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45 竜騎士団2年目 会合

いつもの市長室、ケイは市長、カイ団長と打ち合わせをしていた。


「カイ、今回の事件の動機をどう考える?」

「・・・難しいな。陽動、という可能性はないか」

「というと?」

「もし魔人の作戦が成功していれば聖域の住人が多数拉致されていた。命を落としていた可能性が高い。帝国公認宗教と住人は関係が深いから、そこに与える影響はかなり大きい。大きな混乱や機能不全を引き起こせるとは思わないか?」

「確かに。帝国公認宗教は治安維持にも一役買っている。そこを崩しにきた可能性はあるな」


ケイも意見を出してみた。


「魔人が住民に対して恨みを抱いていた、とか」

「私怨か。共犯者が島関係者、かつ政治情勢がキナ臭くなってきたこのタイミング。個人的な恨みを隠すためにミスリードを狙った可能性もゼロではないが、やはり魔国に関する一連の出来事だと考えた方が自然だな」


市長は続けた。


「別のミスリードはあるかもしれないな。例えば、ケイの話だと魔人は最後まで姿を見せず、最初は囚われの聖騎士団員としての姿を見せたのだろう?その聖騎士一人だけが生き残ったという体にして、例えば竜騎士団が聖域に攻めてきた、という偽証をすれば、さらに混乱するとは思わないか?」

竜騎士団おれたちが聖域を攻める、というのは無理があるだろう。‘勇者のお願い’による縛りがあることは上の者は知っている」

「別に竜騎士団でなくとも、聖域のことを知っていて、聖騎士団と敵対することで両方が共倒れになるような組織であればそれでいい。帝国内を混乱・疲弊させるのが目的だとしたら、な」

「まぁ、それならあるかもしれないな。・・・だから、あの計画を前倒しにしたのか?」


ケイは今日の午前中の出来事を思い出していた。


◇◇◇ 回想 ◇◇◇



ミーティングから3日後、カイ団長とケイは市長と共に市庁舎の応接室にいた。

目の前には3人の来客。ミコトと聖騎士団団長、副団長である。


訪問理由は、先日の聖域内での出来事について。住人を助けてくれたケイ達に対するお礼ということだった。


(今の状況は、一般人が刑事事件の犯人逮捕に貢献して後日警察に表彰された、かな。・・・少し違うか)


市長は、ケイ達の上司としてではなく、この場を提供する者として同席している。


「先日はありがとうございました」


ミコトが感謝の言葉と共に差し出して来たのは小さな封筒だった。金一封だ。


「そんな、お気になさらず」

「いえいえ、感謝の気持ちなので。どうか受け取ってください」

「では・・・ありがとうございます」


一度断るも結局いただく。これも予定調和のやり取りである。


「それと、もう一つ」


直系1センチ程度の球体。表面には複雑な模様が描かれている。


「里の‘鍵’です。社から里への移動を可能にするもので、住民からの信頼の証です。二つあるので、もう一つはレイジさんへお渡しいただければ、と」

「承りました」


それぞれ小さなお守り袋に入れて手渡された。

どこでどう使うのかは後で知っている人に聞けばいいや、とケイは思った。


「今回訪問の1つ目の目的はこれで終わりです。もう一つの目的、皆さまとこちらにいる聖騎士団員との情報交換、に入ってもいいでしょうか?」

「ええ。構いません」


ミコトの言葉に答えたのは市長。


「ありがとうございます。ここからは、聖騎士団と竜騎士団という立場でお願いします・・・団長」

「聖騎士団一同、皆さまのご助力に感謝しております。まず私共から、侵入者の情報を提供させていただきます」


前置きを置き、市長たちの反応を見た上で聖騎士団団長が話を始めた。


「主犯格と思われる人物が、聖騎士団員ミナ。聖域にて宿直の任につく日を狙い犯行に及んでいます。当日、同僚の肉親が聖域の別門を通り戻ることを事前に調べた痕跡がありました。本人は聖域出身者ではありませんが、古くより我らと付き合いのある家の娘で、聖域についての知識も元よりありました。親にも確認したのですが、娘が魔族であることすら認識していなかった、という状況です」

「その方のご両親は魔族ではない、と」

「ええ。詳しく調査しましたが、魔族ではありませんでした。もちろん、養子ではありません。我々としても困惑しております」


親は魔族ではないのに子は魔族。隔世遺伝という線もあるか・・・?


「図々しいお願いではございますが、件の魔人についての情報があればいただけないでしょうか」

「申し訳ありありませんが、我々も魔人についての情報はまだ持っていません。何か分かりましたらご連絡しましょう」

「ありがとうございます」

「その他の人物についての情報はお持ちですか?」

「いえ・・・そちらはこれから、という状況です」

「であれば」


そういって市長はケイに合図した。

ケイがファイルを3つ取り出す。


「どうぞ」

「これは、もしや」

「ええ、残り3名の素性をまとめたものです。お渡しはできないので、この場での閲覧でお願いします」

「拝見します」


聖騎士団団長と副団長がファイルを読み始める。

市長はそのまま話を続けている。


「3名とも我が領の人間ではありません。列島領と諸島連合では、我々が直接手を出すことはできません。・・・今回の事件の裏には魔国がいると考えています」

「同意見です」


ファイルに目を通した聖騎士団団長が


「感謝します。なんとお礼を言っていいか」

「であれば、お願いしたいこと、いえ提案があります」

「なんでしょうか?」

「それは・・・」



◇◇◇ 回想終わり ◇◇◇



「聖騎士団と各騎士団の人員交流、ですね」


ケイの言葉に対し市長が答える。


「各騎士団と聖騎士団は役割が似ている部分も多い。外の組織を知ることは有用な経験になるはずだ」

「警備騎士団と聖騎士団の役割が被るのはわかりますが、竜騎士団もですか?」

「聖騎士団には‘勇者’による情報、天狐という特殊個体についての情報が残されている、と推測している。それが欲しい」

「そう上手くいくか・・・?」

「上手くいく可能性は低いし、すぐに結果が出るようなものではない。が、このまま何もしないで、互いに腹を探るような交渉ではまず不可能。仮に交渉で情報を得る場合こちらもかなりの対価を支払うことになるのは想像に難くない」

「・・・逆に、こちらの情報が向こうに抜かれる可能性もある」

「それは想定の上だ。改革を推し進めるのであれば、必要経費としてある程度は許容する。秘匿している転生前の世界の知識についても、帝国としては徐々に解放する方針だしな」


一息ついたのち、市長はさらに続けた。


「長期目標は情報だが、短期目標は人員の補充だ。今、騎士団の人員は不足気味だ。一方で聖騎士団の人員は余り気味。領としての戦力分布を適正化する手段にもなる」

「でも、竜騎士団への補充は難しいのでは?」

「そもそも今は竜騎士団正式所属のハードルが高すぎる。転生者と前提がある竜騎士団に、正式に所属させることは難しい。だが、守秘義務を守らせた上で外部組織からの派遣による一時的所属は可能」

「そんなことできるのですか?」

「実は帝都の近衛は既にやっている。同じ手を使えば、領でも可能だと上の言質を取ってある」


「マンパワーは組織改革の土台だ。自分たちの仕事に余裕をもって対処できる状態にして、新しいことに取り組む余裕を作る。余裕ができて初めて、人はいらぬことを、余計な事を考え出す。良し悪しあるが、組織に新しい風を呼ぶ手段の一つ・・・竜騎士団員は既に各々仕事以外に熱中することを持っているようなので、そちらを期待できる団員は少ないのが残念だ」

「・・・」

「・・・」


団長もケイも、思い当たるふしがあるため明確に回答できない。


「余裕があるうちに改革の下地を作る。人員受入の場合、当初は逆に負荷が増えるが、各騎士団、今このタイミングであればその負荷に耐えられると判断した。どうか頼む」


頭を下げる市長に対し、団長が答える。


「今、竜騎士団から人は出せないぞ」

「竜騎士団については受入のみで考えている。受入対象者の目星もつけている」

「そうなのか?」

「今後の交渉次第ではある。決定は後日だな」



新年度、竜騎士団に出向してきた人物はケイも知る人物なのだが、今のケイにはそれを知る由はなかった。


竜騎士団2年目 進捗90%。


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