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White. Out  作者: 木下古里
3/3

新たなその脚で大地を舞う

「変えるって言っても……元の形には戻せないんですか?」


自分にとっては貧乏な田舎で数年掛けてジャンクパーツから組み上げた初めての機体なのだ。多少ボロボロでも愛着はある。しかし、少し申し訳なさそうな顔をした彼女の返答はどうしようもない現状を伝えるものだった。


「こちらとしても直してやりたい気持ちはあるんだが、さっき言ったみたいに無茶のし過ぎで殆どのパーツが修理すら出来ない。おまけに古過ぎて手に入らないパーツも混ざってるからね。見た目だけ寄せても中身は完全に別物になるさ。」


「そんな……」


何となく予想はしていたが、いざ面と向かって言われると悲しくなる。目の前のボロボロになった機体を見上げて目を閉じ、一呼吸。目の前まで歩いてきてくれた彼女に言う。


「この子と、また走れるように出来るんですよね?」


「勿論だ。技術者として保証しよう」


今までで一番真剣な顔で返され、覚悟を決める。どちらにせよ、先に進むにはこうするしかないのだ。


「私の愛機をお願いします」


「請け負った!早速改造と行こうじゃないか」


彼女に着いて行き、改修後の性能や機体の外見に着いて話していく。流石惑星内でのあらゆる事態に対応する組織だけのことはありとあらゆるパーツが揃っていた。数多くのパーツからいくつかを見繕ってもらう。隊員を助けた礼ということで金額などは気にしなくて良いと言われ、余ったパーツの中から必要なものを頂く事にした。


「どうだい?最新のパーツばかりとはいかなかったが、随分いい姿になったと思わないか」


満足気に機体を見上げる彼女の隣で私も機体を見上げる。ボディがボロボロだったこともあり元の面影はあまり感じられなくなってしまったものの、新たな姿で甦った愛機に心が躍る


「周りに人は居ないし、電源いれてみなよ」


「はい!」


促され、足場を登って操縦席の方へと移動する。どうやら細かく調節してくれたらしく硬かった座席の弾力が少し上がっていた。エンジンを起動し、カメラの鮮やかさや新しくなった操縦系に感動していると妙なものがあった。


「小さいモニター……何でこんなところに」


前面のダイナミックなカメラモニターの手前座席から見て斜め少し下の辺りにもう一つ小さなモニターが存在している。博物館にあった車のカーナビの様なものだろうか。だが、同じ機能はカメラモニターに直接表示される。わざわざ搭載する必要はないはずだ。一つだけ電源が切れたままのそれに触れようとした瞬間、画面に明かりが灯った。同時に表示される機体の全身図と各部の機能説明。


「どうだ?操縦系が多少変わっちゃってるから違和感はどうしても出ると思うんだけど」


丁度いいタイミングで技術者が中に入ってきた。


「あの、これなんです?」


モニターを指差して問いかける。以前の機体には無かったものだ、流石に聞いておいた方がいい。


「ああ、これ?今は説明書出てるみたいだね」


「説明書?」


「そう。改造しまくったから要るかと思ってね。他にもいろんな機能あるから、おいおい試していくといい」


「……ありがとうございます」


「後、邪魔だったら外して座席の横に収納できるから」


技術者が上のストッパーを外しモニターを外して見せる。タブレットだったんだこれ。ともかく、一通り昨日の確認は終わり、試運転も可能になる。一度すべての電源を落として彼女が外に出られる様にする。電源を入れたからといって機体が激しく揺れたりということはないが、安全を確保するという点では重要なことだ。


「私は離れるが、無線登録してあるからそこでサポートする。それじゃあ、楽しんでな」


彼女はそう言っててハッチを閉め、周囲の職員と共に離れていった。電源の落ちた操縦席の中は暗く静かで、新しくなった機体に浮き足立っている私にとってはそれがとても落ち着かなかった。[周囲の安全確保完了。電源を入れていいよ]唯一電源を入れっぱなしにしていたタブレットにメッセージが届き、主電源のスイッチを押し込む。視界の端から順に光が広がり、最後にモニターにハンガーの景色が映し出される。


『テストテスト……聞こえるかい?』


タブレットから技術者の声が聞こえる。正面のドックに固定し直すと機体側のスピーカーから音が響いた。


「大丈夫です。こちらの声は聞こえてますか?」


『問題なさそうだね。今から機体周りの足場を移動させるから少し待機してな』


とりあえず、その場で少し声を出して返事をしてみたが、どうやら正解だったらしい。機体の周りを覆っていた足場が次々と離れていき、出口への通路が拓かれていく。


『そのまま歩いて外まで行ってみな』


技術者に言われるがまま、一歩ずつ期待の歩を進めていく。以前は歩く時に多少足の動きに鈍さが感じられたが、新しくなった機体では足パーツを少しくの字に曲げている状態が通常の為膝のパーツが衝撃を和らげて全体の負荷が抑えられている。スムーズに出口まで歩くと蒼空が広がっていた。もう一度この機体で空を見上げることができたことを改めて噛み締めながら更に一歩足を進めた


『歩行や姿勢制御は問題なさそうだね。次はブースター類のテストだ。識別信号は出る様にしてるから、このハンガー近くなら飛び回って問題ないが施設にぶつかったりはしない様にね。先の交戦で多少はピリついてるみたいだし』


ブースターの出力を抑え気味にしつつ広い敷地内を滑る様に進んでいく。急な旋回でも振り回されている感覚は少なく以前ほど強いGは感じない。躍るようにクルクルと回り加速していく。今の気分が機体の挙動にも現れていた。


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