8話「王子の呪い」
「お初にお目にかかります王子。本日は貴重な時間を割いていただきありがとうございます」
今私はスピリアと一緒に王子の療養室にいる。王子の病を治すためだ。
「こほっ、こほっ、すまない。君はエリセツアさんだろ?母上から話は聞いている。それにヴァリエ、久しぶりだな。元気にしていたか?」
「はい、私はこの通り元気です。それに比べて兄上はずいぶんと痩せ細っていますね。しっかりご飯は食べているのですか?」
「食事が口に入らないんだ。そのくらい重症なんだよ」
スピリアはなかなか直球だな、数年ぶりに会ったのにその態度とは、距離の近い相手には尖った性格になることを改めて思い知らされる。
それよりこれは間違いなく呪いだ。しかも相当な呪法師がやったものだ。呪いの効果が三つもある。
一つ目は食欲を無くす効果だ。そのせいで飯が口に入らないのだろう、そして二つ目は衰弱効果だ。多分王子は話すのもしんどいくらい体が気怠いだろう、最後は一番凶悪だ。それは三ヶ月後に死ぬ効果である。一刻も早く犯人を見つけ出さねば。
「それで早速だがエリセツアさん、僕を見た感じどうすれば良くなるか分かるかい?正直話し相手になってくれるだけで暇を持て余している僕には充分だが」
私にプレッシャーがかからないように気を使ってくれている。余命三ヶ月の命になっていることを知らずに呑気だ。
「はい。これは呪いと言ってルーナ魔聖呪国に存在している病のようなものです。今、王子には食欲をなくす呪いと衰弱の呪いという複数の複雑な呪いがかかっています。呪いを完全に祓うにはルーナから優秀な呪法師を呼ぶか、王子に呪いをかけた者を殺すしかありません」
スピリアやまだまだ若い王子に余命三ヶ月のことを伝えるのはあまりにも酷だろうから伝えなかった。もちろん後で王妃には伝える予定だ。
「何だって!?こほっ、こほっ、僕に呪いをかけたやつがいただと!?それでは君は僕の呪いをどうすることも出来ないのか?」
「いいえ、ある程度の呪いの効果を軽減することは可能ですが、根本的には治せません」
一刻も早く犯人を殺さなければならない。なぜならルーナは鎖国中だからそもそも呪法師を呼べないのだ。それに呪いをかけた者が首都を出てしまえば見つかる確率は大いに下がってしまうだろう。それは王子にも分かってるはずだ。
「それじゃあ治療をお願いするよ。こほっ、こほっ、それにしても僕にいつ誰が呪いをかけたんだ?そんな僕は油断していたのか、これからはもっと周りに気をつけなければ」
「王子、今回の犯人は大体の見当がついています。何故なら王子に呪いをかけられる人間はそう多くありません。それに昨晩のパーティで呪いを使える人間がいました。そいつに会ってみたいと思います」
「なるほど、では犯人への対処は君に任せるとするよ。あと犯人が誰なのかは君の信頼出来る人間には報告しておいてくれよ」
やはり王子はとても頭が回るようだ。私があえて犯人が誰なのか言わなかったのに聞かないでくれた。
ちなみに理由は相手が呪法師だからなのだ。