3話「衝撃の事実」
「はぁ、何で私がこんなことに」
今、私はギルドの前にいる。元々、今日からギルドで任務を受けるつもりだったが今は違う。ギルドから呼び出されてここにきている。
「絶対に怒られるやつだ、はぁここ数日楽しんだ分嫌なことも増えてしまうのだな」
暗い気持ちでギルドに入り、待合室に向かった。
しばらくして私の試験の試験官だった。無愛想な男とインテリ系の糸目の男が入ってきた。
「どうもこんにちは。私は副ギルド長のロジだ。そして隣のこいつは冒険者であり友人のアリック。本日は君の経歴について教えてもらおうと思う。あと私のことはロジと呼んでくれ」
ロジはずっと笑みを浮かべていて気味が悪い。隣のアリックは沈黙している。
「すみません、その前に何故私はここに呼ばれたんですか?心当たりがないんですけど」
アリックがロジの肩を叩き、ため息をついた。私は本当に何をしてしまったんだろう。
「まず、君は自分の異常さに気づいていないだろう。一昨日行われた試験について覚えているか?アリックが試験官だったやつだ」
「はい、人形に傷をつけたり燃やしたりして実力を測る試験ですよね?」
私はしっかり人形を燃やし尽くした。試験も合格と言われたし、何も問題ないはずだ。
「君はあれを燃やし尽くしたんだ。あれを燃やし尽くすには相当な実力がいるんだ。一級冒険者でも数えるほどしか出来ないことなんだぞ」
私は気づいた。確かにあれは魔法耐性と物理耐性の魔法が付与されていて少し硬くなっていた。しかしあれは魔法と魔法の間に隙間があり、そこに炎魔法を打ち込めば簡単に燃やせるのだ。しっかり観察し狙って打てば魔法を使える者なら誰でも合格できる。
そのことをロジとアリックに話した。すると、
「やはり君の才能は凄いよ。普通の人間は観察するだけじゃ術式を見分けることなんてできないし、見えたとしても狙って打つことはできない」
どうやら私は自分の実力を過小評価しすぎていたようだった。まぁ、冒険者として生きていくのだからそれくらいの実力があって当然だ。
「そして本題なんだが、一体君は何者だ?その年でそれ程の実力があるなんて全く理解できないのだが?」
なんか圧を感じる。とても興味津々のようだ。私は小さい頃から元冒険者の父さんと母さんから魔法について教えてもらい、稽古を付けてもらっていた。当時の私は旅をした周りの人たちの話を聞いてそれに憧れただけだった。
そのことを話すと、アリックが口を開いた。
「じゃあ、君の両親は相当優秀な魔法使いだっただろう。両親の名前を教えてくれるかい?」
「現在、父と母は亡くなりました。父の名前はヒョウセウで、母の名前はアリエです」
すると、二人の顔が曇った。しばらくコソコソ話した後、ロジが口を開いた。
「結論から言うと、君の両親を私たちは知らない。つまり優秀でありながら名は知られていない冒険者だったということだ。ギルドは優秀な冒険者を絶対に見逃さない。このことから君の両親はおそらく特別冒険者だ」
父さんと母さんは特別冒険者という職業で一級から三級までの冒険者とは違う職業なのか?特別冒険者がどう言うものか知らないが多分凄いんだろう。誇らしくなるな。
「でも、教え方が上手かっただけとかではないんですか?それか私に才能があったとか?」
「魔法使いと言うのはね、独学では絶対に強くなれないんだ。何故なら積み上げてきた知識が術式となり魔法使いの強さに比例するからだ。だから魔導書と言うのはこの世にめったに見られず貴重なものであり、個人が手に入れると国が傾くほどなんだ。アリックが見た限りだと人形を燃やした魔法は相当複雑な術式が組み込まれている。どうだい?言いたいことが分かっただろう」
なるほど、この人たちは勘違いしている。この術式は私が作ったものだ。父さんや母さんは魔法は教えてくれたが術式を教えてはくれなかった。魔法と術式を使った魔法、つまり魔術は魔法とは違う。
「今日はここまでにしよう。君はすぐに二級に上がれるだろう。出来るだけ早めに上がってきてくれ」
急かしてきたのには裏がありそうだったが今は考えるのをやめた。ただでさえ今は衝撃の情報が頭の中で回っているのにこれ以上考えたら倒れそうだ。
「よし、こう言う時は任務で魔物を倒そう」
そうしてゴブリン十体の討伐任務の紙に手を伸ばした。