13話 悪魔崇拝
茜の案内のもと、避難所の中を見て回る俺たち。
定期的に人とすれ違うがそのたびに「ノワール様」と崇められる。
正直すこし面倒だ。俺はさっさと夏美と茜を連れ出しダンジョンとやらに行ってみたいのだ。
それに俺はここを出た後、茜たちと行動するつもりもあまりないんだよな。
「それでここが荒田さんに寝泊まりしてもらう部屋です。」
と案内されたのは三階にある洋服店の従業員室だった。
「まぁ、なんていうかその...寝やすそうな場所だな。」
「えへへ...私もここで寝泊まりしているので同じ部屋になりますけど大丈夫ですか...?」
「は!?お前言ってる意味わかってるのか!?」
「は、はい...!荒田さんが一緒なら安心して眠れるなって思ったので...」
「い、いやお前がいいならいいんだけどな...こんな見た目だが俺も一応男だからな。今回はいいが気を付けてくれ...」
「大丈夫ですよ!荒田さんですから!」
こいつのこの信頼はどこから生まれてるんだろうな。
魅了眼でも知らないうちに持ったのか?
「俺は少しステータス確認してくる。何かあったら大きい声で呼んでくれ。」
「あ、はい。わかりました。
俺は店先の通路で煙草に火をつけながらステータスを確認する。
名前:荒田 翔
年齢:22
種族:悪魔族
LV:7
職業:侍
称号:原初の悪魔
HP:600
MP:500
通常スキル:隠密 不意打ち 鑑定 索敵 闇魔法 危険察知 身体強化 棒術 噛み付き 威圧
特殊スキル:明鏡止水 拳王
固有スキル:吸収 アイテムボックス 支配の魔眼 石化の魔眼 悪魔返り 魔の探求
ん?俺モンスター殺してないのにレベルが上がってるな。
あの探索組との戦闘の結果か?
『その通りです。鍛錬でもレベルを上げることは可能です。しかしレベル上げるよりもスキルの入手のために鍛錬するのが基本です。」
と、ハナが説明してくれた。
さっきまで気を使って声をかけてこなかったから助かるな。
あぁ、そういえばハナ。称号を複数個つける方法はないのか?
『あります。種族進化を果たすと進化の数に応じて一個ずつ付けれるようになります。』
また知らない単語だな。種族変化ってなんだ?
『あなたは現在悪魔族ですが進化すると爵位が付くようになります。進化の条件は人によってランダムですがマスターの進化に必要なのは一定数以上の魂を食べることです。』
魂を食べる?吸収するのでもいいのか?
『その通りです。』
なるほどな。ならここから脱出したらダンジョンに向かってそこで種族進化目指すことにするか。
そうすりゃ、称号も多く付けれるみたいだしかなりありがたいな。
俺はステータスの確認が終わった後、チラリと下の階を見下ろす。
すると、母親に抱きかかえられた男の子が下から俺に向かって手を振っていた。
俺は何となく気恥ずかしく思いながらも手を振り返した。
「......別に特別な感情はないが救える範囲は救ってやらないとな...」
「センチ...メンタル...?」
油断していると後ろから声を掛けられる。
振り返るとそこには夏美がいた。相変わらず愛くるしい見た目で少しきゅんとしてしまうが明鏡止水がすぐに俺の心を落ち着かせる。
「なんのようだ。確か夏美だったか。」
「ん...あなたがみえたから来てみただけ...」
「何言ってるんだお前。変わってるな。」
俺はそう言いながら日本目の煙草に火を付ける。
「先ほどのお前とマスターの会話だが...お前はどうするつもりなんだ?」
「まだ...決めてない...正直逃げ出していいのか...わからない...」
「そうか...まぁお前もマスターもまだ若い。悩むのも成長の糧だ。したいようにするがいい。しかしそれで自分のしたいことをできなくなるなんてことがないようにな。」
「ん...わかった...ありがとう...ノワール様...」
「様付けはやめてくれ...俺はただの悪魔だ...」
俺はそれだけ言い残してたばこの火を消し寝室に戻る。
なんか後ろから夏美が付いてきてるけど気にしなくていいか。
「マスター戻ったぞ。」
「おかえr...あれ?夏美?」
「二人...一緒の部屋...?」
「うん!ノワールがいると安心だからね!」
「そう...わかった...」
夏美はそれだけ言い残して寝室から出ていく。
「あいつは何がしたいんだ?」
「わ、わかりません...昔から不思議な子だったので...」
「昔馴染みなのか?」
「はい!小学生からの同級生で高校も一緒なんです!二人で夜中まで電話してて学校帰りにモクドナルドで新しいデザート食べようなんて話してて...けどこんなことになっちゃって...なんていうか散々です...」
「そうか。まぁあまり落ち込みすぎるな。それにな、今はこんな世界だがどうせすごい奴がこの先世界を立てなおすさ。お前もまたいつかちゃんと笑顔で楽しい世界になるよ。
「そう...ですよね...!クヨクヨしてちゃダメですよね!ありがとうございます!少し元気出ました!」
「それじゃしばらく俺は寝る。なにかあったら起こしてくれ。食糧配給の時間までには起きるようにするよ。」
俺はそう告げ部屋の奥の壁に背を預け胡坐をかく。そして俺は腕を組んで目をつむって眠ることにした。
いつかインフラが治ってあふれるモンスターもいなくなるといいんだけどな。