繰り返し転生する双子魔女は今回の人生でも幸せになれなかったので、次の人生に行こうと思います
「今日をもって貴様との婚約を破棄するっ!」
朝から呼び出されて、何事かと思いきやこれである。突然の婚約破棄を言い渡したその男のとなりには、しなだれかかるようにして、その男の胸に手を当て、こちらを見つめている女が居た。
私の妹だ。
「そうですか、理由をお聞きしても?」
普通ならば婚約の破棄などを突然言い渡されれば、いきなり地獄へと突き落とされたような絶望感を味わうのだろうが、私にはそのような可愛らしい感情は存在しなかった。
「ほう? 平然としらを切るつもりか? 聖女などと言われ慢心していた貴様は、か弱き自分の妹を虐げておいて、良くも抜け抜けと・・・」
「そんなことしておりませんが」
私は聖女として、この国の為に働いていたので、妹と中々会えずにいたのだけど。男の腕の中にいるその妹はこちらを一瞥もしようとしていない。目を伏せて震えている。
「でも、いいですわ。どうせ証拠も妹の証言だけなのでしょう? それで、望んでも居なかった婚約で、ついでに言うと、真実の愛を見つけたか、私の働きを見もせずに何の役にも立たない聖女など必要ないとか、妹を次の聖女とするとか言うんでしょう?」
「なっ! なんっ・・・!」
男は口をぱくぱくさせて、顔を真っ赤にしている。今から言おうとしていた事を次々と言われてしまって、動揺しまくっている。
「ふふ、その程度の男など、こちらからお断りですわ。慈悲深く追放でもするのでしょう? ええ、いいわよ、出て行きますからご安心を」
「貴様っ! 貴様は聖女などではない! 魔女だ! 性悪の魔女め! さっさと目の前から失せろ!」
「だから出ていくと言っているではないですか、それと、正解ですよ、私魔女ですし」
聖女だなんだと担ぎ上げられていて、今まで否定も肯定もしてこなかったのだけど、私は実は魔女なのだ。ちょっとした、ワケあって、今はここにいるというだけの魔女。
男の前に一枚の紙がヒラヒラと舞い落ちる。男はその紙を手に取り、その紙を見る。
< 通 知 表 >
ロウウェル王国第一王子 ルシオ・ロウウェル
評価:F(最低ランクです)
顔面偏差値は多少ありますが、おつむのほうが残念すぎます。
語彙力も足りないようですね。
妹がやらずとも、その辺の女にコロっと落ちそうなほどのゆるゆる倫理は論外です。
来世ではもうちょっとマシな頭を持って生まれてください。
レナ・バートン
「さて、今世もロクな結末を迎える事ができませんでしたし、さっさと来世へと向かう事にします、さようなら、お馬鹿さん」
私はふわりと体を浮かせ、上からルシオを見下ろす。にっこりと笑顔を顔面に張り付けて、ばいばーいと手を振って見せる。
そのまま、その場から姿を消した。何やら叫んでいたようだけど、知った事ではない。
もうここに用はない。
この遊びを始めてからもう何百年、いや、もう何千年と経っているだろうか? 時を渡り、時には世界そのものを渡って、生まれ変わりを繰り返している。今回は聖女だったが、前回は普通の令嬢だった。
婚約が破棄されれば、その時点でゲームは終了。次の人生を始めるのだ。
「お姉さま~、今回はかなり評価が低かったですね?」
先程までよよよっと王子に寄りかかっていた妹が、いつの間にか隣にいる。
「そりゃそうよ、テンプレにも程があるわ」
「あははっ、確かにそうですねぇ! 虐められてると言ったら、何の裏もとらずに秒で信じましたよ?」
「ほんとにおつむが残念すぎるわね・・・」
「お姉さまの引きが強いのか、それとも私の魅力が凄まじいのか」
「貴女も、落とす技術が十分に発揮できなくて、ストレスが溜まってそうね? リナ」
「そりゃあ、秒で落ちちゃうとねえ・・・次はもっと難易度の高い人がいいわぁ」
私達は、元々双子の魔女だ。生まれ変わっても、ちゃんと双子として生を受ける。そして、私はちゃんと姉になり、リナは妹になる。何故か名前もそのまま変わらないのだ、不思議なものだ。
「それにしても、いつになったら私達は満足して人生を終えれるようになるのかしらねえ」
「真実の愛(笑)を手に入れるのって、案外難しいんですねぇ」
「ほんとにね、男って何時の時代も、どの世界でも・・・私達には似たようなのしか当たらないのね」
様々な時代、様々な世界、様々な生い立ちを経ているのに、大体最後は婚約破棄されてしまうのだ。これはもう呪い・・・というか、元々呪いをかけられて、このような事態になっているのだけど。
「呪いをかけた張本人も、今頃お墓の中で目んたま飛び出させて驚いてるわよ」
「あはははっ! お墓の中じゃめんたまもなにもないでしょ姉さまったら!」
一番最初の人生で、私達は双子の魔女として生を受けた。レナとリナ。今でも普通に仲良くしているし、当時もそれはもう仲良しだった。
私達に呪いをかけた人は、私達の師匠だった。きっと最初は次の人生で上手く行くだろうと、そう思っていたに違いない。彼が死んでから、もう数えきれないほどの年月が経っている。
私は最初の人生で一人の男性と恋に落ちた、リナは私とずっと一緒に居たいからと、べったりだった。男は私にそっくりなリナにも手を伸ばしていた。その男性を好きだとか、そういう感情は無かったという。だが、私が好きになったのだから、自分も好きになるだろうと、その手を受け入れてしまった。
双子とはいえ、別の人間だ。顔は同じでも性格は全然違うし、考え方も似てるようで違う。同じなのは、お互いにお互いの幸せを望んでいる事だけ。
いつしか男性は私を捨て、リナの手だけを取った。その事で、私は酷く傷ついてしまって、それを知ったリナも手を取ってしまったことを後悔した。
私達は、師匠に相談した、してしまった。
「お前達が、それぞれに幸せになる人生を歩めるように魔法をかけてやろう」
次の人生も双子として生まれ、そして年頃になるといつも私に近づいてきた男性は、リナの元へと行ってしまう。その次も、その次も。
これが魔法ではなく、呪いなのだと気付いたのは、生まれ変わりを3回ほど繰り返した頃だった。
毎回傷つくのも嫌になってきたので、私達はこれをゲームと思うようになった。
私に近づいてきた男を、リナが落とす。落とせれば、その人生は終わり。落とせなければ、呪いが終わる。私達二人がそれぞれに幸せをつかみ取れば、多分この呪いは終わる。
通知表はここ数百年くらいで始めた遊びだ。色んなパターンはあれど、大体似たり寄ったりな男が多すぎるため、落とされる速度、婚約破棄の理由など、色々考慮して私の独断と偏見で評価する。
「もうこの世界は、大体遊んだから、次は別の世界がいいわね」
「聖女系はそろそろ飽きたかなぁ~、王子さまは大体あほの子が多いんだよねえ」
「そうねぇ、賢い方はなぜか私達に目もくれないのよね?」
「まさか、私達はバカに好かれるフェロモンでも出ているの・・・?」
リナは割と本気で、そう思いかけている。私も薄々そうなのかなってちょっと思っている。
「せめて評価が高い人が居てくれたらなって思うわ」
「そこは呪いが解けるところを目指そうよ姉さま」
「それが一番なんだけどねえ、まあ期待せずに次いきましょうか」
「そうね、来世もよろしくね、姉さま」
転生の主導権は私にある、次の生まれ変わり先をイメージする役割が私。妹は転生にかかる魔力を、補填するのが役割。
次の世界では、クソ妹っぷりを遺憾なく発揮してほしい、結構楽しそうなので。
次の人生は、どういう環境で生まれようかな。双子が忌むべき存在になっていると、スタートの時点で不幸が決定しまうから、双子でも愛されるような環境がいいわね。
今回の両親は、普通だったけど、たまに双子なのにあからさまに差をつけてくる人もいるから、その辺はなんとか良い方の両親に恵まれるといいなぁ。
それなりに地位があって、でも王家とは関りがそこまでなくて、ああ、田舎の貴族とかいいわね。のびのびと育って・・・って、そうすると、クソ妹プレイができないかもしれないわね。
ああ、でもたまにはそういうのもいいかもしれない。
最初の人生みたいに、仲睦まじく自然に身を任せる人生もいいかもね。
そう願いながら転生の魔法を発動する。
無限に続くこのおかしな人生が今度こそ終わりますように。
いつか長編で書いてみたいお話です