5話「スピリアについて」
夜はまだ開けていない。そろそろ太陽が見えてきそうなこの時間に私はドーウェンで一番大きい噴水広場にきていた。
「ふぁ〜、こんな朝早くから集合か。というかなんでこんなに早いんだ?」
「それは少しでも早くあなたの魔法を多く学びたいからです。おはようございますエリセツア」
私はなんやかんやあって、スピリアと仲良くなった。お互いの今までの人生について語り合って、呼び捨てで呼び合う仲になった。
「おはようスピリア。朝だから何もやる気が出ないけどまず何をするんだ?」
「まずはギルドの魔法練習場に行きましょう。そこであなたの得意な炎魔法を見せて欲しいです」
ん?別に炎魔法は得意ではないのだが?それでもスピリアの目には得意に見えていたのか、やっぱり私って相当強い魔法使いなのでは?
そんなことを考えながら歩いていると、魔法練習場まで着いた。
「まずは私が的の人形に向かって耐性魔法をかけるのであれにダメージを与えてください」
「これは冒険者の試験と同じやつだな。しかもあの試験の時よりも術式が複雑で強くなっている。私を試しているのか?」
「はいそうです。あなたの話では耐性魔法と耐性魔法の間に隙間があり、そこを狙う事で燃やす事が出来ると言っていました。なので今度はもっと緻密な魔法操作が必要ですよ」
あの時は杖が壊れていて本来の威力の五十分の一程度しか出なかったからあの方法を使っただけなのだがな。まぁ、スピリアの魔力量は私ほど多くないから魔法操作だけで燃やして見せよう。
「それじゃあいくぞ」
そう言って私は試験の時とほとんど同じ威力で炎魔法を放った。すると、人形は一瞬で燃え、私の緻密な操作を前にスピリアの耐性魔法は意味をなさなかった。
「あの、エリセツア、あなたって本当に三級冒険者なの?見たところ一級と肩を並べられるほどの実力がありそうだけれど」
スピリアがまさかそこまで評価してくれているとは思わなかった。実は私が炎魔法をあまり得意としていないことを伝えたらどんな反応をするだろうか、
面倒くさいことには巻き込まれたくからこれからは実力をスピリアを含めた全ての人に実力を隠すことにしようと思った。
「まぁ、センスだよセンス。魔法に対する気持ちが大事だ。自分が炎になったかのようなイメージをするんだ」
「分かりました。炎を自分の体だと思ってやってみます」
理解が早くて助かる。流石、貴族の教育はしっかりしていてありがたいな。
しばらく練習するとスピリアの魔法操作は格段にレベルが上がっていた。私の教え方が上手かったからかな?いいや、そこまで自惚れてはいない。
スピリアにはセンスというか高い理解力があるな。
「よし、練習はこのくらいで良いだろう。もう昼だし昼ごはんを食べに行こう」
「そうですね。私はもう疲れてお腹もペコペコです」
そう言って練習場を出ると、何やら外が騒がしかった。どうやら国王誕生祭だったようだ。
「凄く賑わっているな、昼ごはんを食べたらパレードに参加しないか?」
私にとってこれほど多くの人間が集まって賑わっているのはとても不思議な光景で新鮮だった。しかし、
「いや、私は遠慮しときます。人混みは苦手ですから」
その反応は意外、というか不自然だ。ギルドの中はいつも騒がしくてパレードと大して雰囲気は変わらないのに、もしや、
「あのさ、もしかしてスピリアって、、」
ギルドでは周りの冒険者たちがスピリアを見るたびに視線をむけていた。しかも、そいつらが話していた内容が少し聞こえていた。
しかし、もしそうだとしたらかなりやばいぞ。
「急に何ですか?かしこまって?」
「国王の娘だったりしないよな?」
そう、聞こえた噂はスピリアが国王の娘ヴァリエにとても似ているということだった。その時はたまたまだろうと思っていたが、その後のギルドの受付の態度がやけにかしこまっているのを見ると、何となく怪しいと感じていた。
「はぁ、もうバレてしまいましたか、長く隠していくのは難しいとは思ってましたがこんなに早いとは、、そうですよ、私は国王グランバス・モナレンの娘ヴァリエ・モナレンです」
「ひぇ、ま、じ、か」
私は固まって石になってしまった。