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鄧家源の観音岩

(初めての作品なので、誤字脱字などがあると思います。)

新春が過ぎ、暑さが訪れた夏の中華南東。主人公の趙は友達と遊びにいくも…

瀘渓の春は山麓より一足遅く、春天の終わりに不屈の岩々がその恐ろしい頭角を現す。弾道のように速く流れる雲が去った後に見えるのは壮大な武功山の峰々である。


 この時期に私は大切な友人を失くしたことを覚えている。確かもう50年前になる、私と友人は爽やかな少年であったことを覚えている。二人で滝壺の下冷たい水にぬれたことを覚えている。その時のことを思い出すと空しくなってくるが、気づいたときには思い出すことを辞められなくなる。今もその滝壺にときおり訪れて時間を過ごすことがある。その時も忘れられない「おい、それはないだろ」という言葉が過る。


13歳の僕は父の大事な黒くくすんだ骨董品を割ってこっぴどく怒られていた。少年だった私に反論できるはずもない。私は苔のような鮮やかな緑の映える谷の反対側にある友人の家に全力で走った。その日もひどく暑かったのを覚えている。

「袁‼」

私は大声で彼の家の中に響き渡るように彼の名前を呼んだ。しかし家の中にはいなく後ろを向くと彼は畑仕事をしている所を見つけた。

「お前、かなりまじめだな。」

「そんなことしてないで、専ら今日は遊ばないか?」

私は彼によくこんなかんじで声をかけていたことを覚えている。

「ちょっと、これ運んでからいくわ」

彼は大きめの荷物を指さしてそう答えていた。彼からしたらすぐ支度をした方であろうが、そのとき私は暑さに耐えることが精いっぱいだったのか、それともそれが最後に彼を遊びに誘うことだったために、長く感じたのだろうか。

私は支度を終えた彼とともに林の緑の中に飛び込んだ。

「いく当てもないのによくそんなに早く走れるよね。」

彼はそう言いながら私についていく。

「そうだ、谷の方いって、いつもの滝壺に行かない?」

私はそう提案した。

その滝壺というのは白龍瀑という急流の滝の下にあるもので、その時は名前があることなんて知らず、ただ無邪気に遊んでいた。

私たちはどちらが木を速くだの、坂を上がれるだの競っていたが、しょっちゅう嫉妬したりして喧嘩になっていた。しかし深い友情ではいくら喧嘩しても最後は仲直りすることが理である。

「もう疲れた...」

そう私がささやいたとき、既に夕方になっていることに私は気づいた。私たちは急いでの山をかけて家に帰ろうとしたが、途中であたりは暗闇に囲まれてしまった。私たちはいつも武功山という大きな山を目印に帰っていたが、今日はもう霧に囲まれて帰れなくなっていた。

「俺は野山の慣れてるし、親もおれのことなんか気にしないだろうから、ここで寝たい。」

俺はそう言ってしまった。彼もコクりと不安げに頷き横になった。そこには大きな観音岩と呼ばれる岩があり、普通であれば大きな石が日光に照らされて美しい背景の林に生えているが、そこは不気味でしかない夜の闇だった。

「おやすみ、明日はもっと上にいってみない?」

「え?」

「怖いよ...」

「大丈夫だって、山頂からは村まで見渡せるって父ちゃんがってたし、迷子になんかならねぇよ」

これが私が最後の彼に発した言葉だった。


朝になるとそこには一面林が広がっていた。山頂は橙色に照らされ緑の林は美しくなびいていた。

「袁がいない...」

確かに当たりを見渡したがそこに袁の姿はなかった。最初はどっかに隠れているのかとおもい、岩の反対側も見てみたみのの、どこにもいなかった。

「おーい!」

私は大きな声であたりに叫んでみたが、むしろ獣の気配もなく、不気味な風の音だけがなびいていた。

さすがに大丈夫かな...

心配になり小一時間ほど待ち続けたが彼の姿はなく、親に連れ戻されたか心配になって帰ったんじゃないかと思った。

私は彼を探しもせず、自分ひとりで村に帰った。

「ただいま」

そういうと、父は

「お前の友達は?」

そう問った。

「知らない、一緒に岩の上で寝てたけどどっか行ったみたい」

「多分俺より先に帰ったからもう家にいると思うよ。」

「父さんはお前とお前の友達のことが心配で夜中に当たりを探しまわっても見つかんなかったんだ。」

「お前らはどこにいってたんだ」

「父さん、俺観音岩の所で寝てたんだ」

その瞬間、バン!という大きな音とともに、頬に父の手が当たった。

「ゴメン...」

自分で考えるより先に謝罪の言葉が出てきた。

「俺だって」

そういおうとする前に父はニ回に上がってしまった。

私はもう一度彼に会いに行くために彼の家へと走った。

私が彼の家に行くと、私が話しかける前に彼の祖母に

「昨日から坊はいないよ」

「あんたも知らんのかい?」

とても和やかな場面だったが私からするととても衝撃的な展開だった。

 それから丸三日が経っても彼は村に帰ってくることはなかった。とうとう村の大人たちは本格的に捜索を初めた。最初、大人たちは山の反対側にある大坪というところに行ったのではないかと探したが彼は見つからなかった。私もその三日間は村長や近所の大人に責め立てられ続け、いっそのこと彼と一緒にどっかに行けばよかったなんてさえ思った。

「見つけたぞ!」

そんな大きな声が村中に響き私は歓喜のあまり外に飛び出したが、彼の頭の上には布がかぶせられ一瞬にして外の世界は闇へと変わった。

村の人だかりの中にいることも家の中にいることもできず、村を飛び出した。私はいくあてもなく東へひたすら走り続けた。

最初はだれか追ってくるかとも思ったが、私のことなど誰も気にしていなかった。私は日が暮れるまでにひたすら走り続けた。走って、走って、私は次に日が明けるときに大きな街の中にいた。

自分でもどこなのか分からなかった。

私は帰ることを決心し走ろうとしたが、疲れて何もできなかった。すぐ前では食べ物が取引されているのに私は空腹に耐える一心で眠り続けた。

「坊だいじょうぶや?」

声をかけてくれた相手に驚いた、それは友達の婆だった。婆は私は村が出ていく所を見て勘だけで私を見つけて見せた。私は村に帰ったが、それ以来誰も口をきいてくれはしなかった。



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