2話「迫る不審者」
ドーウェンでの二日目、宿に入り込む日差しが私を起こしてくれた。
「ふわぁ〜。よく寝たな、早く買い物に行こうかな」
私は晴れやかな気持ちで着替えて、すぐ宿を出た。
「さて、まずは杖を買いに行こうかな」
杖は魔法の術式が組み込まれているから値段が高い。あとからお金が足りなくなったら困るから先に買うことにしたのだ。
しばらく杖屋に向かって歩いていると複数人の視線を感じた。
「どうしよう、今の私では杖が壊れていて勝てるか分からない」
そうして急ぎ足で杖屋に向かい、たどり着くことができた。
「ここまで来れば下手に手出しはできないだろう。じっくり杖を選ぶか」
杖の値段の平均は約五千レットだ。しかし私は長持ちするものを買うタイプなので二万レット前後の杖を買うつもりだ。
「ふーん、どれも中途半端なものばっかりだな」
店員には嫌な目で見られていたが、私は事実を言っただけだ。これらの杖では一年持つかどうかだ。
そうして探しているうちに気になるものを見つけた。
「これは気になるな、術式が複雑で私には読み取れない。しかし読み取れる術式はなかなかに高度なものだ。これにしよう」
値段は二万五千レットと高かったが、見た目はかっこいいし、これからギルドで金を稼ぐためと考えたら何も後悔しなかった。そうして店を出ると、また視線を感じた。
「相手から何もして来ないと言うことは監視か?しかし誰がなんのために?」
そう疑問に思いつつも楽しい気持ちを捨てたくなかったので、箒とローブを買いに行った。
いつの間にか夕方になっていたらしく買い物を終えた私は宿に戻った。
「じゃん!これはもう立派な魔女だ。誰がどう見ても魔女だ。」
新しいローブと帽子を身にまとい、杖と箒を持った鏡の自分を見て、慢心していた。買った物はそれだけではない。色んな魔道具を買ったのだ。それは風景を写実的に紙に写せる写真機や魔力を込めると字がかける羽ペンだ。他にも面白そうな物がたくさんあるが、確認するのはまた今度にしよう。
「それにしても流石にしつこいな、あの!何か私に用ですか!」
窓の向こうと部屋の扉の近くに気配がしたのだ。しばらくすると窓と部屋の扉からノックされた。
「どうやら気づかれていたみたいですね。申し訳ございません、私たちはギルドの者です。ギルドからの命令であなたについて調査させていただきました」
その後、淡々と監視の経緯や監視していた人間の情報について説明された。しかし、疲れたせいでほとんど会話の内容が入って来なかった。
要するに何故こうなったのかと言うと、私がやらかしていたらしい。そうして私は明日、ギルドに行くことになった。