12話「解かれた呪い」
私たちは王国を出た後、箒に乗ってダリナー自然国へと向かっていた。
「それにしてもエリセツアは箒に乗るのが上手ですね。私は酔ってしまい、気持ち悪いです」
「これはイメージ力が大切だ。いつも私が教えている魔法と一緒だ」
「というかイメージって何なんですか?王家にいた頃はそんなこと言われていませんでしたよ」
「分からないか、王家では術式を習い、そこに火や水を通すことを魔法として扱っていた。しかし、実際はそれは魔法ではなく魔術だ」
そう、この世にあるほとんどは正式には魔法ではなく魔術だ。魔法とは術式を使わずに元素の力のみを操ることだ。しかし、魔法はイメージ力が足りないと効率が悪く、現在は魔術が魔法として認知されている。これは父さんに教えてもらったことだ。
「つまり、エリセツアは魔術ではなく本物の魔法を教えてくれていると言う訳ですね。でも何故魔術というか、術式は教えてくれないのですか?」
正直、私も魔術を度々使っている。父さんや母さんも魔術の方が万能だと分かっていた。それでも魔法を使う理由は別にある。
「魔術はな、手の内が明かされると不利になってしまう。かといって手数を増やすためにたくさんの術式を覚えるのは余りにも効率が悪い。だから本当の強者になりたい者は魔法を使っているはずだ」
「でも、エリセツアの魔法ってたまに術式が組み込まれているときもありますよね?あれは何ですか?」
ほう、やっと術式を視覚に捉えることが出来るようになってきたか。これは良いことだ。
「それはたまにではなくずっとだ。スピリアも術式を可視化できるように特訓しているようだが、まだまだだな。私が普段、魔術を使っていたのはスピリアが術式を可視化出来るのを確認するためだ」
「そうだったんですね、知らないうちに訓練していたと言う訳ですか。やはりエリセツアには敵いませんね。しかし、エリセツアの師匠はどのような人なんですか?それだけの知識があれば余程すごい人だったのでしょう?」
「私の魔法についての師匠は父さんと母さんだ。どちらも優秀な魔法使いだったらしい。それにしても今はどこで何をしているんだろうか?」
「え、確か亡くなったんじゃなかったんですか?」
そうだ、ドーウェンに行く前までは死んだと思っていた。というか思わされていた。何故気づけたかと言うと呪法師の事件の時に呪いの力を使ったことでたまたま自分にかかっていた呪いが解けてしまったのだ。正直はっきりした理由は分かっていないが、まぁそういう呪いだったのだろう。
「実はな、母さんの友だちが私に呪いをかけていたんだ。父さんと母さんが死んでいると思わせる呪いだ。それも呪いをかけるように頼んだのは父さんと母さんだった」
「それは自立して生きてほしいってことですか?」
「あぁそうだろうな。私と似て自分の人生を最優先したかったのだろう」
それによって私が怒ることはないし、別に気にしていない。でも、そこまでする理由があまり分からなかった。
「また会いたいですか?」
「会いに行こうとは思わない。どうせこの旅の途中で会うことにはなると思うからな」
そんなこんなで話していると、
「あれがダリナー自然国か。予想通り自然の景色が綺麗で鮮やかだ。でも虫が多そうであまり気に入らないが」
「試験会場は首都のルドアイヴィでしたよね?ここからでも首都に生えているとても大きい木が見えますね」
「ああそうだ。試験は一ヶ月後にあって、それまではトリャヒス村という所で宿を借りる。首都の宿は受験者で多そうだからな」
これらは全てロジから言われたことだ。何故そこまで私に執着するのか分からないがありがたいことだ。
ダリナー自然国ではどんな冒険が待っているのか楽しみだ。