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生徒会の秘密 その3

「簡単な話だよ。考える向きを変えるんだよ。お前はずっと後悔してきたんだろ。だったら次は前を向く番だ。ウジウジと過去を眺めるのを辞めて、前を向くんだよ。」


「...」


「過去を眺めるだけじゃ現状は変わらないし、燻った気持ちは解消されない。現状を変えるのはとても疲れるし、考えるだけでやる気がなくなる。それでもお前が前に進む一歩を踏み出せたのなら、結果がどうであろうとお前は変われる。」


「...そうかしらね。それでも私に雛を助ける資格があるとはやっぱり思えない。」


「まだ言ってるのかよ。しょうがないやつだな。お前は悪くないんだし、それにお前は姫路の友達なんだろ。悩んでるときに友達が相談に乗ってくれれば少なくとも悪い気はしないだろ。」


「でも」


「わかった。お前は何を言っても聞かないやつだったな。なら全部俺のせいでいい。姫路が休んでるのも、お前の後悔も、それにもし説得に失敗しても俺のせいだ。」


「そんなのおかしいわ。」


「じゃあ姫路を説得して全部丸く納めてくれよ。そしたらそれは俺のおかげって感じで。」


「でもそれは。」


「正直見てられないよ。そんな顔で話に行っても解決するとは思えない。もうやると決めたんだろ。だったら後悔しないやり方を考えるべきだ。そもそも姫路が学校に来なくなってからろくに話してないんだろ。後悔するのは話した後でも遅くない。そうだろ。」


「...やっぱりあなたの言うことはやっぱりわからない。」


「はぁ、まだ言」


「それでも、それでも一度だけ貴方を信じるわ。だから...失敗したら責任とってよね。」


そういった彼女はとても儚く、美しかった。


「お、おう。」


 工藤はそう言ってから少しは恥ずかしくなったのか少し顔を逸らす。


「とにかく、あなたの言いたいことはわかったわ、高階くん。雛に学校に来るようにお願いする方法は私が考えるわ。だからもし私だけじゃ説得が難しかったら、あなたが助けてね。」


「あぁ、わかったよ。」


「じゃあ、今週の土曜日に一緒に雛の家に行きましょう。」


「家に行くのか。場所はわかるのか?」


「場所は多分わかるはず。一回行ったことあるし。」


「じゃあ集合場所と時間決めとくか。」


「そうね、午後が良いかしら?」


「まぁ良いんじゃないの。」


「では土曜日の午後1時に駅集合でお願い。」


「あいよ。」


そう言って俺は生徒会室を後にした。

――――――――――――――――――――――

 約束の日がやってきた。姫路がどんなやつなのかっていうのも気になるし、知り合いと出かけるなんて久しぶりすぎて少し緊張している俺がいる。

 寝癖も直したし、服も取り敢えず黒と白で揃えて無難な感じ、風呂も入った。よし、完璧。正直女子と出かけるなんて初めてすぎて正解がわからん。おしゃれなんて勉強してきてないしな。古文の授業とか潰して身だしなみの授業した方が良いんじゃねぇかな。

 

「そろそろ行くか。ってあれまだ11時50分?ちょっと早く準備しすぎたな。いつも自転車だし歩いて行ってみるか。」


「おはよー。」


「げ...」


「げってなんだ。げって。...何でお前が出かける準備してるんだ。どういうことだ。明日は槍が降りそうだな。」


「降るわけねぇだろ。姉貴。」


「いや、すでに起こり得ないことが起きてんだ。だったらあり得るだろ。」


「俺のことなんだと思ってんだよ。」


「引きこもり?」


「いつも学校行ってるだろ。」


「出かけるのが学校しか無いって。お前の代わりに私が泣いてやろうか。」


「いいや、結構だよ。てか泣くようなことじゃねぇだろ。」


「で、もう家でんの?」


「話いきなり戻すなよ。まぁそうだな駅集合だし歩いて行ってくる。」


「ふーん、相手女?」


「急に何だよ。」


「その感じ女か。じゃあねぇな、ほら。」


姉は近くに置いてあったバックを漁ると手を出した。


「何だよ。」


「ほら。」


その手には諭吉さんが収まっていた。


「どういう風の吹き回しだよ。」


「これでかっこいいとこ見せて来い。」


「余計なお世話だよ。」


「あと相手の写真撮ってきて私に見せろ。」


「相手が良いって言ったらな。」


「それでいいよ。私は朝ごはん食ったら、また寝るから家の鍵持ってけよ。」


「了解。じゃあ行ってくるわ。」


「いってらっしゃい。」


それを聞いて俺は家を出た。


――――――――――――――――――――――

 いじめというのは何故起こるのか。俺はいじめら奴の気持ちがわからない。俺はどちらかといえばいじめられる側だった。まぁ俺が実際受けたわけじゃないけど、小中学校でもいじめはあった。

 そのときの俺は見ていることしかできなかった。いや、直視する勇気もなくて見て見ぬ振りをすることしかできなかった。きっと今回の件でも、事前にいじめがあることを知っていても何も出来なかったんじゃないかと思う。

 そのくせ、学校のいじめアンケートには何も書かなかった。ただいじめられて可哀想、いじめてる奴はどうしてそんなことができるのだろうと心の中で弾劾し、自分はいじめっ子とは違うと思っていた。そんなのは自己満足な偽善であると分からずに。

 いじめを助けることは、次のターゲットを自分に移すことに等しい。自分を捨ててでも他人を助ける、そんな考えがなければいじめられている人を助けることは出来ないのだろう。でもやはりこの世界にそんな優しさは無くて、自分の保身を考えてる人しかいない。

 自分を捨てても他人を助けることが出来る人がいるのなら、それは優しさを超えた狂気だし、偽善と切って捨てるには優しすぎる。それでも、他人を助けられたのなら、そのとき初めて人は友人になれるのかもしれない。

 そんなことを考えているうちに、駅に着いた。

 確か集合は西口だったよな。腕時計を見る。


「まだ12時過ぎかちょっと早く来すぎたかもな。流石に工藤はまだ来てないだろうし。」


そう思って周りを見回す。流石にこんな早く来てるわけないか。あと1時間くらい何して時間潰そうかな。駅前にマックないんだよな。スタバもないし、まぁスタバなんて行ったことないんだけど。あるのはラーメン屋とコンビニだけだ。何でラーメン屋が3件もあるんだよ、マック作ってくれよ、何回でもいくからさ。


「ねぇ。...ねぇ、高階くん。」


 なぜ俺の名前が?そう思って後ろを振り向くとそこには、美人がいた。え、工藤だよな?


「そんなジロジロ見ないでよ。気持ち悪い。」


 雰囲気がいつもと違いすぎて一瞬疑っちゃったけど、この言動は工藤だった。見てくれに騙された。てかあんまり簡単に気持ち悪いとか言うなよ。そんなに冷めた口調で言われたら傷つくぞ。


「はいはい、悪かったな。てか来るの早すぎだろ。まだ12時過ぎだぞ。」


「それはあなたもでしょう。」


その通りだった。


「姫路には何時に行くとか連絡してるのか?」


「一時半と連絡したわ。」


「まだ1時間以上あるじゃねぇか。流石に早く来すぎたな。」


「そうね。」


「...」


「...」


気まずっ、何だよこの沈黙。1時間なんて何かをするには短いし、何もしないには長すぎる。


「あと1時間ぐらいあるけど、取り敢えず座れる場所探すか。」


「そうね。」


「ファミレスでも行くか。」


「それで良いわ。」


「じゃあ決まりで。」


 空は美しく晴れていて、何の根拠もなくこの後が上手くいくようなそんな気がした。

姉の名前はうつつちゃんです。ちなみに綺麗なお姉さんです。

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