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71 竜騎士団3年目 新人歓迎(夜)

団長と共に詰所に戻ったケイは、デスクワークを少しこなした後、飛竜舎へ行くことにした。雷鳥がどうなっているのか見に行くのだ。


飛竜舎につくとすぐにみーくんが声を掛けてきた。

というか、みーくんは足音でケイの接近に気づいていた。


「キュー?」

「今日は討伐じゃないよ。ガーくんのようすを見に来たんだ」

「キュッキュ」


あの雷鳥はルイによってガーくんと名付けられた。

本人(本鳥?)的には不満があるようだが、ここ飛竜舎の主はルイである。逆らうことは許されない。


みーくんは前脚で飛竜舎の上を指さした。

指示された先で、飛竜舎の梁の上にガー君は寝床を作り、そこでくつろいでいた。こちらに気づき、羽ばたきながら降りてくる。


「よ、ガーくん。ここの居心地はどうだ?」

「ガァー……」

「あきらめろ、お前はガーくんだ」

「ガ……」


未だ名前には納得していない様子。ちなみにガーくんはオスである。


「それよりも、どうだ?この寝床で不便はないか?欲しいものとかないのか?」

「ガァガァ」


首を横に振っている。大丈夫らしい。

ガーくんの足首には小さなリングがついていた。存在感を薄くする効果を持つ魔道具。

これのおかげで、ガーくんは日中公園に出かけることもできるし、エサは自分で調達している。寝床以外は施しを受けない。男気溢れる鳥である。


「あまり派手に行動するなよ。お前は魔物なんだから、変なことしたら対魔物騎士団に目を着けられて、即保健所行きだ」

「ガ!」

「よし、じゃあまたな」


了解、といった雰囲気のガーくんと別れて詰所に戻ると、もう定時近かった。

日報を書いて、その日の業務は終了。




アパートには明りが灯っていた。鍵を開けるといい匂いがしてくる。


「ただいま~」

「お帰り~」


玄関まで出迎えにきたカオリに鞄を渡す。


「今日はお肉だよ~」

「いいね。お腹減った」

「ご飯からにする?」

「うん」


食事の用意は既に整っていた。お風呂も準備できている。

テーブルに着くと、運ばれてきた皿の上、お肉には見覚えのある野菜が付け合わせとしてついていた。ピーマンもどきの夏野菜の炒めもの。


「お、これ実家うちのやつか?」

「さっき届いたばっかりだよ。早速使っちゃった」

「これ好きなんだよ。ずっと小さい頃は好きじゃなかったけど、なんか今は普通に食える」

「知ってる。てゆうか、領都学校時代は既に好きだったよね?」


転生前の記憶を思い出すと同時に食べられるようになったのは秘密。

実家の野菜に舌鼓を打ちつつ、必要なことを話す。

最初に、今週末の夕飯は不要だと伝えた。


「新人くん、期待通りだったんだね。良かったね」

「期待通りといえばそうだな。うん、よかった。というわけで正式採用後の懇親会だから。竜騎士団は全員参加。2次会もあると思うから遅くなると思う」


自分のときを思い出す。

あのときは2次会で幻影のお店に連れていかれた。


「今回もあんなことが起きるのかな……?」

「マヤさんからは何も聞いてないの?」

「聞いてない。……カオリ、何か聞いてるの?」

「一応ね。秘密だけど」

「え?教えてくれよ。またあんなことをするのか?ナツキ、新人くんを嵌める理由なんてないだろ。せっかく竜騎士団で受け入れて、向こうもその気になってきたのに、バレたら関係性バキバキになるぞ。最悪それが原因で竜騎士団を退団するとでもなったらヤバいぞ」

「そこはほら、マヤさんがどうにかしてくれるよ」


本当にどうにかなるのかな、と思いつつ答える。


「でも、そうなら俺は2次会行かない方がいいよな」

「どうして?」

「どうしてって、いや、ダメだろ。お前がいるのに」

「今回は特別。行ってもいいよ。というか、行け」

「そうだよな……っていいのかよ!?浮気じゃん」

「浮気じゃなければいいでしょ。そういうこと。みなまで言わせるな。それに、年の近い先輩が同伴する方が、新人くんも安心するでしょ」

「……」


ケイはカオリの意図が見えず、無言で目をあわせた。

そんなケイに対し、はぁ、とため息をつくとカオリは続けた。


「ご褒美」

「ん」

「ほら、ケイも課題をクリアしたし、ご褒美が必要でしょ。それ」

「あぁ、そういう話あったよな」

「私がご褒美あげるから、ケイは楽しみなさい」

「ちょ、どういうことだよ」

「これ以上は言いたくない。今週末を期待しときなさい」


カオリはそれ以上、この話題では何も教えてくれなかった。秘密多くない?


その晩、寝る前のウトウトしているタイミングで、カオリはこんなことを聞いてきた。


「ねぇ、ケイ、私のこと好き?」

「好きだよ」

「どこが好き?」

「どこって……」


とりあえず思いつく点を10個くらい並べてみた。


「むふー」


満足そうな様子で腕に抱き着いてきた。


「信じてるからね」


二人はそのまま眠りに落ちた。




数日後、今日は週末。懇親会のある日である。

全員討伐任務の予定は外してある。定時内は特に問題が起こることもなく、予定通り懇親会が行われた。


定食屋で行われた1次会終了後、残ったメンバーは団長、クロカゲ、レイジ、ケイ、そしてナツキの5名である。レイジが2次会に行くというのはケイが知る限り初めてだ。指導員として同行することにしたらしい。

クロカゲの先導によって移動を開始した5人。団長とケイに挟まれたナツキは質問をしてきた。


「次の店ってどこですか?」

「なじみの店さ。なぁ、ケイ」

「そうですね、団長。クロカゲさんのおすすめだから間違いない」

「なるほど……」


ナツキは感心している。クロカゲが暗部所属であることはナツキも知っている。裏情報でいい店を知っているとでも思っているのだろう。


着いた場所は見覚えのある繁華街の外れの建屋。

ここまで来て、ようやくナツキも状況を察したらしい。


「…………」


クロカゲが店の女主人(マヤが幻術で姿を変えた女性)と話しをする間、ナツキは無言だった。

待合室で待つ間、団長とクロカゲ以外の3人はソワソワ感が隠しきれていない様子だった。

しばらく待つと、主人と共に4人の女性が現れる。団長は普通に挨拶していたが、残り3名は無言。


「……」

「……」

「……」


ケイの相手はミコトさんだった。とはいえ、本物ではないだろう。

この店の幻術ネタを知っているケイにとっては、2年前と同様の恰好で現れたミコトは誰かが幻術で姿を変えたものだと瞬時に理解した。問題はそれが誰か。ここで、先日カオリが今日のことを知っていて、ご褒美と言っていたことを考慮すると、カオリがミコトの恰好で出てきたのではないか?というかそれ以外考えられない。


ミコトはケイの顔をじっと見つめ、にっこり笑いかけてくる。この堂々とした感じ、間違いない。


ちら、と横目で他の3人を観察する。


団長の相手はもう団長に抱き着いている。

レイジの相手も控えめながらボディタッチ中。

ナツキの相手と思われる女性はまだもじもじしていた。そんな女性の様子をみながら、女主人がナツキの耳元で何かささやいている。あれは念押しの暗示。マヤさんも悪い人だ。


とりあえず、ケイもそれっぽい雰囲気を出すことにした。ミコトに近づき、腰に手を回す。


「んっ」


素直にケイに引き寄せられたミコトが声を漏らした。


「お客さん、上に行きますか?」


女主人がケイに声をかける。ケイが先陣を切ろうと頷くと、女主人は今までにない説明をした。


「お部屋は上の右奥です。防音魔術を発動させることを忘れないようにお願しますね」

「わかりました。……団長、時間は……」

「今日は店を貸し切った。ケイは勝手を知っているだろうし、自由にして構わない。ナツキは私が面倒みるから気にしなくていい」

「了解です」


返事をし、そのまま腰を抱いたまま2階への階段へ向かう。


腕に抱き着いてくるミコトはカオリだと分かっていても妙な感じだ。部屋に入って扉を閉める。着替えや飲み物が準備されている。なんだか懐かしい。

布団に押し倒しつつ尋ねる。


「そのままでいいの?」

「なんのことでしょう?私はフブキですよ?」

「そうだった」


今日はこのキャラで通すらしい。だったらこっちもそのつもりで過ごすだけだ。

防音魔術を発動させる。長い夜になりそうだ。















翌朝ケイが目を覚ましたとき自分の左側に寝ていた人物はコトネだった。


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