10話「呪法師の徒労」
「いやぁ、演技が上手くいったようだな。私が気づいてないとでも思ってたんだろうが残念だったな」
黒い影は実体化し、人間の形へと変化した。
「これは呪いだと、そんなのおかしいだろ!?しかも副ギルド長の魂と俺の魂を切断しただと?そんなことありえねぇだろ!貴様は化け物か!?」
う、頭が痛い。久しぶりに呪いの力を使ったせいか?母さんの友だちとの呪いについての授業をした時が懐かしいな。
「いいかエリセツア。呪法師ってのは独特のオーラを放ってるんだ。何故かって言うとだな、呪いの力と魔力が混ざり合っている間は独特のエナジーが出来るんだ。これをルーナでは対消滅エナジーと呼ばれているんだ」
「それじゃあ敵に手の内を晒してしまうことになるってこと?」
「あぁ普通だったらな?でも私からは呪いの力を感じないだろ?それは魔力と同じで呪いの力も抑えることが出来るからだ。でもそれは厳しい修行が必要になる。だから今からやるぞ」
「え?」
母さんの友だちは雰囲気は怖くてサディストではあったが、面白くて呪いの知識を丁寧に教えてくれた。こうして今役に立っていることを考えるとありがたく思う。
それにしてもいつからだろう。私に記憶を封じる呪いがかけられていた。まぁ今は関係ない。目の前の敵に集中しよう。
「おい!話を聞いてんのか!貴様は何者だ!?魔法も呪いも全てにおいて私より圧倒的に実力が上だ。どうやったらそこまでの領域に行くことができる?」
「黙りなさい。強者というのは実力を見誤ったり、実力を見せびらかしたりしないんです。あなたのようなルーナから逃げてきた弱者に教えることは何もありません。死になさい」
「なんだと!俺はここで惨めに殺されるのか?どうにか見逃してくれないのか!?」
この呪法師はおそらく何かしらの組織に属しているのだろう。本人は気づいていないが自爆装置が組み込まれている。しかも魔法や呪いの力ではなく聖なる力で作られた物だ。組織を裏切ろとした瞬間絶命するようになってる。
「じゃあ、あなたが所属している組織の名前を教えなさい。そしたら呪いと魔法について教えてあげましょう」
これが彼にとって一番優しい死の方法だ。このまま連行したところでどうせ処刑される。それなら責めて恐怖を感じずに死なせ、しかも私が情報を入手すれば一石二鳥だ。
「何だと!?俺が組織に入ってることも分かってたのか、いいさ教えてやろう。俺が所属しているのは『ペルヴェリン』だ」
その瞬間、呪法師は固まった。どうやら死んだようだ。
「ふぅ、何はともあれ事件は解決したな。王妃や王子に伝えなければ、それにしてもペルヴェリンか、これから厄介な相手になりそうだな」
何かを忘れている気がしたが疲れていたので、王城で休もうと歩みを止めなかった。
「エリセツア、副ギルド長である僕を忘れるとは、しっかり説教が必要だ」