来た。

「お前は一体何なんだ!?」

俺の問い掛けには一切聞く耳を持たず、ただひたすらに迫って来る。

 

 仕方無く剣を抜いて構えたが、それにすら臆さず、素手で俺に襲いかってきた。


「急に襲ってきたアンタの自業自得だからな!悪く思うなよ!」

両手で握りしめた剣を振るったが、目の前から謎の人物は消えていた。

焦って辺りを見渡したが、何処にもいない。

警戒をさらに強めた次の瞬間、足に何かが触れた感覚がした。

まさかと思って足元を見ると、大穴から茶色の袖をした手が伸びていた。


 「お前バケモノか!?」

奴は俺が瞬きした刹那の瞬間に俺の背後へ移動し、大穴にしがみついていた。

そして、たった一本の細い腕で、俺を奈落に引きずり込む気だ。

こんな所でくたばって堪るかと必死に抵抗したが、コイツ、信じられない位に力が強い。

両手を使えば俺の骨をへし折れるんじゃないのか?

剣でコイツの腕を切ろうとしたが、無駄な足掻きだった。奴は足を器用に使って、斬撃を余す事なく受け止めてしまった。

 

 だが俺も負けちゃいない。地面を踏み締め、少しずつ前進していた。

格闘すること数十秒。遂に振り解けると安堵した次の瞬間、俺は絶望する羽目になった。奴はまだ本気を出していなかった。

足を掴むのを辞めたと思った矢先、大穴から跳び上がり、俺の目の前に接近してきた。

そして俺の腹を目掛けて、回し蹴りを繰り出した。

「ぐはっ!」

成す術なく、ただ俺は大穴へと落ちていった。


「こ…こは…」朦朧とする意識の中、ゆっくりと目を開く。

かなりの深さまで落ちたにも関わらず、不思議な事に怪我をしておらず、痛みも全く感じなかった。

視界に映るのは、妙に清潔な部屋の一室だった。

壁やテーブルなど様々な物が白を基調としており、意匠として青と金色の紋様が刻まれている。

使い方は分からないが、様々な機械が並んでいた。どれもこれも見た事のない物ばかりだ。

 部屋を調査しようと試みたその時、

「起きたみたいだね!」突然何処からか声がした。


「誰だ?」


「もう忘れのかい?さっき会っただろ?」


「お前か!こんな真似してタダで済むと…」


遮る様に奴が話す。「分かってる分かってる。タダで終わらせる訳ないよ」


「好きなだけ殴って良いって意味だよな?それはどうも」


「やっぱり皮肉が上手だね!流石だよ」


「早く要件を言えよ!」心底イライラしてきた。

さっさとコイツみたいな人間とおさらばして、冒険者ギルドに行かせてくれ。


「その部屋には小さな箱があるはずだよ。」


「これか?」手の平よりも少し小さい位の、白い箱を指差した。


「合ってるよ!」


「コイツを開ければいいのか?」


「その通り!今から開ける為のパスワードを教えるね!8467だよ」


「いや待てよ…お前俺を嵌める気だろ?」

冷静に考えて、赤の他人を突き落とすような人間を信じて良い訳がない。


「違うよ!俺はキミの味方だよ!信じてくれ」


「味方を蹴り飛ばすなんて随分と優しいヤツだな。尊敬するよ」


「褒めてくれてありがとう!そんな優しい俺のお願いを聞いてくれるかい?」


「聞く訳ないだろ!いい加減にしてくれ!」


「箱を開けなくてもいいけど、どうやってその穴から這い上がるつもりだい?気合い?それとも…シビルかな?」


「シビルとは契約していない。」ローシェ村は平和な場所だったから、シビルと無縁の生活を送っていた。

一部の戦いを職にしていた大人は契約していたが、大半はしていなかった。当時子供だった俺は尚更だ。


「じゃあ今が絶好のチャンスだよ!さあ開けて!」


「シビルが、この中にいるのか?」


「いるよ!きっと君の冒険を助けてくれる筈だよ!」


「分かった、アンタの指示に従うよ」用心深く、少しずつ箱を開ける。

すると、中から彫刻の様な物が出て来た。これもまた青と金の紋様が刻まれている。

暫く見つめていると、突如それが光り始めた。

慌てて机に置こうとしたら、「大丈夫だよ!宙に向かってそれを投げてみて!」と言うので試しに投げると、彫刻の周りに輝く線が現れた。

それらは人の形を形成し、より一層強く輝き始めた。

そして遂に、線の集まりが実体となった。

見た目は白い髪に青色の瞳をした、顔立ちの整った女性といったところだ。

「成功したね!少しの間俺は黙っておくから、シビルとお話ししてね!」


「あなた誰?」怪訝そうな目つきで問いかけてきた。


「ラジアス•ブルーノです。貴女と契約がしたいんです。」


「そういう事ね。全然構わないわよ。ただ…条件があるわ。」


「条件というのは?」


「私はシビル、要するに悪魔みたいなものよ。つまり私は人間と戯れるのが大好き。だから貴方には…私と決闘してもらう」




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