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月夜譚 【No.301~】

旅行準備 【月夜譚No.318】

作者: 夏月七葉

 数年振りの旅行に胸が高鳴る。年に数回の仕事の出張は気分が落ちて仕様がないのに、プライベートとなるとこうも違うものなのかと自分でも驚く。

 キャリーケースに詰め込むのは、気に入りの服と新調したトラベル用の化粧品や洗面具、以前買ってまだ使っていなかったタオル。モバイルバッテリーにガイドブック、それから道中で食べるお菓子も幾つか。

 彼女は鼻歌交じりに準備をしながら、現地に着いたら何をしようと思いを馳せる。

 観光地を巡りつつ美味しいものを食べてお土産を買い、宿ではのんびり名産品を使った夕食を楽しみ温泉に浸かる。

 きっと素敵な旅行になる。写真も沢山撮って、思い出をいっぱい作ろう。

 スマートフォンの着信が鳴り画面を見ると、一緒に旅行へ行く友人からのメッセージだった。彼女は頬を緩め、一度手を止めて画面に指を滑らせた。

 非日常に足を踏み入れることは楽しみだ。しかし、それよりももっと心躍る楽しみがある。

『学生の頃に戻ったみたいに、旅行、楽しもうね』

 久し振りの友人との再会。その喜びを文字に乗せて、軽い指先で送信ボタンをタップした。

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