17話 目覚め
俺は何もない暗闇で目を覚ました。
いや、目を覚ましたは適切な表現じゃないかもしれない。
なぜなら俺の目には今なにも見えていない、周りを見てみようとしても何も動かない。
それに手足の感覚もない。これが死後の世界なのか。
どこからか爽やかな青年の声が聞こえてくる。
「よぉ、継承者!」
継承者?どういうことだ?ていうか誰なんだ?
「あぁ、そうか。今喋るとかなんもできないんだな。悪いんだけどそのまま聞いてくれお前はあの少女に殺された。まぁ死んだのは肉体だけで魂は俺が引っ張り出してやったから安心しろ。俺様に感謝だな!!!」
魂だけ引っ張り出すとかそんなこともできるんだな。やっぱ魔法ってすごい力みたいだな。
「ていうか...あのロリババアに殺されるってお前なかなか面白いやつだな!」
青年はそう言いながら大爆笑している。
まぁ、俺程度が勝てる相手じゃなかったから仕方ない。
「はぁ、笑った笑った。兎にも角にもお前は一回死んじまった。まぁその死がトリガーで今回お前には大大大ボーナスが来たわけだが...俺様の力をお前に完全に移すこと準備ができるようになったのだー!」
だから継承者ってわけか...まったく意味が分からんな。
「あぁ、そういえば名乗ってなかったな。俺様はルシファーだ!とはいっても今はただの認識として存在してるだけだがな。お前の称号に原初の悪魔というスキルがあっただろ?それは俺様の力を引き継ぐ見込みがあるものだけに与えられる称号でな。それを使ってお前に力を授けてやる。ついでに肉体も俺様の力向けに改造して復活させてやるから感謝したまえ!」
つまり俺は生き返るってことか...?まだあきらめなくていいってことなのか...
「まぁ目覚めにどのくらい時間がかかるかわからないが遅くても10年くらいで蘇れるだろう!感謝したまえ!」
俺の声が届かないのが悔やまれるくらい俺は今喜んでる。
「ではな、継承者よ。俺の力を持って目覚めるその時をしかとまっているぞ。」
俺はその声を最後にまた意識を飛ばした。
『マスター、起きてください』
どこからか声が聞こえる。
『マスター!!!』
俺はその声で急いで体を起こし周りを警戒する。
「ハナか?」
『そうです!マスター!』
「ここは地球か?」
『その通りです。』
俺はその言葉に耳を疑った。
なぜなら俺のいる場所はあの少女に殺されたダンジョンの中ではなくまず外で回りの景色は廃墟のようになっている。スラム街のようだ。
俺はすぐに空を飛ぼうと背中に意識し羽をはやす。
そうすると俺はまた驚く。以前までの羽は蝙蝠のような悪魔の羽だったが今は黒い天使の羽のようになっている。それによく見たら肌の色も人間の色に戻っている。しかし俺は先に気になるものを確認するために空中に行く。
俺は新しくなった世界に動揺を隠せない。なぜならそこにはコンクリートの壁が何かを囲うように出来上がっていたからだ。
「おいおい...俺は一体どのくらい意識を失ってたんだ...?」
ルシファーに助けてもらったこの命。10年くらいで復活すると言っていたが本当にそれしか経っていないのか少し不安になる。
『マスター?大丈夫ですか?』
「あ、あぁ大丈夫だ。俺はどのくらい寝てたかわかるか?」
『すみません...私も先ほど正常に稼働し始めたばかりなので...周りの建物などから情報をとればある程度はできると思います!』
「お前そんな便利機能あったのか?」
『できるようになりました!』
なるほどな。これが継承した力の一部なのかもしれないな。
いったんステータスを見てみるか。
名前:ノワール・ルシフェル
年齢:???
種族:ルシファー(固有)
LV:???
職業:???
称号:原初の悪魔 堕天使 反逆者 蘇生者
HP:SSS
MP:SSS
固有スキル:吸収 アイテムボックス 魔眼 ラプラス ドラゴンブレス 魔力の支配者 武神 王威圧 完全鑑定 闇纏
「ま、まじか..知らないスキルがかなり増えてるみたいだな...一個一個見ていくか。」
魔眼:あらゆる魔眼が使える。
ラプラス:あらゆる状況への解析ができる。
魔力の支配者:魔力を直接使い魔法の行使が可能となる
武神:あらゆる武器の使用が高水準で使用が可能になる。
王威圧:自分と同等までの相手を怯ませることができる。
完全鑑定:あらゆる情報を看破することができる。
闇纏:闇に紛れ姿を完全に消すことができる。明かりのある所では使用不可。
「な、なんだこりゃ...こりゃチートだな...」
『ですね...私もラプラスというスキルに統合されました!』
「だから前より意識みたいなのをはっきり感じるのか?」
『恐らくそうですね!自分が生まれたばかりのような感覚を感じます。』
「つーか体は治っても俺の服装は治ってないんだな。」
『せっかくですし魔法で使ってみるのはどうでしょう?前までのマスターなら難しかったですが今のマスターなら可能です!』
「どうやればいいんだ?」
『以前と同じ感覚で魔法を使えますが今回が空気中に漂う魔力を使いましょう!魔力を支配下に置くと実体化できますがそれを服の形に固定してみましょう!』
「なるほどな。わかった。」
俺は死ぬ前と同じ感覚で魔力を使うことにする。
その瞬間俺の周りを漆黒の魔力が俺の体を覆い魔力の嵐が吹き荒れる。
その魔力はだんだんと形をとっていく。それに伴い魔力の嵐も収まっていき漆黒の魔力は和服の姿となる。色は黒だ。どうやら俺のカラーは強制的に黒になっちまうらしいな。
「中々、便利だな。」
『よくお似合いです!マスター!』
「照れるだろ~。まぁ、そんな茶番はさておいてさっさと周りの建物とか鑑定してみるか。」
俺はそこから周りの建物は人間の死体に鑑定を使っていく。
そこで俺はよおうやく知ることができた。俺が死んでからぴったり10年経過していることを。
「おいおい、まさか人間はたった10年であの壁を作り出したってことなのか...?」
『人間の成長は目覚ましいものがありますからね!』
「エレスの言ってた世界がこんな簡単に出来上がるなんて俺みたいに力を授けられてる存在がいるのかもしれないな。」
『私は嬉しいですよマスター!前はマスターが意識したときのみ私はものを見れたのですが今は自由に見ることができます!とてもうれしいです!』
「そうか...お気楽な事だな...ん?なんかもうスピードでこっちに来てる集団がないか?」
『はい!数は3匹ほどですね!それなりに練度もありそうですね。』
「あぁ、さすがに10年も経つとゴブリンよりまともなモンスターが出てきたみたいだな。」
俺は羽を生やしたまま空に飛びその場で強者感を出すため魔力を使って漆黒の羽を空から降らせてみる。
「どうだこの演出。中々良いだろ?」
『マスター前よりもお気楽な性格になりましたか?』
「まぁそう言えるな。っと来たか。」
ようやく来たようで俺は新しいモンスターにワクワクを隠せずにそちらに振り向く。
そこにいたのはモンスターじゃなく人間だった。具体的にいうと人間族らしい見た目したのが三人と獣人族が二人だ。
人間族は男の黒髪、男の青髪で武器はアックス、ガントレットだ。
一人は獣人族で女の猫のようだな。
それにしても獣人は初めて見たな。正直かわいらしい。俺は動物が大好きなのだ。
モフモフしてそうだなと俺が眺めていると黒髪の男が俺に声をかけてくる。
「貴様!ここで何をしている!先ほどの不気味な魔力は貴様か!」
な、なんだこいつ偉そうだな。それにしても不気味な魔力ってあれか?
服を着るのに使った魔力のことか?俺が考えてると黒髪がまた声を荒げる。
「おい!!!聞いているのか!」
「ん?あぁ、聞いてるぞ。あれだ。単純に服を着るために魔力を使用しただけだ。」
「何を意味の分からないことを言っている!!!尋問のため拘束する!降りてこい!」
「は?なんで俺が尋問されなきゃいけないんだ?意味の分からん。」
「次の警告で素直に同行しない場合武力行使も厭わない!さぁ、来なさい!」
「ん~、そうだな。返事はこうだ。い、や、だ!」
俺はそうにっこり笑った後静かに地上に降りる。それも両手を軽く広げながらだ。
そして地面に降り立った瞬間、猫の獣人の姿が消えガントレットを付けた男の子が俺に向かってもう突進してくる。
「はぁ!」
男はこぶしでの連撃を繰り返した後俺のあごに蹴りを入れて距離をとる。
俺はあえてすべての攻撃を受けてみた。だがしかし俺には全くダメージがなく俺はその場で首をこきりと鳴らす。
「悠馬!下がれ!」
悠馬と呼ばれた青髪はその声を聴いてすぐに下がり先ほど偉そうに命令してきた男がアックスを頭の上に構える
「クラッシュアックス!!!」
と男が叫ぶと体と武器が赤く光りそのままアックスを振り被る。
かなりの力があり砂ぼこりが激しく舞う。しかし俺の体には少しの傷も入らず、
「ふわぁ...」
ついあくびが漏れてしまう。
「き、貴様ァーーー!!!」
男は激高したようで無駄な攻撃を永遠に繰り返す。俺はそれに途中で飽き振り被ってきたタイミングでアックスにデコピンをする。
すると空気を裂くような音が響いた後アックスが壊れそのまま男は風圧で意識を失ってしまった。
「なにしたいんだこいつ...」
そうつぶやいたあと、パーンと乾いた音が響く。それは銃声のようだった。
俺の頭目掛け銃弾が飛んできた。どうやら魔力も多少込められているようだった。
しかしそんな攻撃も聞くはずなく俺は気にしないで男を起こす。
「おい、起きろ。」
そういいながら俺は男をゆする。しかし全然起きない。
しかもその間も背中を殴られたり銃弾が飛んだ来たりしている。
なにやら言い争っているようだ。
「彼も巻き沿いになるが仕方ないだろ!!!」
「駄目だよ!大悟も大事なパーティーメンバーじゃない!!!」
「しかしあのモンスターをここで逃すことのほうが危険だ!!!人間の言葉も理解できるモンスターなんて今までいなかったんだ!」
「で、でも...」
「いいから俺の言うことを聞け!」
「わ、わかった...」
なんて不穏な会話だ。おかしいな。俺は今、肌の色的に人間と変わらないはずなんだけどな...
「おい、お前。なんかお前殺されそうだぞ~。起きろ~。」
「ん...あ、あぁ...」
「お、起きた。ほれ、あっち行け。」
男は意識を取り戻した後逃げるように仲間のもとへ駆けていく。
その後俺に魔法が飛んでくる。それは初めて見る雷魔法だった。
「おぉ!!!魔法じゃないか!!!」
俺はそれを体で受けてみる。なぜなら自分の魔法防御力を確かめてみたかったからだ。
しかし拍子抜けだった。なぜなら体が少ししびれるとかそういうこともないからだ。
「残念だ...この10年で多少強くなったのかと思って期待してたのにな...」
その間もずっと魔法と銃弾が飛んでくる。
俺は煩わしくなりあの言葉を唱える。
「喰え」
その瞬間俺の影が大きな口になり飛んでくる魔法を喰い荒らし始める。
一人のわりに結構魔法の数が多いのは嬉しいのだがそれだけだ。感覚でいうとコバエが周りを飛んできてうざいみたいな感じだ。
「なぁ、もう終わりでいいか?」
「そ、そ、そんなわけないだろ!」
「これ以上時間の無駄だろ。何ができるんだ...」
「だ、黙れ黙れ黙れ!!!」
「うるさいな。あまりうるさくしないでくれ。目覚めたばかりでまだ眠たいんだ。」
俺はそう言いながら『王威圧』を使う。
その瞬間人間たちは全く動けなくなったようでそのうち立つのもしんどくなったのか地面に這いつくばる。俺はそれを見てゆっくり歩いて近付く。
「おい、もう一度聞くぞ?もう終わりでいいか?」
俺はなるべく笑顔で聞く。
しかし青髪は俺の笑顔を見て意識を失ってしまった。
「失礼な奴だな。」
俺はスキルを解きどっかに言った猫たちに声をかける。
「おい、猫、出てこい。」
「は、はい!!!」
そういいながら猛スピードで敬礼しながら出てくる。
「もういいか?俺はさっさとあの壁の向こう側に行きたいんだが。」
「え、えっと...モンスターを入れることはできない!であります!」
女は汗をだらだらにしながら俺にこたえる。
「俺にお前らの都合は関係ない。今回は殺さないで見逃してやる。さっさとお仲間を引き連れてあの壁の向こう側に行くぞ。」
「き、拒否権はありますか...?」
「ん?なんか言ったか?」
「い、いえ!!!何でもないであります!!!」
俺はアイテムボックスに入れていた紐で男たちをぐるぐるに囲みそのまま引きずっていく。
目覚めてすぐにこんなことになるなんて最悪だな。
「マスターが無事見つかればいいんだけどな...」
俺はようやく当初の目標を思い出し10年前契約したマスターたちのことを考えていた。
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