2話 緑の小人こいつがゴブリン
「これは現実なのか?」
そんな言葉がつい口からこぼれてしまった。
俺は急いでカーテンを閉め部屋の隅に隠れるようにしながら状況を整理する。
「あの緑の小人...よくアニメなんかで見るゴブリンに似ていた...。
それにあの地震...電波障害...。いや、そんなファンタジーみたいなこと現実に起きるはずがない。」
しかし、突然のことで何も整理ができず一人困惑していると部屋のドアが叩かれた。
俺は思わずさっきのゴブリンみたいなのが来たのかと思い息をひそめる。
「すみません!誰かいたら開けてください!」
俺はその声に聞きなじみがあった。
隣の部屋に住む大学生くらいの女の子だ。下の名前しか知らないが確か「桔梗」という名前で黒上ロングがよく似合う美人な女の子だ。
特別仲がいいわけでもなく普段すれ違う時にあいさつを交わすくらいの仲だがこの状況で無視するのも酷だと思いすぐドアを開ける。
「あまり大きい声を出さないでくれ。あの化け物に襲われたらどうするんだ。」
「す、すみません。あの...これはいったいどういうことなんでしょうか?外を見たら見たことない生き物が人を襲ってるのを見てしまって...。」
「そんなの俺もわからないよ。いったん中に入ってくれ。あの化け物がこっちに来るかもしれないから」
「はい...ありがとうございます。」
彼女は安心したようにほっと一息を付き部屋に入ろうとした瞬間俺の目の前で彼女の頭が潰れた。
いや、木の棒なものに潰された。
「グギャ!」
そこには先ほどの緑の小人がおりよだれを垂らしながらケタケタ笑っていた。
俺はそれを見て急いでドアを閉めた後かぎをかけ部屋の奥に逃げた。
クチャクチャという耳障りな音が聞こえた後、部屋のドアが強い力で叩かれ始めた。
「なんなんだよこれ!!!」
俺は誰に届くわけでもなく一人で行き場のない不安をぶつけた。
しかしそれで現状が変わるわけでもなくだんだん鉄製のドアがひしゃげる音が聞こえてくる。
ドンッ!!!ドォォッン!!!
俺は急いでキッチンにある包丁を取り出し緑の小人と相まみえる。
「ち、近づいたら刺すぞ!」
「ギャギャギャ!」
緑の小人は獲物を見つけたといわんばかりの表情で俺に向かって直進してくる。
「うわっ!」
思ったよりも早い動きに俺は怯え目をつむってしまった。
そして手には生肉を刺したような感触があった。
数秒後、手に生暖かい水が垂れる感覚があり恐る恐る目を開けるとさっき襲ってきた小人の眉間に包丁が突き刺さっていた。
「お、おえっ」
それを認識した瞬間俺はとてつもない吐き気に襲われその場で吐いてしまった。
生き物を刺した感触、むせかえるほどの血の匂いで耐えられなくなってしまったのだ。
急にどこからか女性の声が聞こえた。
『あなたはゴブリンを撃破しました。経験値を3獲得しました。』
「だ、だれだ!」
服の袖で口を拭いながら声の主を探す。
しかしこの部屋に女性がいるはずもなくさっきまで部屋に入れようとしていた女性は俺の目の前で死んだため俺は意味も分からず周りを見渡し続けた。
数分後、ようやく吐き気がマシになったので俺は改めて状況整理とゴブリン?の死体をあさることにした。
「とりあえず、生き延びた。けど外にはさっきの化け物がまだいるのか?
もしそうなら戦うための道具が必要になる...。それにスマホはまだ使えないし。どうしたものか...。」
困った俺はとりあえずゴブリン?の死体から木の棒を拾い上げそれを武器に使うことにした。
その後殺されてしまった女の子に合掌をし、俺は外へ食料集めに行くことにした。
「さて、こんなものか。ったく、急にこんなファンタジーな世界になってどうしたものか...。
まだ太陽も昇ってないが食料は早いうちに集めておいたほうがいいだろう。夜中だがすぐに出よう。」
俺はこうして一人。食料集めの旅に出た。