22話 今の日常
~アメリアside~
まさかノワールさんから初日に食事に誘ってもらえるなんて...
それにおなかも減ってないみたいなのに誘ってくれる優しさまで持ち合わせているなんて...
これ優良物件なのかもしれません!!!
~本編~
俺はアメリアの案内で一緒にお店まで歩いて向かう。
道中俺とアメリアは通行人にじろじろと見られてしまう。
まぁアメリアはすごい美人だしみられるのもわかるけどな。
俺はそう思いながら魔力を耳に集めて聴力を強化して近くのカップルのヒソヒソ話を盗み聞きしてみる。
「あの人アメリアさんじゃない...?」
「あ、あぁ。それにしても隣の男は誰だ?みんなのアメリアさんの横に並ぶとは命知らずなやつだ。」
「でも男の人もすごいイケメンじゃない?」
なんて話をしているみたいだ。それにしてもアメリアはSランクハンターって言ってたがかなり知名度も人気も高いみたいだな。
「アメリアはどうも人気者みたいだな。」
「えぇ、数少ないSランクハンターでしたから。まぁこの目線の多さは私だけが原因じゃないと思いますが...」
「聞いていいのかわかんないがなんでハンターやめたんだ?」
「まぁ簡単に言うと怪我が原因ですね。まぁ今は割と問題なく動きますがそれでもコンマ一秒を争う状況では言い訳にはなりませんから潔く引退したんです。」
「なるほどな。悪いこと聞いたな。逆にアメリアから質問はないのか?」
「聞いてみたいことはありますがそれはお店についてからにします。それにもうすぐ着きますから。」
「ならそうしようか。」
俺たちはそんな会話を交わし通行人の目にさらされながらお店に着いた。
店構えは伝統的な和の雰囲気を持ち合わせた暖簾掛けの扉で日本人としては正直テンションが上がるようなレベルだ。しかし、俺は逆に怖くなる。
「これはかなり高いんじゃないか?」
「どうなんでしょう?普段は金額をあまり気にしないのでわからないですね。」
そういいながらお上品に笑っているがこいつかなりの金持ちなんじゃないのか?
もしかしてハンターって結構お金を稼げる職業なんじゃないのか?
俺がそんな邪な考えを張り巡らせているとアメリアが先に店のドアを開け入っていく。
それに遅れないようにすぐ後ろをついて入店していく。
店の中には禿げ頭で料理人の服を着ているおじさんが一人気難しそうな顔をしながらカウンターで待っていた。
「いらっしゃい。」
恐ろしいほど渋い声で歓迎された俺はつい苦笑いを浮かべてしまうがアメリアは慣れたようにカウンターに座り俺にも席に座るように促した後、
「大将、今日のおすすめでお願いします。」
と手慣れたように注文をする。
「あいよ...」
大将も寡黙ながらも静かに握り始める。
正直俺は高級店などに行ったことはないためいい料理人というのは詳しくはわかってないがそんな俺でも見てわかる。
この人は凄腕だと。なぜか寿司を握るときに彼は指先に魔力が集まりそれが食材に溶け出すように合わさっているのだ。俺がそれをまじまじと見ているとアメリアが、
「彼は『料理人』の職業を授かった人物なんです。ほかにも何人かいますが彼は寿司という舞台では圧倒的NO1の実力を誇っています。」
「へぇ、そんな職業もあるんだな。そういや前生産系の職業のやつが雑に扱われている現場も見たことがあったな。」
「街が出来上がる前はそういうのも多数あったと聞きますね。大将もそういうところにいたんですか?」
「あぁ...ショッピングモールにいた。そこに食料を持ってきたのがそこの悪魔様だ...」
「ん?あんたあの避難所にいたのか?」
「あぁ...あんた達があそこを出てすぐに俺もあの場所からは出たがな...」
「そうだったのか。生きていてくれて何よりだよ。」
「いや...俺のほうこそだ。悪魔様のおかげでちゃんとした飯を食えたんだ。感謝してもしきれないさ。」
「あらあら...私もいるんですからね?」
冗談めかしくアメリアはいうが大将は俺に本気で感謝しているらしく少し目頭が赤くなっていた。
俺は別に善意であんな行動をしたわけじゃないから少し申し訳ない気持ちもあったが素直にうれしいと思える気持ちもあった。
「へい...お待ち...」
俺は大将から今日のおすすめの説明を聞きながらお寿司に舌鼓を打つ。
正直この体になってから空腹が来ないせいでちゃんとおいしいのか不安だったが想像以上の味の良さに俺は感極まってしまう。
「最高においしいよ。大将。」
「どうも...」
大将は無愛想な顔で俺にお礼を述べる。しかし俺は見逃さなかった。恥ずかしいのを隠すために鼻をかこうしていて途中でやめたのを。
俺とアメリアは食事を終えたあとお茶をすすりながら雑談を始める。
「さて、それでは先ほどのお話の続きをさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、聞きたいことがあったんだったな。なんだ?」
「えっとそれではですね...さっそくですがステータスのことを聞いてもよろしいですか?」
「あぁ、答えてもいいけど...」
と言いながら俺はチラリと大将のほうを見る。
「大将は口が堅いので大丈夫ですよ。では、さっそく今レベルはいくつなんですか?あのありえない強さは70レベルも軽く超えてると思うのですが...」
「あぁ、俺にレベルって概念はないぞ。というか俺もよく見れないんだ。」
「見れない...?どういう意味でしょうか?」
「どうせならステータス見るか?」
「え、えぇ。いいならみたいですけど...」
「ついでに大将も見ていいぞ。」
「いや...遠慮しておく。心臓に悪そうだ。」
「まぁ、別にいいけど。俺のステータスはこれだな。」
俺はそう言いながらステータスを表示しアメリアに見せる。
名前:ノワール・ルシフェル
年齢:???
種族:ルシファー(固有)
LV:???
職業:???
称号:原初の悪魔 堕天使 反逆者 蘇生者
HP:SSS
MP:SSS
固有スキル:吸収 アイテムボックス 魔眼 ラプラス ドラゴンブレス 魔力の支配者 武神 王威圧 完全鑑定 闇纏
「えっと...見たことないのがいっぱいありますね...」
「他の人のをあんまり見ないし見ても覚えられないからな。」
「そうですね...まずは称号が複数あるのがおかしいですし種族ルシファーってあの聖書のですよね...?」
「あぁ、よく聞くあのルシファーだな。」
「それにHPとMPがSSSってどういうことでしょうね...現在確認されてるだけでもSランクなのに...それにとんでもないスキルの数もありますし...」
「まぁなんていうか俺も生き返ったらこうなってたから正直よくわからないんだよな。」
「それにしてもこんなステータスしてたらあれだけ圧倒的な戦闘にもなりますよね...それに生き返ったらもよくわかりませんし...」
「俺もなんでこうなったのか全くわからないんだけどな。それでも生き返ったことに感謝して俺は生きてくってことにしたんだ。それにそんなに遠くない未来でマスターたちに会えるみたいだしな。」
そうなのだ。俺は何で選ばれたのか。なんでこんな特異なステータスになったのかなにもわからないまま俺は生きているのだ。いや、復活させられたのだ。しかしせっかくこんなに強くなったのだ。能力に振り回されないように精一杯生きて世界がある程度平和になった後田舎で隠居暮らしするのも悪くないのかもしれない。
「あなたはこの力をどのように使おうと考えているのですか?」
「あぁーそうだなぁ。とりあえず地球の領域を取り返すことに使ってくかな。そのあとは田舎に家でも建てて隠居生活でも楽しむことにするよ。」
「そう...ですか...それならひとまず安心です。その考えが変わらないことを祈っています。」
アメリアはどこか不安そうな顔をしたままはっきりしない言葉で俺に視線を向ける。
俺はそれに何とも言えない気持ちになりつつ店をでることにした。