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68 竜騎士団3年目 新人集合研修7

その後、ケイはカイ団長、雷鳥と共に飛竜みーくんたちが待つ待機場所へと戻った。


隠形技術で気配を消していた警備騎士団長であったが、思いもよらない人物や魔物を連れて帰って来たケイの前に、頭に疑問符を浮かべながら姿を現した。


その後団長同士の情報交換が始まった。

事情を知った警備騎士団長はケイに対してねぎらいの言葉をかけてきた。


ケイとしては、警備騎士団長に何処まで勇者関連の話をしていいものか悩んだが、カイ団長は以外にオープンに話をしていた。騎士団長クラスになると、勇者関連情報は周知の事実ということだろうか。


雷鳥は大人しくケイの後ろで待機していた。

みーくんたちは雷鳥に興味津々といったようすでこちらを見ているが、そんな視線はどこ吹く風と雷鳥は地面で羽を休めている。


カイ団長と警備騎士団長の間では、まさにその雷鳥の処遇について話し合われていた。


「で、雷鳥これの処遇ですが、竜騎士団で面倒を見るつもりです」

「そちらが責任取るのであれば、警備騎士団こちらとしては異論ないが……大丈夫なのか?魔物だぞ?」

「普通の魔物とは違うみたいですし、何か勇者に影響をうけたのかもしれません。調査する価値はあるかと」

「バラすのか?」

「ガッ!?」


警備騎士団長の言葉に雷鳥が反応する。

聞いてないふりして、しっかりと話は聞いていたらしい。

一瞬注目を集めた雷鳥であったが、何食わぬ顔でそのままそっぽを向いた。やけに人間味のある反応だったが、ケイにはその表情から感情を読み取るのは難しかった。


「……いえ、そういうことはしません。飛竜舎で一時的に保護する形にします」

「そうか。まぁ下手なことして鬼が出てきても困る。そのあたりが落としどころだろうなぁ。市長には話を通しておかないと厄介なことになるな」

「分かっています。私から伝えます」


両団長の言葉を聞いて安心したのか、雷鳥は団長たちに向かって頭を下げた。

その後、飛竜たちのもとへ歩いていく。


「キュー、キュキュキュー」

「ガァガァ」

「キュッツ」

「ガァー」


飛竜と雷鳥の不思議なやり取りの後、雷鳥は飛竜たちのそばで丸くなった。

完全にくつろぐ体制になっている。


みーくんたちもフンフンと雷鳥の匂いを嗅いだあとは特に何をするわけでもなくくつろいでいる。

あっという間に馴染んでしまった。


雷鳥の様子をみながら、カイ団長はケイへ声をかけた。


「ふぅ。では、用事は終わったし、私は先に帰らせてもらうよ」

「はい。ありがとうございました。お手数おかけしました」

「突発にはなれているから大丈夫。また詰所で」

「はい、おつかれさまです」

「お疲れ」


カイ団長は警備団長とも挨拶したのち、帰って行った。

空を駆け、あっという間に姿は見えなくなった。


(あの移動術、今度教えてもらおう)


その後、ケイは警備騎士団長と共に姿を隠すのだった。




最初の新人チームがチェックポイント付近へやってきたのは午後、日が傾きかけたころだった。

最初のチームはチェックポイントにいる飛竜や雷鳥に対して明らかに腰が引けていた。


どうするか決断できていないところに、次のチームが追い付き合流する。

3チームが合流したところで、意を決した新人達がじりじりと間合いを詰めてきた。


斥候役が先行し、後衛が援護する。教科書通りの戦法である。


「はい、ドーン」


そんな新人達に忍び寄り、背後から肩を叩く警備団長とケイ。

脅かし役は意外と楽しい。が、よく考えると新人から恨まれるだけのような気もする。


ナツキ達のチームも夕食時間前にチェックポイントに現れた。

飛竜たちが飛竜舎で飼っている顔なじみの飛竜たちだと理解したナツキによって、チーム員は特に警戒することもなく合流した。



一方、飛竜たちに最も敵対的な行動をとったのはハルヒのチーム。どうやら彼女が強硬手段を主張したらしい。

飛竜に立ち向かう勇気を称えるべきか、無謀な勇気を戒めるべきか。

とりあえず面倒事はハルヒの教育係のカズタカに任せることにした。上手くやってくれるだろう。


竜騎士団の飛竜だと知っていて、敵対心があったわけではないと思いたい。




新人達が集まった後は宴の時間。

ケイが持ってきた材料を使って警備団長が料理の腕を振るう。


先ほどの脅かしによって最低レベルまで落ちていた二人の評価は一気に最高レベルにまで高まった。

ジェットコースターのような好感度変化である。


宴は長時間続き、新人達は疲れもあって次々と潰れていった。

本日は無礼講。潰れた新人達を見守るのは飛竜たちとケイや警備団長などの指導教官たちである。


みーくんの傍で飲み物をちびちび飲んでいたケイに警備団長が近づいてきた。

手には飲み物を持っている。


「どうだい?こういうのも悪くないだろう?」

「そうですね。自分がこちら側になると、意識も変わるものですね」

「ほう。どう変わった?」

「新人たちに負けないように自分も頑張らないとなって思いました。あとは……自分のことだけじゃなくて、組織的なレベルアップのために自分が何をすべきか考えるようになった気がします」

「ふむ。3年目ともなると新人への指導も始まる。そういう意識は大事だよ」


組織云々は去年、市長から課題として与えられた時から考えていたことだが、そこまで言う必要はないだろう。


「私の年になると、私がいなくなった時のことを考えるようになるよ」

「失礼ですが、団長は……?」

「もうすぐ定年さ。身に着けた技術は若人に引継いでもらいたい。私が生きた証を技術や知識という形で残したい。そんな気持ちが強くなってしまってね。ついつい指導に力が入ってしまう」


警備騎士団長は薄く笑いながらケイに向き直った。


「昼に現れた存在は、君に何かを伝えたかったのかもしれないな」

「そうなのでしょうか?」

「永き時間を経た存在がわざわざ現れたのだ。何か意味があると考えるのが自然だろう?」

「実際、意味深な言葉を残してそのままいなくなりましたし。どうしてちゃんと教えてくれないんですかね?1しか喋らずに10を察しろというのは無理がありますよ」

「うむ」


少し真面目に考えこんだ警備騎士団長は、持っていた飲み物をグイッと飲んだ。


「言えない理由がある、のではないかな。詳細を話すと都合が悪いから、何とでも解釈できることだけ話す。理解できる人だけ理解してくれればいいという考えでね」

「理解した時点で、詳細も理解している気がします」

「そうかもしれないな。あとは……コミュニケーションに慣れていない、とかね」

「コミュ障ゆえの言葉足らず?」

「そこまでは言わない。でも仕事に慣れてくると、仕事ができなかった頃の記憶は曖昧になるものだ。私も担当者として実務に取り組んでいたころは、どうしてこんなことが分からないのか、出来ないのかって部下や新人達を叱ったものさ。最初からなんでもできる新人なんているはずないのに」

「団長はまだ現役ですよね?」

「今は責任を取るだけの管理者だよ」

「……」

「かの存在ははるか高みにいて、その意図を我々がくめていないだけなのかもしれない。そう考えると、かの存在も大したことはないなと、決して神のような存在ではないという気がしてくるな」


そこまで話したところで、向こうの方から警備騎士団長を呼ぶ声が聞こえた。

指導員の一人が用事があるようだ。


「おっと、呼ばれたか」

「ありがとうございました。参考になりました」

「いやなに。老人の回顧さ」


去っていく後ろ姿を見ながら、ケイは思った。

勇者は孤独で、それゆえ魔物たちに優しいのかもしれない、と。




宴の翌朝、ケイはみーくんたちと共にチェックポイントを離れ、竜騎士団詰所への帰路についた。

空を飛ぶみーくんの背にまたがったケイに対し、雷鳥は飛竜たちの後ろを突かず離れず飛んでいる。


(このままついてくる気なのか。まぁいいけど)


数時間で領都。市庁舎が見えてきた。

飛竜たちを引き連れ、飛竜舎へと降り立つ。


「帰ったか~?」


ルイが奥から顔を出した。


「む……」

「ガ……」


ルイと雷鳥が顔を合わせる。ルイは雷鳥を見て、飛竜たちを見て、また雷鳥を見て頷いた。


「ま、いいだろ。面倒は起こすんじゃないぞ」

「ガ」


何も説明していないのに一瞬でルイと雷鳥の間で何かが通じ合った。

そんな様子をみてケイは思った。精霊使いって凄い。


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