6話「王妃の想い」
そこは王城。怪しげな会議が開かれていた。そこには王妃やドーウェンの騎士団長、副ギルド長などのモナレン王国の重要な人間が集まっていた。
「ヴァリエをどうやって自分の意思で戻って来させるべきか、魔法団長、あなたはあの子の側に一番長くいたはずよ。あなたの意見を聞きたいわ」
王妃がそう言うと魔法団長は困った顔をして
「そんなこと言われましても私もどうすればいいかなんて分からないですよ。どんな子どもも一度は反抗期が来ます。ヴァリエ様が大人になるのを待つのはいかがでしょうか?」
すると王妃はため息をついた。
「魔法団長はこの会議の意味を全く理解していないでしょう。私はヴァリエに危険が迫るのが怖くて仕方がないの。それにあの件もあるからできるだけ早く帰ってきてもらわないと困るの。だからと言って束縛するのは良くないと思ったからギルドの監視の元、今は自由にさせているの。そうでしょう?副ギルド長」
「はい。現在ヴァリエ様はエリセツアというヴァリエ様と同い年の三級冒険者と共に行動しています」
王妃はそう聞いた瞬間、表情が明るくなった。
「あの子にも友だちが出来たのね。小さい頃は周りの人たちとは身分の違いから馴染めなかったのに、こんなにも成長するなんて、冒険者は間違いじゃなかったのかしら?」
「しかし、そのエリセツアという冒険者は出生があまり良く分かっていません。今のところ、私が見た限りでは危険性を感じませんでしたが万が一ということもあるかもしれません。しっかり検討なさってください」
それからしばらく沈黙が続いた後、近衛騎士団長が口を開いた。
「ではこうしてはいかがでしょう?今日は国王様の誕生パーティがあります。そこでヴァリエ様とエリセツアという冒険者を招待して、私と魔法団長が実力と危険性について見極めます」
その後もいくつか案が出たが近衛騎士団長の案が採用された。しかし、その会議に黒い影が潜んでいたことには誰も気づかなった。
そして、夜になり、エリセツアたちは国王の誕生パーティに来ていた。
「いやぁ、余りにも急展開すぎないか?スピリアの正体がヴァリエだと知ってからあまり時間も経っていないのにこうして私は国王の誕生パーティに招待いるんだぞ」
「そうですね、私も予想していませんでした。家出してからというもの、父上や母上から連絡が来ることは一度もありませんでしたので。それからエリセツア、今から私たちはタメ口禁止ですよ」
「分かっていますともお姫様」
私はニヤけながらそう言ってしばらくスピリアと別れた。
「ふむ、監視されているな、人数は六人か。流石に王女と仲良くしていると怪しまれるよな」
私は辺りを見渡すと、とても驚いた。
「まさか、私を監視しているのはスピリアが言っていた近衛騎士団長と魔法団長!?それからあれは副ギルド長のロジじゃないか、他の人は分からないがおそらく強い人たちだろう」
周りのことを気にしていると、国王が拡声魔法で会場に声を響かせた。
「本日は、我、国王スピンドル・モナレンの誕生パーティに集まってくれたこと、誠に感謝する。それから今日は長い間、顔を出さなかった私の娘のヴァリエも出席にしている」
視線はスピリアに集中した。
「皆さまごきげんよう。モナレン王国王女のヴァリエです。本日は父の誕生パーティに参加なさってくださり誠に嬉しく思います」
私にとって王女としての姿を見るのは初めてだっからなかなか新鮮なものだった。だが、長い間王族としての振る舞いをしていなかったせいか、少しぎこちなかった。
「あなたがエリセツアさんね。娘と仲良くしてくださってありがとう。私はヴァリエの母のヴァーラよ」
やっぱり来たか、私を招待したのは探りを入れるためだったんだな。気を緩めないようにしないとな。何故なら私にはこの世界の誰にも言えない秘密があるのだから。
「本日はご招待いただき誠に感謝します、王妃様。私は冒険者のエリセツアと申します」