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33 竜騎士団2年目 同窓会+α

連休初日の早朝、ケイたちはスキー場の入口にいた。

本日は晴天。雪量は上々。滑降日和だ。


年末に急遽ケイから発せられた同窓会開催招集に対し、ホノカ、ウルハ、ガイの友人3人が応じていた。いつもの5人に加え、その場には他のメンバーもいる。


ホノカの姉であるノドカとその旦那さん。ツララ。そしてもう一人。


「先輩~。ここの雪サラサラですよ~。有名な所は違うッスね~」


ガイを先輩と呼んでいる女性はムツキ。

ショートカットで背の低い女性である。

ガイの地元の町の学校を卒業後、今年入った新人で、部署が別なのに何かと絡んでくるらしい。


今回も、予定を知って強引についてきた、とガイは溜息をついていた。


「やれやれ・・・」


呼ばれたから仕方ないな、という雰囲気を出してゆっくりそちらへ向かうが、顔はにやけていて気持ち悪い。

そんな様子をホノカとケイは白けた目で見ていた。


最初に挨拶したときは緊張した様子だったムツキも、道中、女性陣との話を経てある程度打ち解けたようだ。

その話は終始男性陣を抜きにして行われた。何を話していたのやら・・・


「ガイくんにも春が来たのかな?」

「今は冬だが、時間の問題だろうなぁ・・・」

「同上」


カオリのコメントにケイとホノカが意見を述べる。

そこに近づく二人の影。


「ホノカちゃん、私たちはここから別行動ね。夕方にここで集合してからコテージに移動、でいいよね?」

「うん。お姉ちゃん、お義兄さん、また後でね」


ノドカ夫妻は先に行ってしまった。

こちらはこちらで下手にちょっかい掛けない方がいい。


当初考えていた以上の大人数になってしまったので、宿泊場所としてコテージを貸し切りにした。

何かあっても問題にならないよう、部屋数だけは十分に準備したつもりだ。


「どう?お義兄さん、イケメンでしょ?」

「せやな・・・」


正直、顔はそれほどでもないと思う。仕事もできる人ということだが、後ろ姿ではそんな気配はない。

ノドカさんがぞっこんらしいので、人は見かけによらないということか。あるいは、別の魅力があるとか?


さて、もう一人の初参加者は?と周りを見ると、ツララはウルハと話をしていた。


「ツララ、スキーは得意?」

「得意です!ウルハさんよりも上手いと思いますよ!」

「ほぅ。ならば勝負しますか」

「いいですよ!」

「経験の違いを見せてあげます」

「さすが、年季が違いますね。でも、実力と比例するとは限りませんよ?」

「・・・泣かす」


この二人。意外と話が合うようで、道中もなにやら話し込んでいた。

ツララにとって気軽に話ができる相手ができたというのは、指導員としては嬉しい。


入口で止まっていても仕方ない。ケイは皆に声を掛けた


「じゃ、リフト券買いに行こう。ガイ、置いてくぞ!」

「待てよ。今行く」

「あ、先輩。待ってくださいよ~」


賑やかな一団は施設の中へ入っていった。




最初はグループで固まって動いていたが、何度が滑るうちに、メンバーもコースもばらけてきた。

ウルハとツララは上級者コースを回っているし、ガイとムツキは初心者コースでのんびり滑っている。ホノカも普段の鬱憤を晴らすため滑りまくっていた。


ケイもなんだかんだ楽しんでいる。

討伐任務の際は特殊な歩法で雪の上を駆けてばかり。何も考えずにボードで滑るのは久しぶりだ。


「ね、今度はあっちのコース行かない?」

「いいぞ。リフトも空いてるみたいだな」


一番下まで降りてきたケイは、カオリの提案の通りに少し離れたコース用リフトへと並んだ。人気がないのか人の列は短い。


二人乗りリフトでコースのスタート地点まで上がり、いざ滑り出そうとしたとき、ケイは既視感を覚えた。


「あれ、このコース・・・」

「行くよ」


話しかけようとしたケイをよそに、準備を終えたカオリは先に滑り出してしまった。

慌ててあとを追う。


メインのコースとは異なり、幅が狭く両側に木があるため、見晴らしはあまり良くない。

コースの3分の1ほどを滑り、幅が広くなったところで、カオリは止まった。

回りには誰もいない。


「どうした?」

「あれ、見覚えない?」


指差した方向に目をやると、コースの外に小さな祠が見える。


「?」


見たことあるような、ないような。


「これならどうかな?」


カオリはポケットから小さな髪飾りを取り出し、それを身に着けた。

その瞬間、猛吹雪が発生した。


「!?」


自分の手の先すら見えない状態にも関わらず、不思議と危機感を感じない。

体に雪が当たる感覚がないのだ。これが映像だということはすぐに分かった。


「幻術?でも、マヤさんの術とは違う・・・」


一瞬見えた髪飾りには見覚えがあった。一年前、夜のお店を模した幻術で騙され続けていたときに身に着けていたものだ。幻術の核になっていた魔道具である。

吹雪はすぐに収まり始め、周りが見えるようになってきた。カオリが立っていた場所にいるのは、サオリちゃん?いや、違う。


「カオリ、か?」

「うん」


背も体つきも今より小さい。6年前のカオリがそこにいた。

何かを抱いている。よく見ると、小さな白い狐だ。

そうだ。徐々に思い出してきた。このままだと、向こうから・・・


「っ!?」


カオリの背後、止みかけた吹雪の中から雪熊が現れ、手を振り上げた。

思わず庇おうと一歩踏み出したところで思い出した。


「これ、あの時の・・・」

「思い出した?」


雪熊は今にも襲い掛かる、という体勢で停止している。これも幻影だった。

動きを止めたケイを見て、カオリは髪飾りを外して幻術を解除し今の姿に戻った。


が、腕の中には相変わらず何かを抱いている。白い狐。先ほどの幻術では子ぎつね、という感じだったが、今の狐はちょっとした中型犬くらいの大きさがある。


その白狐はぴょん、と腕から飛び降りるとケイに近づいてきた。

そのまま目の前でお座りの姿勢になると、顔をじっと見つめてくる。呼吸音や体温、この存在感。狐は幻影では、ない。



◇◇◇ 6年前 ◇◇◇



「ここのコース、先に下りた方が勝ちね」

「分かった」

「勝った方は負けた方に一つ命令できる、忘れてないよね?」

「もちろん」


みんなと別れ、一番外れにあるコースのスタート場所にやってきたケイとカオリは、滑り出す前に喧嘩腰で話をしていた。

どうしてそんな状況になったのか、はっきりとは思い出せない。


きっかけはどっちが上手いとか程度の大して重要ではない言い争いだったと思う。当時、あまり反りが合っていなかったこともあり、上下関係をはっきりさせようとしていた、はずだ。


とはいっても、そこまで険悪な関係だったわけではない。二人乗りのリフトに並んで乗る程度には、お互いを友人と意識していた。


年頃の男女のコミュニケーション。

特に、ケイは滑りには自信があったので、いいところを見せたいという気持ちもあった。


「俺が勝ったらナニ命令しようかな。楽しみだ」

「アンタこそ、後で吠え面をかくんじゃないわよ」


スタート位置につくと、タイミングを合わせてスタート。

思った以上に上手いカオリに焦ったケイは、多少強引に前に出ると先を急ぐ。


背後に迫る気配を感じ、余裕のない滑りをしていたときだった。

急に子狐が木立の間から飛び出してきた。


「!?」


とっさに回避したが、大きくバランスを崩しコースの端で転倒してしまった。

狐は飛び出したその場で固まったままだった。


「ちょっと!大丈夫!?」

「いてぇ・・・あぁ、大丈夫・・・」


ケイの転倒した場所の近くには小さな祠。ぶつからなくて良かった。

カオリはケイの無事を確認した後で、狐に近づく。


「君も、ここにいると危ないよ。家へお帰り」


追い払おうとするが、やはり狐は動かない。


「驚いて動けないのかな?」

「そうかも・・・」


ケイも近付くが、狐は二人を見上げるだけ。

他のスキーヤーに轢かれるのはかわいそうなので、カオリが慎重に抱き上げる。

狐は腕の中でおとなしくしていた。


そのまま脇の木立へと解放しようとしたが、狐は腕から降りなかった。


「この子、どうしよう?」


カオリがケイの方に振り向く。

そのとき、ケイは気づいた。


コース外に並んだ木々の間、雪の塊が動いている・・・?


ザザッという音と共に、その塊が動き出した。

カオリに向かって接近する、それは雪熊だった。


「後ろ!」

「え?」


振り向くカオリに対して、接近した雪熊が爪を振り下ろそうとしていた。


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