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パーティ当日
殿下からは前もって豪華なネックレスやイヤリングが届いた。
そして私の部屋に侍女が数人やってきて、あれよこれよとドレスを着せられ、髪を結われ、メイクをしてくれた。
左側にゆるく編んだヘアスタイルに、真っ黒な生地にキラキラと宝石が光るドレスだった。
前もってルイ殿下から、黒で合わせていこうと言われていたので、多分殿下も黒いジャケットを着てくるのだろう。
集合時間になり、待ち合わせ場所にいくと、殿下はやはり黒いジャケットでモノトーンな印象だった。
「今日は宜しくね、フォーブス嬢」
しっかり私の手を取り馬車に乗せてくれる殿下は流石としか言い様がない。
馬車の中で、仮面を殿下に付けられた。
目の周りだけを覆う軽いものだが、羽なので装飾されている黒と金の仮面。
似ているデザインの物を殿下も装着する。
サイラス公爵家につき、並んで中に入る。
全体的に明かりは最小限の薄暗い感じで、仮面舞踏会のような感じなので、当たり前だがみんな仮面を付けていた。
シャンパンを持ち、壁の方へ紛れ様子を見ていると、異様にハイテンションな人達がチラホラと見受けられる。
「少し待っててね」
殿下はそのテンションの集団の方に近寄って行った。
私は本当に待っていていいのだろうか。
「おねぇさーーん、1人で来たの?僕とお話ししましょ?」
声が高めな男性が話しかけてきたので、情報を仕入れなきゃと相手をする。
「ここだけの話しなんだけど、とっても気持ちが良くなるサプリがあるんだ」
「俺の彼女と会話をしていてくださり、ありがとう」
例の薬の話しまできたところで、ルイ殿下が戻ってきて、私の腰に手を回す。
『チッ、男連れかよ』なんて言いながら情報源は離れていってしまった。
「ありますね、例のもの。」
殿下に着いてきてと言われ、会場を後にして裏の部屋に着くとノックをした。
どうぞー、と中から声がして入るとサイラス婦人がいた。
テーブルに置いてある薬のシートを目で確認した殿下は、近くにいたガタイの良い護衛のうなじを殴り気絶させた。
「こんばんわ、サイラス公爵夫人
ロイ・カルロスです」
挨拶をしながら仮面を取ると、売買しているサイラス夫人と男性客は息を呑む。
「ま、待ってこれは睡眠薬よ?」
「調べてみればわかりますね」
チッと舌打ちをした夫人が手を叩くと隣の部屋に通じるドアから武装した兵数名が入ってきた。
殿下の前に移動し、ドレスをめくり短剣を手にとり応戦した。
殿下は今日は剣を持ち合わせていないので今回も素手での応戦だが、バッタバッタと敵を倒す。
逃げようとする婦人を捕獲しようとした殿下に、テーブルの上にあったグラスを婦人が、かけようとしたのが見えて『殿下!』と私は前に出てグラスの中の液体を顔面に被ってしまった。
その隙に殿下が夫人を拘束、待機させていた騎士団に夫人の身柄を渡した。
こうして何事もなく解決したかに思えた事件
帰りの馬車に乗り込み疲労で疲れ切った身体
だが、何かが変な感じがした。
城に着き眠ろうとするも寝付けず、体が熱い。
そして喉が異常に乾く。
水を飲みに行こうとするが、体が思うように動かず歩くこともままならなくなった。
「ハァハァ.....」
荒い呼吸のまま、壁づたえに歩き殿下の部屋へ向かう。
まだ執務室の明かりがついている。
「ル...イ........」
目眩で視界が歪む中なんとか執務室まで辿り着いた
「マリア??だれかー!至急医者をよんで!!」
『大丈夫だから』と繰り返し言ってくれてた様にも思う。そこからは記憶が抜けている。
殿下がベッドに運んでくれたのは薄ら記憶にある。
目を覚ました私は自分のベッドではなく、殿下のベッドで眠っていた。
まだ身体が重くてだるい感覚が残っていたので、呼び鈴を鳴らした。
「おはようマリア、体調は?」
「まだ良いとは言えませんね」
「......あの液体は原液だったんだ。少しだけど口に入ってしまったらしく、中毒症状になってて....」
『ごめん』とあやまる。絶対に貴方が謝る事ではないし、ルイ殿下を庇うのは騎士として当たり前のことだ。
「本当にあの時、間に合って良かったです
絶対に貴方にはこんな思いさせたくないです」
ニコッと笑って見せれば『俺のセリフなんだけどな』と悲しい顔をさせてしまった。
こんなに強い中毒症状が出たのは原液を口に入れてしまったからであって、出回ってる薬は濃度をとても薄くして錠剤にして販売されいたそう。
なのでここまでの中毒症状は絶対に出ないと聞いて少し安心した。
そして、心配性なルイ殿下に強制的に部屋に閉じ込められ、5日間も静養させられたのだった。