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White. Out  作者: 木下古里
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組織拠点にて

どれほどの時間が経ったのだろう。生きていること自体が奇跡とも呼べる状況ではあるが、どうやら私は生き延びたらしい。落下の衝撃で歪んでしまったハッチをこじ開け、外へと這い出る。あれだけ荒れていた天候は嘘だったかのように空は晴れていた。しかし、ほとんど埋もれてしまっている自身の機体と、少し後方に見える原型を残さず破壊された誰かの機体が、気を失うまでの光景が嘘ではなかった事を物語る。果てし無く続く雪原と見るも無惨な残骸たちを前に、これからの事を考える。移動手段であるマシンは原型は保っているものの、電源は入るが動かすことはできない。しかし、数メートルの機体が埋まるほどの積雪を歩いて渡るなどという芸当は到底できる筈もなかった。どうしたものかと救難信号を飛ばしつつ機体の淵に座り込んで考えていたところ、遠くから複数の機体が飛んでくるのが見えた。どうやら先程もで戦闘をしていたこの惑星の治安維持組織が事後処理に来たらしい。


「こちらに巻き込まれた一般人がいるとの報告があったんですが、あんたのことかい?」


飛んできた機体のうちの一機のハッチが開き、中から中年の男性が顔を覗かせる。


「そうです!雪に機体が埋まって、そちらの機体で運んでもらえませんか?」


事前に貰っていた簡易身分証を見せ、機体を括り付けて運んでもらう。


「他の機体は大丈夫なんでしょうか?」


「大丈夫、もうすぐ増援が来る。それに、あんた以外だとかなりの数の隊員の機体が雪の下だ。これじゃあ増援が来るまで動かすのは難しい。」


「もう1人巻き込まれた人がいた筈なんですが……」


「すまないが、周囲にそれらしい反応はなかった。友人を心配する気持ちは分かるが……」


少し言いにくそうに口ごもる。期待反応がない時点で生存率は低い、ということだろう。それだけの状況ではあったのだ。


「いえ、私も偶然居合わせただけではありますので……」


「そうかい……」


通信を切り、大人しく機体の中で揺られる。心配ではあるものの、今の自分ではどうすることもできないのが現状であった。揺られること数時間。治安維持部隊の拠点で簡単な修理をしてもらえることになった機体を預け、隊員たちが慌ただしく走り回っている基地の隅でしばらく待つことになった。


「そういえば、何であんたはあんなところにいたんですかい」


「あなたは、さっきの……助けてくださり、ありがとうございました」


輸送してくれた隊員がコーヒー缶片手に隣に座る。どうやら次の出動まで時間があるらしい。


「最初はあの付近の先にある市場を目指していたんですが、その途中でエンジンが破損した機体が飛んできて、それがそちらの隊員の機体だっったので拠点まで運ぶことにしたんです。もう1人の人もその場に居合わせただけで……」


「成る程な、中の隊員は大丈夫だったのかい?」


「はい。戦闘に巻き込まれたのは帰りなので」


「仲間を救ってくれてありがとうな。……と、時間だ行かねえと。ハンガーの方にアンタの機体は預けてある。様子を見に行ってやんな」


そう言って中年の隊員は走り去ってしまった。猛吹雪の中かなり無理をさせてしまった機体のことも気になる。私も教えてもらったハンガーの方に急ぐ。たどり着いたハンガーの端ではツナギ姿の整備士達が機体の点検と整備を進めていた。こちらに気付いた整備士の1人がこちらに言う。


「随分と無茶をしたね、この子。ブースター周りは焼けついてるしそれ以外も過負荷でガタガタだよ。……まあ、部品を交換したらある程度は直ると思うけどさ」


ため息吐きつつ「だが……」と彼女は続ける。


「この機体、自分で組んだんだろ?市販品にしてはチグハグなパーツ構成だし、悪い訳じゃないが少し溶接が不恰好だ。修理後を見ても、大切にしているのは伝わってくるさ。愛機ってやつだね」


愛おしそうに傍の機体を撫で、私の前へと歩いてくる。


「さあ、そんな大切な愛機をどんな姿に変えるか、決めようじゃないか」


これが後の私にとって盟友と呼ぶことのできる女との出会いであった。


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