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小さい頃から私は活発な方で、身体を動かすのが好きだった。

物心がついた時には木刀を振り回し、野山を駆け回り、弱い者虐めをする悪ガキ達をしめて歩き、我がフォーブス領には私に逆らう子供はいなくなっていた。


伯爵家に生まれた私だが、自由に育ててもらったと思う、多分両親は後悔しているくらいには。

いつの日にか私にとやかく言うのは諦めたのか『令嬢らしくしろ』だとかは言われなくなり、騎士団へ進む事には驚きもせず、すんなりと送り出してくれた。


騎士団では、私しか女性はいなかった。

打ち合いなどになるとやはり、男性の力には敵わないが、私には速さがあった。

カルロス王国の第二騎士団に配属になり、出会ったこの男、ルイ・カルロスは、この国の王子。


第二騎士団は王子直属部隊なので、私の剣を捧げるお方。


キラキラと光る白く透明な金髪に、アイスブルーの瞳の見目麗しい容姿をしている我儘な役立たず...おっと不敬罪になるところだったわ


「殿下、今日こそこの書類の山をなんとかして下さい!」


ソファに項垂れる殿下に、高く積み上げられた書類の山を指差し頼み込んだ所で今日がはじまる。

この殿下の仕事癖は、やる時は取り憑かれたかのように飲まず食わずやるが、やらない時は本当にやらない。放置。

最近は放置期間が長く、殿下に渡した書類が戻ってこないので仕事が進まない、貴方にしか殿下は扱いきれない、などと頼みこまれたほど。


「殿下がやらないと他が困ります」

「んー、今日は気分じゃないんだよねー」


欠伸をしながら執務室を出て行く殿下を慌てて追う。


「はぁ?いつなら気分になりますか?」

「マリアがデートしてくれたらかな⭐︎」

「?.....デートとは打ち合いの事でしょうか?」


廊下を歩いていた殿下は、立ち止まりため息をつくと『君の頭は剣のことしか考えれないの?』なんて呆れた顔をしながら再び歩き出す。


「お戻りください!」

「マリアが3つお願いを聞いてくれたら、明日は本気で仕事する」

「......はあ、分かりました。言いましたからね」

「やったぁ!じゃあ、最初のお願いは、マリアの今日1日を俺に頂戴?」


この殿下は、やると言った事は絶対やる性格なので、間違いなく明日にはあの書類の山が片付く。

仕方なく、後をついていくことにした。


「せめて護衛をつけてください!」

「マリアがいるじゃん♪」


大丈夫大丈夫♪なんて言い、馬にまたがる殿下に呆れながらついていくと、マザードレス店に入って行った。

一応伯爵令嬢な私だが、年に2度程しかパーティに行かないし、ここより手に入りやすいドレス店で仕立てている。

普段、騎士服ばかり着ているのであまり縁のないお店だ。

仕立てならいつもみたいに王城へ呼べばいいのになんて思っていたら


「あら!ルイ殿下!」

「マザー久しぶり!」

「呼んでくださればお城にいきましたのに!」

「今日は俺じゃないんだよね、この子を俺好みにお願い」


.......今なんと?



「かしこまりました!可憐な令嬢にしてみせますわっ!肌も綺麗だし腕がなるわぁ〜♪」

「普段着10着...パーティ用のドレスも10着....で、たりるかな?」


この人は何をいきなり言っているのだろう


「なぜ私にドレスなのですか!いきなり過ぎます!あと、着る機会がほとんどありません!」

「いいから!俺が綺麗なマリアを見たいんだ。帰ったらちゃんとお仕事が出来るように、ね?」

「仕事と、どのような関係が?」


目鼻立ちが整いすぎている出来すぎた顔で首を傾げながら『お願いっ』と手を合わせて見つめてくる。

もはやこれは武器である。

この男は自分の武器をしっかり把握し、ここぞという時に使える人間だ、罪深い。


「だったら1着で足ります」

「これから着る機会も増えると思うし」


頭を傾げて『なぜですか?』と殿下に問うたが聞こえなかったのか、無視された。


「さっ、こちらに来てくださる?」


奥の部屋に連れていかれた私は色々なドレスを着せられて最終的には深い青のドレスで落ち着いた。


「フォーブス令嬢の髪はまるでスミレの花のようで綺麗ですわね~!」


淡い紫色の私の髪はフォーブス家の主人である父と同じ色。母は桜が咲いたようなピンク色の髪。

軽くお化粧も施され、鏡に映る自分は久しぶりの伯爵令嬢だった。


「お待たせ致しました~!素敵でしょう?」


マザーのあとに続いて部屋からでると、お店のソファに座っていた殿下が立ち上がり口元を手で押えた。


「........可愛すぎて直視出来ないんですけど......」


赤くなり優しく微笑む殿下を横目に、剣ベルトを装着し剣を帯剣する。


「.....本気でやってる?それ.....本当に合わないから」


ドレスアップしてもらった私の腰には剣を装着、ミスマッチにも程がある


「ですが、私は殿下の護衛です、剣が無いと、いざと言う時に困ります!」

「真面目か」


『マリアは俺が護るから大丈夫だよ、これは預かっておくね』なんて言いながら剣を没収され、手を引かれてドレス店を出た。



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