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27 竜騎士団2年目 帝都出張8

竜団会議二日目の戦闘訓練は思った以上に長引いた。

ケイたち以外の2チームは、まず1チームがケイたちの2時間後にクリア。最後のチームは3体の特殊個体を討伐せずに時間切れだった。


こうなると最後のチームは大丈夫か、と思ってしまうが、このチームはわざと対象を倒さずに時間いっぱい幻術空間内を探索、模擬戦を行うことを優先したということだった。

ある意味肝のすわったチームで、全員竜騎士団所属だった。


ケイたち三人は時間が余ったので、コウキの案内で近衛騎士団建屋内を見学して回った。

この建屋内にある純科学技術は監視カメラや赤外線センサーまで実用化していた。


全て地下にある秘密工房で作成しているらしい。半導体や光学レンズ、ソフトウェアまで作れるのか?と興味は沸いたが、色々と藪蛇になりそうなので詮索はほどほどにしておいた。


こうなると心配になってくるのが情報漏洩だ。この建屋を出入りする人数は多い。他国からのスパイや他組織からの引き抜きがあっても不思議ではない。


「情報漏洩には細心の注意を払っているが、実際のところは分からない。地下工房は普段特定の人物しか入室できない。地上階にも表向きの工房はあって、そこは随時見学受け入れをしている。・・・入館手続き時に採取する血を使って、情報漏洩が出来ないような呪いがかけられている、という噂もある」


コウキの答えはある意味怖いものだった。

ケイとアイナは科学技術関連の話をこれまで一切聞いたことがなく、今のところは情報統制されているようだ。


ケイは以前考えたことがある。

もし自分がヘッドハンティングされたら、そちらになびくだろうか。


現時点でケイには竜騎士団を辞める気はない。領都学校入学時からずっと目指していた場所であり、今は団長をはじめとした人間関係も悪くない。やりがいも感じるようになってきた。

騎士団員ということで社会的立場もあるし、職場ではそれなりに評価もされて自尊心も満たされている。


給料が多少高くなる程度であれば応じない。だが、給料10倍で生活の一切を面倒見ると言われたら、その決意は揺らぐかもしれない。安全の保障や、地位、名誉、異性が絡んでくると、尚更である。


ケイでなくとも、例えばユリは性格に目をつぶれば有能な錬金術師だ。民間で商売っ気を出せば荒稼ぎできるだろう。他の団員も同様で、心の内ではどう思っているか、ケイはは分からない。


竜騎士団を辞めて他国へ行く、みたいなことをしようものなら国レベルの問題になるからやらないだけで、懲罰や縛りがなければ竜騎士団を辞めるというのは各々の選択肢としてアリな気がする。


そういう意味で、一癖ある竜騎士団員をまとめている団長たちは、実はカリスマ持ちなのかもしれない。竜騎士団の組織改革において、各々が自分の立ち位置をどう考えているかを考慮にいれるべきだ、とケイは思った。


話を戻すと、この1年半ケイへのヘッドハンティングなんて来ていない。

これは情報統制が徹底されているためだろう。

この世界の一般常識として、魔術なしで町を消し飛ばすというのは空想でしかない。非転生者にとっては夢物語なのだ。


この建屋内であれば転生者関連の話も大っぴらにできる。

ケイは気になることを聞いてみた。


「他国の転生者の話、聞いたことはある?」

「俺みたいなペーペーには分からないな。他国も帝国と同じような組織や施設を持っていてもおかしくはないが・・」

「私も聞いたことはないかな」


帝国は転生者を把握しており、人材活用方針が確立しているが、同様のことが他国でも行われている可能性がある。だが、昨日の会議ではそう言った情報は全くなかった。これはどう考えればいいのだろうか。


上層部が他国の転生者の動向まで把握しているのであればよいが、そうでないならこの世界の情勢は表と裏で全然違うということになる。他国が帝国の転生者たちを把握している可能性だってあるのだ。


他国が転生者の知識を利用してこっそりミサイル兵器を実用化していました、などということにならないことを祈るばかりだ。


一通り建屋内を見て回ったところで団長やツララと合流。

二人は団長の知り合いに案内してもらっていたそうで、戦闘訓練を見学していたわけではなかった。


「数年前にできた戦闘訓練システムだ。どうだった?」

「とにかく凄かった、の一言です。あれは、体験しないと分からないですね。訓練相手もなかなか考えられてました」


3体の特殊個体は、順番に難易度がステップアップするものだった。


「訓練相手については、私は何も聞いていない。チームを組むメンバーは聞いていたけどね」

「飛行船発着場でアイナ達とあったのは、そういうことだったのですか?」

「時間を合わせて、事前の顔合わせさ。役に立ったかな?」

「そうですね」


ケイとしては、最初の顔合わせが訓練開始時だったとしても、上手くやれたと思っている。

さすがに互いの技量を知るための時間が必要だったろうが、それでも戦闘訓練自体はクリアできていたと思う。


団長の問いに同意したのは、今回のイベントの趣旨が戦闘能力向上というよりもチームを組んで何を学ぶか、にあったと思うからだ。

竜騎士団の古参メンバーとの討伐任務では、現状ケイはほぼ空気。いてもいなくても、他のメンバーが目標を達成してしまう。


一方で今回はというと、ケイはきっちりと自分の仕事をこなす必要があった。

自分の技術の立ち位置、実力の把握、再認識。敵の能力の予測と理解。チームメイトの性格を考慮した上での作戦立案と実行。それらが噛み合うと討伐成功可能性が上がる。

そして訓練後には適時振り返りと意識共有。


課題をギリギリ達成できるレベルの仮想敵の選択。その後の人間関係構築の補助。

この竜団会議カリキュラムを考えた人はかなり頭のいい人だ、とケイは思った。

教育論について話を聞きたいくらいである。


その後、ケイ、コウキ、アイナの3人は地下へと戻り、他の新人6人と共に近衛騎士団団長からの総括講和を聞いた。

その後は懇親会。といっても新人たち9人だけで町へと繰り出す。


近衛騎士団を定年退職した人たちによって運営されている居酒屋には特別な部屋があり、そこでは機密に触れるような話題を口にすることも許される。

話題は自然と今日の戦闘訓練の話題になる。


各チームの討伐対象についての話、各々の持つ様々な技術についての話。

深夜まで続いた新人たちの宴で分かったのは、残りの6人もそれぞれ面白い人物だということだった。



騎士団3日目は懇親行事の立食パーティである。

このパーティの特徴は一つ。もともとこの世界にない食べ物が食べられる、である。


前世の記憶を持つ料理人が知識と技術をフル活用し再現した料理がこれでもかと並んでいる。

材料が異なるにもかかわらず、食べてみると確かにその味がする。

日本食に中華料理、フランス料理にイタリア料理、思わず涙が出てきそうな懐かしい味もあった。


ここでもツララは大活躍だった。

ツララとしても、領都学校卒業後にまた食べる、なんとしても竜騎士団か近衛騎士団に入るというモチベーションになったようで、団長がツララを連れてきたのはこれが原因だった。


ケイたち新人は各々自己紹介した後、他領の竜騎士団団長や近衛騎士団の人たちへの挨拶回りを行った。

昼過ぎ、懇親会終了と共に、今年度の竜団会議は終了した。




ケイたちとアイナ、リノ団長が帰りの飛行船乗り場まで出発する時間になった。

近衛騎士団建屋の前まで見送りにきたのはコウキとソウジ。


「では、また機会があれば会おう」

「ああ」

「ええ。では」


「ケイ、俺は正月に領都に戻るから、時間があえばご飯でも食べに行こう」

「はい、ソウジ先輩。ぜひ」


なんだかんだ、楽しい出張だったと思う。だが、まだ油断はしない。帰るまでが出張だ。


乗船場までやってきた一行はお土産を買いこむ。

ユリは巨大な鞄を2つ持っていた。追加料金を払っても大量の素材を買って帰るとのことだった。


そしてリノ団長、アイナと別れる時間になった。


「ハルト辺境伯にはいいスキー場がある。機会があれば、遊びに来なよ。ツララと一緒に歓迎するよ」

「そうね。ぜひ。ワフの海水浴場もいいところだから、今年はもうシーズン終わっちゃうけど、来年は来なさいな」

「そうだな。そこは、お互い団長に出張の機会を作ってもらわないと」


団長二人は笑って応じる。


「遊びだけではだめだが、ちゃんと仕事もするなら、そういう出張作ってもいいよ」

「そのときは、こき使ってあげるわ」


別れの挨拶を交わし、ケイたちは帰りの飛行船に乗り込んだ。

1日後にはハルト辺境伯領。帝都出張は終了だ。


竜騎士団2年目 進捗50%。


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