19話 春鈴
大国の審問会が終わった後、言われた通り外に行くと外に金髪ロングに蒼の瞳がよく似合う女性用スーツを着た外国人女性が赤い高級車の横に立って待っていた。
「お前が俺の秘書か?」
「お待ちしてました。私はアメリアです。詳しくはお車に乗ってからお話いたします。」
と、アメリアはきれいな笑顔で俺に車に乗るように促す。
俺は助手席に乗りアメリアはそれ見てから運転席に座りそのままベルトを締めてアクセルを踏む。
俺は外の景色をぼーっと見ながらアメリアから声をかけてくるのを待つ。
それにしても外の景色はかなり変わったなと改めて俺は思う。
ほんと近未来的世界になった。それに武具を持っている人たちもちらほらといる。たまに少し強そうなやつもいてそいつの持ってる武器はどうやら魔力が込められているようだ。
俺はふとビルに投影されている広告?のようなものが気になり見てみる。
そこにはS級ハンター特集とかいうのが行われていた。
俺に当然見覚えがあるはずもなくしばらく知らない男女のインタビュー映像が流されている。
最後の一人になったときに俺は見覚えのある人物が流れる。
見覚えのある長い黒髪、凛とした目、侍の装備。
そう。それはマスターだった。
「なっ!?マスター!?」
「あぁ!茜さんのことですね。彼女はいまS級ハンターとして最前線でダンジョン攻略に勤しんでるんですよ。」
「おどろいたな...まさかそこまで強くなるとはな...」
「そういえばノワールさんが契約していたそうですね。」
「あぁ。あの時は種族進化の条件だったから。契約することにしたんだ。まぁ今となってはもう必要ないものになったんだけどな。」
「種族変化は選ばれた種族しか起こらないはずでは...?」
「はははっ...そんなわけないだろ。みんな平等に条件さえ満たせば発生するものだ。そんなことよりまずはこの街の説明をしてくれ。」
「あ、そうですね。まずこの街は『春鈴』と言います。10年前のある日地球にダンジョンとモンスターが訪れました。そしてその日今までの地球は崩壊しました。あの出来事は世界崩壊と呼ばれています。世界統合後にこの街は日本で最先端の科学力で作成されました。今で北海道、東京、大阪、沖縄に春鈴のようなセーフゾーンが出来上がりました。次にハンターですが、ハンターとはダンジョンなどでモンスターを倒し魔石を回収して売却する人たちのことです。今のインフラは全て魔石が基本になっています。モンスターごとに魔石にもランクがありSが一番高く売れて安いのだとIになりますね。」
「漫画みたいな世界観だな。」
「えぇ、私もそう思います。そしてハンターたちの一番の目標はダンジョンを攻略して人間の陣地を取り戻すことです。この後行きますが現在の分布はハンター協会などで確認ができます。」
「へぇ、それは俺もハンター登録しないといけないのか?」
「そうですね。ですが戦闘ではなく生産メインのジョブの方もいるのでハンター登録しても以前と変わらないような生活をしている方もいらっしゃいます。ですがステータスは全員平等に与えられたものですから。全員ハンター登録は義務化されています。」
「なるほどな。大体理解できたよ。」
「いえ、ではハンター協会に行く前に先にスマホを買いに行きましょう。連絡が取れないと不便ですから。」
「ふーん。俺は別になくてもいいけどな。」
「いえ、私が連絡取れるようになっておきたいのでこちらのわがままですがお願いいたします。」
甘えた言い方で俺にお願いをしてくる。こいつドライアドなんじゃないのかっていうくらい正直色っぽい。
なのになぜだ。心が全く踊らない。これも俺が悪魔になったせいなのか?
「まぁそういうことなら従うか。」
「ありがとうございます。」
その会話の後スマホショップに寄り俺は車の中で待機することにしアメリアだけスマホを買いに行く。
10分くらいで戻ってきたアメリアは俺にスマホを渡してくる。今まで見たことない会社だったがまぁ使い方も昔とあんまり変わってないみたいだし使い方に困ることはないだろう。
「一応最新機種を買っておきました。私の番号を追加しておきましたので困ったことがあったらご連絡ください。」
「あぁ、分かった。」
「それではこれからハンター協会に行きます。すぐ着きますが軽食などは必要ですか?」
「いや、特に必要ないな。しいて言うならタバコが欲しいくらいだな。」
「そういえば収容中も一切食事は取っていなかったそうですが食欲などはなくなったのですか?」
「俺は人間じゃないからな。」
「そうですか。煙草も吸いたかったら吸っていただいて構いません。煙も気にしませんので。」
「そうか。じゃあありがたく。」
俺はアメリアの言葉を聞いて窓を開けて煙草に火をつける。いつも通りアイテムボックスから取り出したのだがアメリアは一瞬驚いた表情をした後少し恥ずかしかったのかすぐに表情をもとに戻す。
「今空中から取り出していませんでしたか?」
「あぁ、俺の固有スキルだ。お前にだから見せてやったんだ。大国に報告するのはいいが誰彼構わず吹聴するのはやめてくれよ」
「えぇ、もちろんですよ。」
「言っとくけど俺は悪魔だ。口約束も契約になるからな?」
「えぇ。問題ありません。」
「まぁ冗談だ。」
全く表情の変わらないアメリアに俺は少し飽き飽きしそのままタバコを吸いながらまた外の景色を見続けることにした。
15分後にでかいビルについた。入口は広く人もあふれており活気にあふれていた。
「ノワールさん。着いてきてください。」
アメリアに促され俺はアメリアについて中に入っていく。
中には受付やパネル操作ができるスクリーンみたいなところで考え込んでる団体もいたりする。
俺はエントランスを通り抜け奥の部屋に案内される。
アメリアがドアを開けどうぞと促し俺が中に入ると中には5人部屋の中にいた。
服装なども相まって俺を尋問するハンターなどには全く見えない。
男四人に女一人なのだが全員俺の顔を見てポカーンとしている。
アメリアはそんな彼らを気にも留めず椅子を引き
「ノワールさん。ここにお座りください。」
と、女の横の席を指す。
俺は何が何だかわからないままとりあえず座りぽけーっとまつ。
すると、隣にいた女が俺に声をかけてくる。
「あ、あの...すみません...あなたは御曹司の方とかなんですか...?」
「はい...?いや、御曹司でもなんでもないけど...」
「あ...そうだったんですね...アメリアさんが丁寧に接してらっしゃったのでどこかのお偉いさんかと思っちゃいました。あ、私は冬野 雪って言います!」
「あぁ、そうなんだ。俺はノワール・ルシフェルだ。」
「あ、外国人の方なんですね!日本語お上手ですね!」
「いや、俺は日本人だ。」
「あれ?でも名前横文字ですよ?」
「いろいろあるんだよ。」
俺たちがそんな雑談してると前に座っていた男組の中の一人が俺に声をかけてくる。
「おいおい。さっきからうるせえぞ。ガキの集まりじゃねえんだ。黙って待っとけや。」
「す、すみません。えへへ...怒られちゃいましたね...」
「いや、無視でいいんじゃないか?」
「無視はさすがに...」
「おいおいおいおい。まさか何するのかも知らねえでここにきてんのか!?」
「あぁ、アメリアにかってにつれてこられただけだからな。」
「つーかなんでお前ごときのさえない男がアメリアさんと一緒に来てんだ!?あぁ!?」
「いや、俺に聞くな。」
と無駄に突っかかってくるバカが叫んでるとアメリアと大国が部屋に入ってくる。
「すまない。みんな待たせたな。少し用事があってな。さっそくだが今回のハンター試験を始めさせてもらう。全員まとめて移動するので私についてきてくれ。」
どうやら俺は急にハンター試験とかいうのをやらなきゃいけないみたいだな。
面倒くさいな...