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29 竜騎士団2年目 島

ペットショップで会話した翌週、警備騎士団団長は竜騎士団詰所へとやってきた。


カイ団長が対応し、1時間ほど二人で会議室にこもった後、カイ団長は詰所に戻ってきた。

その後、団長は竜騎士団員を集めた。詰所にいた団員に声をかけ、連絡用魔道具を使って普段詰所にいない団員を収集する。


連絡から1時間後、ようやくユリが詰所にやってきて、竜騎士団員が全員揃った。。


「何?いい所だったんだけど」


ユリは、帝都で調達した物資を使って新しい実験を始めようとしていたため、少し不機嫌そうだった。


「連絡があってね。今年後半の我々の動きに影響がでそうな情報だ」


団員全員が話を聞く態勢に入ったところで団長が続けた。


「魔導研究所に侵入者があった」

「魔導研究所に?」


いち早く反応したのはレイジだった。


「先日、警備騎士団が複数の侵入者を小競り合いの後に捕まえたそうだ。取り調べの結果、島の住人だということが分かった」


島、というのは騎士団内の隠語である。


ハルト辺境伯領は帝国の北東部に位置し、領北側は険しい山脈が延々と続いている。

これが天然の要害となり、帝国の外周、国境の一部であるにも関わらず、北部が戦火にさらされたことは少ない。


一方、辺境伯領の東側はほんの少しだけ海と面しており、海洋への出口となっている。

東側の多くはチーマ列島領と接しており、この列島領は大陸の一部と大小の島々からなる。

列島領の先には諸島連合、その先が魔族の国である魔国という配置になっている。


チーマ列島領は、帝国の対魔国の要ともいえる土地だ。住人の多くが漁業関係者か防人として働いている。

諸島連合は帝国と魔国が直接接しないための緩衝地帯としての役割を持っている。


列島付近は優良な漁場のため、過去何度も帝国と魔国が領有権を主張し争った結果、諸島連合の権益を双方が認めることによって矛を収めることになり、このような領土配置になった

帝国と魔国の政治的思惑が表に裏に絡まる複雑な情勢にある。


団長が言った島、というのは列島領のことであり、その先の島々のこと。いずれにせよ魔国に関連する事項である。


「ここ数年は大人しかったけど、また何か動き出したの?」

「今のところは表立って相手を非難できるような証拠は出てきていない」

「ならどうして?」

「非公式だが、列島領の複数の公的施設にも侵入者があり、そこでも警備騎士団が侵入者を捕らえたらしい。そこでの取り調べの結果、魔国による揺さぶりの可能性が高い、と警備騎士団経由で注意喚起が来た」


注意喚起?


「列島領のことが竜騎士団うちに関係するのですか?」


ツララがケイの疑問を代弁してくれた。


「列島領には竜騎士団は存在しない。変わりに近衛騎士団の出張所があって、普段はそこが特殊個体の討伐を担当している。ただ、島方面が活性化すると近衛はそっちに手を割くことになる。討伐の手が足りないとき、まず応援に動くのは近場の我々だ」

「帝都からの応援はないのですか?」

「もちろん、列島領への増員の可能性はある。だが、帝都の近衛もそこまで人員が余っているわけではないからね。国境の出張所は各地にあるから、島を優先するかどうかは上の判断次第だ」


帝国は魔国以外にも複数の国と国境を構えている。友好国もあるが、仲の良くない国だって当然ある。

配置人員はよく考える必要がある。


「そういうわけで。この冬は特殊応援が増える可能性が高いってこと」

「なるほど・・・」


ケイは特殊応援という単語を今まで聞いたことがない。

ただ、今までの話の流れから推測すると、他領の特殊個体を狩る任務だろうか。


団長の話に対して反応したのは、以外にもルイだった。


「団長、特殊応援以外にも何かあるのか?」

「状況によっては応援任務も増えると思う。」


応援任務という単語は聞いたことがある。

その名の通り、竜騎士団の通常業務外の仕事、他の騎士団の仕事を肩代わりする任務である。

この任務で多いのは、通常個体だが対魔物騎士団の大人数動員ではコスパが悪いような場合に竜騎士団が対処することだ。


「俺は応援任務はやるが、特殊応援はやりたくない」

「私も」


ルイとユリが早速拒否反応を示した。


ユリさんは自分の研究を進めたいから、時間がかかる特殊応援をやりたくないのだろう。

一方でルイは飛竜の事にはこだわるが、仕事内容について拒否をすることは少ない。最初にはっきりと拒否するのは珍しい。しかも釘を刺すような言い方だった


「分かった」


団長は何か事情を知っているのか、その拒否をあっさりと受け入れた。


「レイジ、ケンイチはどうだい?」

「俺は構わない」

「同じく。俺も大丈夫だ」


この二人は大丈夫らしい。


「では、特殊応援が来たときは基本的にはレイジがケンイチにお願いする。今後の島の動向によっては私が出ることもあると思う。私が不在のときは市長が竜騎士団の指揮を執る」


特殊応援の実情はまだよく分からないが、団長自身が応援に出る、というのはどうなんだろう。

戦闘力等を考慮すると、団長が対処するのが一番効率がよいのだろうが、まとめ役が長期間抜けるというのは組織として如何なものか。


団長不在時の代行順位がいきなり市長というのも問題がある気がする。

まずは竜騎士団内の誰かが代行して、重要判断の際は市長が決断、の方がいい気もするが・・・

まさか、肩書だけは立派な団長補佐の自分がやるわけないよな・・・2年目だし。


そんなケイの思考を置いて、団長は続けた。


「マヤとツララは応援任務、特殊応援の対象外。ケイは、応援任務はやってもらうが、特殊応援は内容次第だ。私の方で判断させてもらう。特殊応援の詳細について、ケイには別途説明する」

「あ、はい」


「と、任務についての話になってしまった。島の状況についての話に戻そう。

警備騎士団が捕まえた賊についてだ」

「どうせ、諸島連合の住人でしょう?」


ユリが訪ねた。団長が頷く。


「その通り。辺境伯領で捕まえた賊は拘束中だが、列島領では釈放済み。あちらでは諸島連合の住人というだけで保護対象だからね。警備騎士団が数日拘束したものの、抗議を受けて釈放したらしい」


列島領では、諸島連合はもともとチーマ列島の一部であり同じ仲間だ、という意識がある。そのため諸島連合出身者に対して、処罰の軽減などの法的処置や過剰な忖度が行われている。

この意識を利用し、いわゆる汚れ仕事を行う手足として諸島連合出身者は利用されてきた。


さらにはその立場を逆に利用して利益を得ようとする諸島連合出身者や、少しでも不利益なことがあれば、連合出身者への差別だ、と声を上げる団体なども存在する。

列島領の政策と住人の意識によって状況は複雑化している。(領都学校・社会情勢講義資料より抜粋)


「相変わらず、島の騎士団は甘いわね」

「向こうは向こうで、できる限りのことはやってるよ」

「何をやったかはともかく、圧力に負けてせっかく捕縛した賊を解放したんでしょ。馬鹿みたい」

「列島領は成り立ち的にも人権とか差別とかに敏感だから」


ユリは辛辣だ。実験を中断させられたのを根に持っているようだ。


「で、列島領の公的機関にも侵入したのよね?どこ?」

「列島領の市庁舎、魔導研究施設、そして近衛騎士団出張所だ」


いずれも警備が厳重なところではある。

魔導研究施設は同じだが、その他に2つも?


特に、竜騎士団員にとって最後の施設は特別な意味を持つ。

キナ臭くなってきた。


団長の言葉に対し、レイジが訪ねる


「魔導研究所はともかく、近衛の出張所まで侵入されたのか?」

「出張所建屋への侵入は未遂。敷地内への侵入者警報で警備騎士団が駆けつけてそこで捕縛されたため、機密事項は漏れていない、と思われる」

「思われる、か」


「近衛のセキュリティがそう簡単に破られるとは思わない。他の施設においても同様。警備騎士団によって機密エリアに侵入される前に捕縛されている」


「近衛の出張所を狙うとはね」

「向こうが欲しいのは帝国の最新の魔導技術だろうから、施設への侵入はさもありなんだが・・・下っ端を送り込んでも警備が厳重になるだけだろうに」


団長は、そこで一呼吸置いて言った。


「今言えることは以上だ。7年前のように遅れを取るわけにはいかない。早め早めの対応で行こうと思うので、皆にも協力をお願いする」



その後は解散となり、団員は各々自分の持ち場へ戻っていった。

ケイはデスクワークに戻ろうとしたところで団長に呼び止められた。


「ケイ、午後、市長のところへ行く。一緒に来てくれ」

「はい。分かりました」


市長から有用な話が聞けそうだ。


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