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2話




 それから半年。

 ケイナは国の端っこにあるとある街で暮らしていた。よそ者にもやさしい開放的な街だ。王都とは違っていつも和やか。王都にいる貴族の親戚などはいるが、国を揺るがすような大貴族はいない。そこで平和に暮らしている。

 聖女としての仕事を求められて疲れることもない。悠々自適である。


 ケイナが王都を離れたあと、新しい聖女が選ばれたそうだ。前の聖女は失踪中。


 ――まぁ、ここにいるんだけど。


 ともかくそういうことになっている。

 そして予想通り王都は守りが薄くなり、今はなんとか魔物の攻撃を抑えているところだ。

 正直、もし王都から帰ってきてほしいと言われれば帰ってやらなくもない。

 王太子と神官は許せないが、民には罪はないのだ。彼らを守る役目を放棄したことを若干後悔もしていた。

 かと言って自分から帰るのは釈然としない。

 ケイナは隠れる気もなく、見つかれば帰ってやろうという気でいた。


 そしてその時はすぐにやってきた。




 

「ケイナ様。王都にお戻りいただけませんか」


 数人の兵士を連れて、やつれた様子でやってきたのは赤い髪の男性だった。おそらく貴族だろうが、腰には剣が拵えてあって、身体の大きさから見ても、戦士のような人だ。

 そして、その声には聞き覚えがあった。

 

「友人……」


 王太子の友人だ。あの日あの部屋で話をしていた人物だった。


「どうかお願いです。新しい聖女は貴方のようにはできなかった。王都が魔物に落とされるのも時間の問題だ。ケイナ様がなぜ王都を離れられたのか、その、わかりません。ですが、どうかお願いです。我々にできることはなんでも致しますから。どうか」


 ケイナは懇願する友人を見つめた。


「王太子からはなんと命令されてきたのですか」

「なんでもするから連れ戻してほしいと、陛下からもそのように」

「そうですか」


 なるほど陛下も我慢ならなくなったか。しかし陛下がなんでもと言ったなら、おそらくなんでも聞いてくれそうだ。


「あなた、お名前は?」

「え、あ、グレオン・マクシミリアンと申します」

「マクシミリアン……伯爵家の方ですね」

「はい」


 名前はしっている。たしか一人息子は武官で、実力者として有名だったはずだ。つまり彼がその有名な武官。

 ケイナはグレオンを見つめたまましばらく黙っていた。

 

 ――まぁ、考えることもないか。迎えにきたらこうするって決めてたもんな。


「わかりました。戻りましょう」

「あ、ありがとうございます!」


「ただし、お願いがいくつかあります」

「なんなりと申し付けください」


 ケイナはにっこりと微笑んだ。








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