14話「寒国の龍」
窓から差し込む朝のオレンジ色の光と家の中の自然溢れる景色のコントラストは私を清々しい気持ちで目覚めさせてくれた。
「ふわぁ〜、昨日の疲れが取れてないな、やはり寝床にはこだわった方が良いな。それにしてもスピリアは寝相が悪いな、おい、起きろ」
スピリアは私と隣で寝ていたはずなのに台所の方にいる。私は眠い体を起こして、スピリアの肩をトントンと叩いてあげた。
「おいおい、まさかお前がそんなにだらしないとは思わなか、、ひぇ!」
思わず大きな声を上げてしまった。なんとスピリアの顔にトカゲがくっ付いていたのだ。毒や歯による危険性は全くないが、気持ち悪い。
「んーおはようございます。そんな慌てた顔をしてどうしたのですか?あ、私の寝相が悪すぎましたね、次からは気をつけます」
「スピリア、落ち着いて聞くんだ。お前はもしかしたらこれから一生のトラウマを抱えるかもしれない。だから一旦、目を閉じろ」
「え、まあそこまで言うなら良いですけど」
そして私は風魔法の力を使って器用にトカゲをスピリアから離した。そしたら違和感を感じたのかスピリアが目を開けてしまった。
「うわ!トカゲがいる!」
「あ、まずい、バランスが!」
空中に浮かんでいたトカゲは風魔法の風域から抜け出し、慣性に従ってエリセツアへと向かっていった。
「きゃあ!」
そうして、なんやかんやでぱっちり目覚めた私たちは村長の家を訪ねた。
「今日はどうなされましたか?家に何か危険な魔物が潜んでましたか?」
「いや、まあ危険と言えば危険なやつもいましたけどそれよりも興味深い物を見つけたのです」
そう言うとスピリアは昨日見つけた龍とトリャヒス村の人々の絵を見せた。
「これは、一体何なのでしょうか?どうやらトリャヒス村のようですが、儂には見覚えがないです」
予想外だ。この絵が描かれたのはおそらくここ数十年だ。だから村長なら何か分かるかと思っていたがな、、
「しかし、この龍が描かれている場所なら分かりますぞ。どうぞ、儂が案内しましょう」
そうして村長に連れられてその場所へと向かった。
「何もないな、おかしいほど何もない。周りには木がたくさん生えているのにここだけ木どころか草も生えていない」
「そうなのです。儂もよく分かっていませんがここだけ草木が生えず、放置状態にされているのです」
なるほど、やっと思い出した。ラゴスハインには草木どころか土をも殺す龍がいる。おそらくそいつが降り立ったからそうなってしまったのだろう。
「この跡はボルブロ種という珍しい龍によるもので間違いない。ボルブロ種は耳がとても良い。おそらく誰かが調教していつでも呼び出せるように魔法陣が張られているいるはずだ」
「え、ボルブロ種ってあのラゴスハイン寒国に住むとされる伝説の龍ですか!?」
スピリアがとても驚いている。無理もない、父さんの話によるとボルブロ種はとても人間が立ち入ることが出来る場所に住んでおらず、その凶暴性から人間が扱うなど無理に決まっているからだ。
そんなことを考えていたその瞬間、何かが崩れる気配を感じた。
「おい、スピリア、今の分かったか?」
「え、なんのことですか?」
これは何かの封印が解けるような気配だ。しかもだんだんと気配が強くなっている。
「村長、このままでは村が危険だ。急遽魔法陣を起動するぞ」
「ちょっと待ってくれませんか、ここは儂の村です。もしや、そのボルブロ種とやらを呼ぶのですか?そんなことをされてはこの村が破壊されてしまうのです」
「あぁ分かっている。しかしこの魔法陣を起動しないともっと大変なことになってしまうんだ」
「エリセツア、どういうことですか?もう私と村長は理解が追いつけません」
「こうなってしまったのだからもう後戻りはできない!話はもう後だ。今は時間がない。スピリア、杖を構えておけ」
そして、私は地面に向かって魔力を流し込んだ。