4話「初任務と初仲間」
私は今、初任務でゴブリン十体の討伐でモナレン王国の近くにある森に来ている。任務難易度は三級で今の私じゃ余裕だ。なのにも関わらず私は二人で来ているのだ。
それは遡ること一日前、
「ふん、今の私は三級冒険者だから三級の任務しか受けられないのか、では三級の中でも特に難しそうなやつを選ぶか」
そうして私が任務の紙に手を伸ばしたその時だった。
「あ」
「あ」
なんと同時に誰かと被ってしまったのだ。とても気まずい状況でお互いに話し合った結果、二人で一緒に受けることにした。
「あの、名前はなんて言うんですか?私はスピリアです。あなたも魔法使いですよね?」
「あぁ、私は魔法使いのエリセツアだ。失礼だが君は見た感じだとゴブリン十体に挑むには実力が足りないんじゃないか?」
結構高圧的な態度で喋ってしまった。だがしかし仕方ないのだ、ギルドは規則が緩いため、舐められると結構面倒くさいことになる。だから一、二級の冒険者は皆態度がでかい。それが冒険者というものなのだ。でも実際、スピリアはゴブリン十体を倒せる実力はある。私と同じく魔力を隠しているから弱く見せているのだ。正直私には少し溢れている魔力を見れば隠していることなどおみとおしなんだが、隠しているということはスピリアの先生は優秀だったのだろう。
「分かってます。でも私は早く強くなって一人前にならないといけないのです。実は私、貴族の家系なのですが、家族にずっと迷惑ばかりかけていたんです。なので冒険者として強くなって両親に認めてもらいたいのです」
んー、余りにも冒険者に向いていない。貴族ということは勉強ばかりで実践経験はほとんどない。もし怪我でもしたら後継ぎに影響が出るからだ。なのにも関わらず、貴族の親が危険な冒険者になることを許可したとは到底思えない。おそらく家出だろう。それに私が言うのもなんだが、若い。年齢は私と同じようだが、私のように小さい頃が修行をしていたわけではないので実力が足りてない。
しかし困った。このことをどう伝えれば良いだろうか、
「実は私は魔力探知がそれなりに得意でな、二級レベルの魔物が近くにいるんだ。一回身を潜めないか?」
実に自然な流れだ。実際は近くにはゴブリンしかいなのいのだが貴族を怪我させる訳にはいかないのでスピリアが休憩している間に私だけで倒すことにした。
「はい、そうですね。一旦隠れて休憩しましょうか」
そうして洞窟で休憩して、しばらくお互いについて話し合った。スピリアは家名こそ教えてくれなかったが、相当高貴な家だということが分かった。彼女の先生や周りの人間の雰囲気で分かる。二十分ほど話した後に少しお手洗いに行くと言って、洞窟から抜け出した。
「ふう、それじゃあゴブリン狩り始めますか!」
しばらく周りを歩いていると、ゴブリンを発見した。新しく買った杖を構えて
「水魔法!水弾!」
普通は詠唱などしないのだが、気分が上がっていたので言ってみた。正直ゴブリンの血が飛び散るので周りから見た雰囲気は最悪だ。もしこれをスピリアに見られていたら、引かれていただろう。
「やっぱり一人で任務を終わらせようとしてたんですね。謝ってください」
「ん?あー、いや、違うんだ。たまたまゴブリンが襲いかかって来たから仕方なかったんだ」
「いや私、後ろからずっと見てましたけど」
何と言うことだ、ウキウキな気分だったせいで油断していた。まさか見られていたとは、
「とりあえずゴブリンを全て片付けましょう。あなたほどの実力なら余裕ですよね?」
なんか、立場が最初と逆になってることに違和感を覚えたが戦闘に集中することにした。
そうして全て倒すと、私は土下座をした。
「はぁ、申し訳ない。本当は貴族である君に怪我をさせるのを防ぐためだったんだ。それに君には家族がいる。君の周りの人間が悲しむのは嫌だろう?謝罪として何か言う事を一つ聞いてあげるから」
人生で嘘がバレた事は一度もなかった、というか嘘をあまりつかなかったから嘘がバレた時の罪悪感が心に刺さってくる痛みを感じるのは辛い事だと知った。
「じゃあ、私とパーティを組んでください。私は報酬にはあまり興味がありません。実際実力はエリセツアさんの方が上ですし参考にさせて欲しいです」
「え、まじ?」
どうやら罪悪感に襲われる暇もなく、強制的だが私に初仲間が出来たらしい。正直、最初はびっくりしたがだんだん満更でもなくなっていった自分が少し恥ずかしい。
とにかく初任務は無事に終わった。